静岡初のプロ野球球団『くふうハヤテ』…超高速で完成したユニホーム 浜松市の専門会社の仕事が早いヒミツとは
伊地健治アナウンサー:「浜松市中央区のある会社に来ています。いまは昼休みの時間なんですが、従業員の皆さんが野球の練習をしているんです。実はこの会社静岡県初のプロ野球チーム『くふうハヤテベンチャーズ静岡』のユニホームを手掛けた会社なんです」
ユニホーム手がけた「レワード」
この会社の名前は「レワード」。訪れたきっかけはこのニュースからでした。
1月25日。今季からプロ野球2軍のウェスタンリーグに参入する「くふうハヤテベンチャーズ静岡」がキャンプイン。真っ白なユニホームに袖を通した選手たちの姿がありました。前日、入団会見を行った際に、発表されたのがこのユニホームでした。
レワード 伊藤寿弘代表:「静岡初のプロ球団ですから、それを最初から関わりをもたせていただくことができる、非常に意味があるなと」
ユニホームをつくった会社「レワード」。昭和48(1973)年から50年間に渡って、浜松を拠点に、野球ユニホームを専門的につくる、全国でも珍しい会社なんです。
正味の製作期間は28日
レワード 伊藤寿弘代表:「高校野球に関しては、(去年は)1080校納品させていただいた。高校野球だけに関して言うと、国内のシェア28%」
ほかにも「学童野球」「社会人野球」といったニーズにも対応してきたこの会社。今回初めて「プロ野球」のユニホームを手がけました。
レワード 伊藤寿弘代表:「実はくふうハヤテの杉原代表が、ここに10月26日に私を訪ねてきてくれた。静岡初のプロの球団から声をかけていただいた。率直にこの商売をしていて、うれしかったですね。くふうハヤテでもまだその時はユニホームのデザインだとか、ネームをどうするかだとか、何人分いるのか全く決まっていない状況。実際に詳細が全部決まったのは12月5日。1月の何日にはキャンプが始まりますから、全て一式が整っていなければいけない」
ユニホームと一口にいっても、ホーム用にビジター用。インナーシャツやグラウンドコートと多岐に渡ります。
レワード 伊藤寿弘代表:「普通だったら3カ月とか4カ月前から詳細の打ち合わせとか、試作をして作り上げていくもの。正味の製作期間は28日ぐらいでつくりあげた。非常に手前みそな言い方ですが、高品質、短納期、クイックデリバリー、小ロット。なかなか大手では出来づらい現実的な商売を成立させていく手段。そこをウリにしてきた」
入社14年のプロジェクトリーダー「熱い2カ月だった」
伊藤代表は、現場の製作力に絶対的な信頼を置いているといいます。今回、くふうハヤテのユニホーム製作で、プロジェクトリーダーを担当した多田さんです。入社歴14年、営業や企画を担当してきた実績を買われました。
レワード プロジェクトリーダー 多田敦志さん:「正直、非常に熱い2カ月ほどだった。これからも頑張ってやっていきたい」
多田さんが案内してくれたのは、製作の現場です。
伊地アナ:自社工場が敷地内にあるんですね?
多田敦志さん:「こちらが商品を出荷するところ、中央が昇華施設と裁断、ユニホームを切ったりする」
伊地アナ:「昇華というのは?」
多田敦志さん:「生地をインクで染めて色をつける」
伊地アナ:「カーテンで窓が…」
多田敦志さん:「日光に当たるといけないので」
伊地アナ:「閉め切られているんですね。一貫して全てできるようになっているんですね」
まず目の当たりにしたのは、敷地内の自社工場。製造から販売までを自社で行うことで、早さを生んでいたんです。奥に位置する縫製工場では、今まさにユニホームがつくられているというので行ってみると。
伊地アナ:「うわすごい」
驚きの光景が…
ユニホームにかけた熱い思い
伊地アナ:「あ、すごい! ここに糸がいっぱいあって、自動で刺しゅうしてますね、面白い(ガタガタ…)」
くふうハヤテのユニホームを手掛けた会社、「レワード」。野球ユニホーム専門の製造・販売会社で50年の歴史があります。裁縫工場には、驚くべきミシンの数。工場には従業員が約70人勤めていますが、ミシンの数は240台ほどあるそうです。
レワード 廣田駿さん:「工程によっていろんなミシンがあるので、ひとりが何台もつかうような形でミシンを使って生産をすすめている。この規模の縫製工場は国内見てもない。自信をもって縫製をやれている」
伊地アナ:「最短だと、どのくらいでやってくれという注文があるんですか?」
レワード 渥美健太郎さん:「時期的に甲子園の時期は1週間以内に納めなきゃいけなかったりするので…」
伊地アナ:「1週間? 地方大会を勝ち上がって優勝して甲子園が決まったと、だから新しいユニホームをつくってくれ…」
渥美さん:「そうです」
スピードが求められるこちらの工場。それでも、生地から服に仕立てるのはやっぱり人の手です。
伊地アナ:「今まさに、くふうハヤテのユニホームを織っている男性が、作業中すみません。作り方に違いとかあるんですか?」
レワード(元高校球児)小木野宏樹さん:「使っている糸もちょっと伸びる糸を使ったりとか、衝撃が強い所には重ねて強度を強くしたりして、すぐにほつれたりしないように。場所によって縫い方を変えたりとか」
伊地アナ:「どうですか、プロ野球チームのユニホームを縫っているという感覚は」
小木野宏樹さん:「本当に、静岡の球団を自分たちの手で手掛けられるというのは、非常にうれしいことですし、自分が野球をやっていた時に、甲子園で優勝していたピッチャーとか出ているので、そういった選手のユニホームを縫えるというのは、非常にうれしいです」
1人で8台のミシンを扱う
こちらの女性はひとりで8台のミシンを操作しています。
伊地アナ:「一着一着手作業なんですね。一着一着全部同じ場所に刺繍ができるように」
多田敦志さん:「原点をセットしないと違ってしまう」
伊地アナ:「始まりました。ちなみに何着ぐらいつくる?
