J3アスルクラロが大ピンチ…アマ降格の危機 スタジアムの照明が規定満たさず…「クラファン」で支援求める 静岡・沼津市
12日に開幕したサッカーJ3。静岡県内からは、藤枝MYFCとアスルクラロ沼津がJ2リーグへの昇格をかけて戦います。ところが…
「最大限の危機感」
アスルクラロ沼津 的地亮さん:「成功しなかったらライセンスが消失してしまうという意味では、本当に最大限の危機感」
日本のプロサッカーリーグ、Jリーグ。アスルクラロ沼津は2017年に県内4つ目のプロチームとしてJ3に参入し、最高で3位という成績を収めました。J2とJ3は毎年、成績によって入れ替えがありますが、現在のレギュレーションでアマチュアリーグまで落ちることはありません。しかし来年、アスルクラロ沼津にはJリーグからアマチュアのリーグに降格するという、前代未聞の危機に追い込まれているんです。
アスルクラロ沼津 照明プロジェクト担当 的地亮さん:「今季2022年6月の(Jリーグライセンス)申請時には、来年に向けて(規定の)照明を立てないとライセンス交付ができない。ライセンスを失ってしまう=Jリーグにいられない現実が目の前に迫っている」
照明改修の費用は1億円…クラブの売り上げ3.5億
理由はスタジアムの照明問題。Jリーグの規定では1500ルクスという明るさが必要とされています。県内では清水エスパルスの「IAIスタジアム」とジュビロ磐田の「ヤマハスタジアム」が1500ルクス。藤枝MYFCの「藤枝総合運動公園サッカー場」も2年前に改修工事を終え、1500ルクスの照明設備が整っています。
一方で、アスルクラロ沼津のホーム・県営「愛鷹広域公園多目的競技場」の照明は規定の1/3の500ルクス。来年もJリーグの舞台で戦うためには、今年6月までに改修の目途をつけ、ライセンスを申請しなければなりません。
アスルクラロ沼津 照明プロジェクト担当 的地亮さん:「ライセンスの維持は絶対。明るい照明がついているスタジアムでナイトゲームを皆さんが楽しんで、選手が躍動する姿が見られるスタジアムを作っていくことしか、今目標はない。何としてでも建てるしかない」
しかし、照明の改修にかかる費用は、およそ1億円。年間売り上げが3.5億円ほどのクラブにとって、その額は簡単に出せる金額ではありません。
アスルクラロ沼津 照明プロジェクト担当 的地亮さん:「クラブが自己負担してお金を出せればいいけど、我々のクラブはお金が全然ない。選手たちもまだ働きながらサッカーやっていますし、そういったクラブにとって、今回の改修金額ってすごく大きい金額ですから、(クラブの)予算規模の中で出していくのは難しいので、支援を頂く形を取らせてもらっている」
クラウドファンディングで寄付を募り…
先月3日からクラブが取り組んでいるのは、クラウドファンディング。ネットから誰でも寄付することができ、お返しをもらえるのが一般的です。今回は目標金額を3000万円に設定し、現在までに半分の1500万円以上の支援が集まりました。期限は3月末。Jリーグに残るため、安心できる金額ではありません。
沼津市民は…
地元の沼津市民は…
沼津市民60代女性:「(照明を)つけた方がいいと思う。やっぱりスポーツが好きな方は分かると思う」
Q.クラウドファンディングも知っている?
A.「はい。やってもいいなと思います。やっぱり宣伝は大事」
沼津市民80代男性
Q.試合を見に行ったことは?
A.「あります。J3でも、もうちょっと上位の方にいって、ある程度J2の目安がつけばお金はかけてもいいけど、まだ、今の現状じゃちょっと私個人としては、もう少し頑張ってほしい」
一方で、こんな声も…
沼津市民60代女性女性:「(問題を)知らなかった。クラウドファンディングから集めているのも知らなかった。ちょっと残念。やっぱり頑張ってほしいし、沼津市からサッカーが有名になってほしいというのもあるので、頑張ってほしいという意味で、(クラウドファンディングは)やり方が分かれば少しでも協力したい」
沼津市民60代男性:「あまり、うとくて知らなかった。もうちょっと認知というか、人々がみんな分かって理解して寂しいってなったら、募金なりクラウドファンディングも、やりやすくなるんじゃないかな」
沼津市民70代女性:「昔は観客が少なくてどうこう言ってたでしょ。今度は何、照明ですか。選手のことを考えればやってあげたい」
地元市民のこの反応に対し、アテネ五輪の代表監督を務めた、アスルクラロ沼津会長の山本昌邦さんは…。
アスルクラロ沼津 山本昌邦会長:「照明の照度が足りなくてライセンスの基準を満たしていないというところまでは、なかなか伝わっていなかった。経営に関わるものとして本当に努力不足だった、足りない点があった」
ホームタウンの沼津市とも連携。照明の改修に必要な金額、残りの7000万円は今後、沼津市が取り組む「企業版ふるさと納税」で支援を集める予定だといいます。
沼津市ウィズスポーツ課 河本広大主任:「今、数件企業からアスルクラロのためにという形での問い合わせをいくつかもらっているので、これもうまく使って、何とか改修の実現までいければ」
沼津市はこれまでもチームと協力し、スタジアム改修のために必要な調査なども長年にわたって実施。この危機を乗り越えた先には期待もあると話します。
沼津市ウィズスポーツ課 河本広大主任:「もっと多くの企業や団体、個人とか、静岡県東部全体でアスルクラロと関わっていけると、地域としての盛り上がりが将来反映されると思っているので、この機会を利用して一緒に頑張っていきたい」
静岡県「県内4チームのうち1チームだけに費用を出すのは難しい」