レワード 藤原喜美子さん:「このチーム…20着ぐらい」
伊地アナ:「そこが小ロットということなんですね、実際にくふうハヤテも?」
レワード 藤原喜美子さん:「やりました。実際に作ってテレビとかで放送されるとうれしいなという気持ちがある。自分が作っていると思うとやりがいのある仕事をしているなと感じ」
伊地アナ:「うちの会社の商品は丁寧だぞという自負が?」
レワード 藤原喜美子さん:「そうですね、プライド持って」
「プロ野球で使っている。自信をもってお客様に提供できる」
ほかの部署でも、くふうハヤテのユニホームがこの会社を活性化しているのが伝わりました。
伊地アナ:「プロ野球のユニホームを初めて手掛けることになったんですが、率直にどんな感想をお持ちですか?」
レワード営業課 福田太貴さん:「めちゃくちゃうれしいです」
レワード営業課 フロントマネージャー 寺田謙太郎さん:「今までプロという注文をやったことがなかったので、いよいよ私たちの商品がプロ野球の方で使っていただけると。より自信をもって自社の製品をお客様に提供できるかなと、強く感じています」
社内には展示室も
社内にある展示室に案内してもらいました。
伊地アナ:「すごいすごい! くふうハヤテのホームとビジター。それ以外にもジャンパーとかが、ずらりと並んでいる。これはすごい。ハヤテと本当にしっかりとした美しい刺しゅう。そして見てください縫製ですよ。本当に何人もの方々の力が結集していまこのユニホームが出来ている。よくわかりました」
今回、プロジェクトリーダーを務めた多田さん。喜びもひとしおです。
多田敦志さん:「どうしても期間のない中でしたので、(くふうハヤテと)お互いがこれだという確信をもって決められる時間はなかったので、その中でお互い向き合って、やりとりをさせてもらって、なんとか今日をむかえる、納品することができたのは良かったです」
ハヤテとのやり取りで変わってきたデザイン
貴重なデザイン案を見せてもらいました。
多田敦志さん:「帽子のマーク、今は違うんですけど」
伊地アナ:「本当だ、四角の中に入ってますけど、いまは違いますもんね」
くふうハヤテ側とで行ったやりとりは数十回にのぼります。決まらなければ、つくることができない以上、慎重なやりとりがあったそうです。
多田敦志さん:「最初『H』も。資料では5センチだったんですけど、実寸で見ると5センチではだいぶ大きくなりますよと。イラストと全然違いますよと。2.5センチに。実際の資料の半分ぐらいに」
確認を重ねて完成したくふうハヤテのユニホーム。「シンプル」「ストライプ」という要望に応え、さらにロゴに使われる色は、「勝色」に決まったといいます。鎌倉時代の武士が縁起を担いで好んだ色で、紺色よりも濃い青色のことを指すそうです。相手の要望だけでなく、レワードからも提案したことも。ストライプの間に明るいラインをいれました。高級感を感じさせる効果があるんです。
伊地アナ:「ここにもHが入ってる」
多田敦志さん:「そうなんです、そこもこだわりポイント。工場にできますかと聞く前に、これで行きますと言ったら快くやってくれたので本当に頼りになる工場だなと。
伊地アナ:「このプロチームのユニホームがここから誕生したどういう意味を持つ?」
多田敦志さん:「きのうきょうの積み重ねではできない。少年野球から高校野球、大学野球、社会人野球いろいろユニホームをつくらせてもらっている、今までの積み重ねの経験値が今回生きた。すぐにできる仕事ではないし、全国各地のレワードファンのお客様にも育ててもらったところがつながったと」
ここまで見てきたくふうハヤテのユニホーム。やっぱり、最後にはこんなお願いを…。
伊地アナ:「うわーうれしい。くふうハヤテのユニホームです。どうでしょう?」
多田敦志さん:「とてもかっこいいです」
伊地アナ:「これからくふうハヤテの戦力となって頑張ります。スライディングしてもいいですか」
多田敦志さん:「ちょっとそれは(笑)」