Jリーグから退会の危機に面しているアスルクラロ沼津。12日の開幕戦を控えた選手たちが、今週の練習後に向かったのは…。
アスルクラロ沼津 山本昌邦会長:「全国でもそうだし、特に静岡の残り3チームからも本当に声援を頂いているので、何とかみんなと一緒にやれるような形になれれば」
サッカーJ3のアスルクラロ沼津。ホームスタジアムの照明設備がJリーグの規定に満たず、このままだと来年はライセンスを、はく奪されることになります。前代未聞となるJリーグからアマチュアリーグへの降格が現実味を帯びてきました。
山本昌邦会長:「来シーズン以降、クラブライセンスが消滅してしまうという本当に、厳しい状況に来てしまっているところが辛いところ」
他の県にも基準に満たないスタジアムはありますが、自治体の補助などを受け、改修を進めるチームが多いといいます。1996年にできた県営の「愛鷹広域公園多目的競技場」。チームは当初、スタジアムの改修は必要であれば、管理者の県が行うと思っていたそうです。ところが…
静岡県の担当者
「このスタジアムは他の競技でも使うが、1500ルクスという照明が必要なのはアスルクラロだけ。県内のJリーグ4チームのうち、1チームだけに費用を支出するのは難しい」
県からの回答を受け取ったクラブは、自分たちで照明を改修することに。
アスルクラロ沼津 照明プロジェクト担当 的地亮さん
「スタジアムを持っている県が照明のお金を出すのは、僕らの中での常識だと思っていた部分がどこかであった。実際色んな担当をやって、クラブがどうということではないけど、自分たちが戦っていくのに必要なものを、クラブがお金を負担しなければならないのは、皆さんに理解してもらいながら助けてもらうところもあると思うけど、当たり前のことなのかなと感じた」
選手たちも協力呼びかけ
照明の改修に必要なのはおよそ1億円。クラブはそのうち3000万円を目標に先月3日からクラウドファンディングを始めました。期限は今月末までですが、11日までに半分の1500万円を超えています。
アスルクラロ沼津 山本昌邦会長:「皆さんの支えがなければ、子どもたちの未来とか地域の未来を作ることができない、今本当に苦しい現状というのがあるので、それを乗り越えられるように支援をいただければ」
クラブの危機に、開幕目前の選手たちも立ち上がりました。この日は市内でチラシを配り、協力を呼びかけました。
アスルクラロ沼津 伊東輝悦選手:「まず協力して下さった方には本当に感謝しかない。目標にはまだもう少し足りないので、これを見て協力してくれる方が1人でも多く出てきてくれたら嬉しい」
アスルクラロ沼津 前川智敬選手:「ピッチでプレーするのは僕たちなので、1つでも力になれることがあればと思って参加した。(チラシを)もらってくれた時に『頑張って』とか『応援してるよ』とか声を掛けてもらったので、サッカーも頑張ろうという気持ちになった」
アスルクラロ沼津 遠山悠希選手:「正直厳しいところはあると思う、今回、こういう形で貢献できたかは分からないけど『ありがとうございます』ともらってくれる人が多かったので気持ちが良かった」
隣町でも…
隣の清水町でも…
選手:「アスルクラロ沼津なんですけど、照明が暗くて。お願いします、ぜひ」
買い物客:「応援してますから、沼津だから出身が」
チームの活動は沼津市だけにとどまりません。三島市や清水町などでも行いました。
長泉町民10代女性2人連れ
「まさかこんなこと起きているとは思わなかった。初めて知った」
「ちょっと興味を持った」
「ビックリした」
「この人たちを助けたいなとは思う。ちょっとかわいそうだなと、ね」
函南町民50代女性
「こういうふうにいいんじゃないですか、皆さんの意識も高まって。地元でとなれば応援したいなとは思う。」
アスルクラロ沼津 森夢真選手:「僕たちにできることは、こういうチラシ配りだったり少ないかもしれないけど、一番はピッチの上でサポーターの皆さんに勝利を届けるってことが一番だと思うので、ピッチの上でみんなで一つになって頑張りたい」
アスルクラロ沼津 井上航希選手:「SNSやチラシ配りなど僕たち選手にもできることがあるので、そういうことに積極的に参加、皆ができるようにという話し合いはチーム内でした」
「返礼品はいらないから…」温かい言葉に涙
クラウドファンディングを進める中、こんなこともあったようです。
アスルクラロ沼津 照明プロジェクト担当 的地亮さん:「本当にありがたい声だったけど、そういった返礼品はいらないから、という声をもらって、寄付口座を作って、支援をいただいていている。温かい言葉ばかりで涙 涙。多分市内だけではない色んな方面、アウェーのサポーターからもそうだし、本当に色んな声を寄せていただいているのは感謝でしかない。」
1億円が集まらなければ照明の改修ができず、来年はアマチュアリーグ降格に。しかもJFL以下の、どのリーグに入るかは決まっていないそうです。
アスルクラロ沼津 照明プロジェクト担当 的地亮さん:「受け入れ先(リーグ)が見つかる、という言い方が正しいか分からないが、ちょっとまだ前例のない話なので、分からないという回答を(Jリーグから)もらっている。」
問題をかかえる中、J3が開幕。アスルクラロ沼津の開幕戦はアウェーでのSC相模原戦。
アスルクラロ沼津 山本昌邦会長:「感動を伝えられるようなプレーをしてもらいたい。厳しい時だからこそ、結束もしやすいと思うし。本当に自分たちがピッチで成果を出していく姿が皆さんの心に伝わるようなシーズンにしてもらいたい」
リーグ戦の目標はあくまでJ2昇格圏の2位以内です。スタジアムの照明問題という、思わぬ敵とも戦うアスルクラロ沼津。来年はいったい、どの舞台に立っているのでしょうか。
(3月12日放送)