ケーキ屋さん値上げしない秘訣は? 材料費高騰でも値段の据え置き、新商品の開発…地下食品売り場の最前線 静岡市
食品の小売り業者「(材料は)ほとんど倍です。卵は3倍」
食品の小売り業者「原油の高騰とウクライナ情勢もあります」
店側が頭を抱える原材料の高騰。そんな中でも特色を出して奮闘する店が今、県内の地下食品売り場にありました。そこには、いったいどんな商品が? 地下食品売り場の最前線を取材しました。
静岡市の老舗百貨店の静岡伊勢丹です。
栗田麻理アナウンサー:「40年以上の長きにわたって、静岡市民の台所を支えてきた静岡伊勢丹の地下1階食品フロア。物価高騰の影響を受けながらも、頑張っているお店がたくさんあります」
「利益」少なくなっても値段据え置き
こちらは、関東圏を中心に展開する点心のテイクアウト専門店PAOPAO静岡店。蒸したての肉まんが人気のお店です。
「国産の和豚もち豚を使った肉まんになります」
肉シューマイ。荒くミンチされた肉からは、肉汁がたっぷり。1個から買えるため、客も手が伸びる商品だといいます。
実はPAOPAOでは、原材料の高騰が続く中でも、去年3月以降、全ての商品の値段を据え置いています。
山下勝大店長:「(材料費の高騰で)現状は厳しい」
Q.集客の変化は?
A.昔から来てくれるお客さんが、ずっと変わらずご利用いただいている。
原材料の高騰によって「利益」は少なくなったといいますが、コロナ禍で高まった“テイクアウト需要”を追い風に、“馴染みの値段”を続けていくことで、リピーターを獲得する戦略に打って出ました。
山下勝大店長:「お客さんの声を直に聞けることが、日々のモチベーションに繋がっている」
値段据え置き…トレーも安いものに
“値段を据え置く”戦略は他の店でも…
新鮮な魚がたくさんあります。東信水産静岡伊勢丹店です。こちらの店にも、値段を据え置いた人気商品があります。
「一番人気は寿司とふり塩銀鮭」
本マグロが人気のお寿司、値段を据え置いて販売しています。
栗田アナ、中とろを食べて…
「身がすごくしっかりしています。口の中でとろけます」
もう一つの人気商品はふり塩銀鮭です。
佐藤公春支店長:「鮭は銀鮭になるんですけど、脂ののりも色もいいと思う。ふり塩で塩加減も薄め」
Q.値段は?
A.「値上げしてない。据え置きになっている。本当はすごく(値上げ)したかったが、リピーターの方が多いので、そのままのお値段でやらしてもらってます」
1㎏あたりの卸売価格で比べると、2年前に比べてマグロは1200円以上、銀鮭は680円ほど上がっています。
佐藤公春支店長:「「輸入物(の魚の仕入れ価格高騰は)円安と原油の高騰、あとウクライナ情勢の影響が大きい。こちらはほとんど利益がない商品輸入物(の魚の仕入れ価格高騰は)円安と原油の高騰、あとウクライナ情勢の影響が大きい。こちらはほとんど利益がない商品
こちらの鮮魚店では“値段据え置き商品”を作るだけでは利益の確保が難しいため、細かい部分も工夫しました。
佐藤公春支店長:「マグロも一本買いしている場合は、すき身なども必ず自分たちで取ります。あと資材も 原油が上がってるのでトレーを替えたりして、価格をあげないようにしています」
一番人気の商品はオープンから値上げせず
静岡市内の別の“地下食品売り場”にも、“値段据え置き商品”で集客を図る店がありました。静岡市の中心街に構える新静岡セノバ。新静岡センターと呼ばれていた時代から数えると、60年に近い歴史を持ちます。
祥瑞デリカテッセン。JR静岡駅近くにある上海小籠包「祥瑞」のテイクアウト専門店です。
看板商品は焼き小籠包。本格的な小籠包を油で揚げ焼きしたものです。店内の厨房で、シェフが作っています。この小籠包が“値段据え置き商品”なんです。
スタッフ 芹澤ひとみさん:「小麦と焼くための油が値上がりしてしまって、仕入れ担当者によると小麦と中華の調味料が去年と比べると20%ぐらい上がってしまって、油に至っては去年の倍になってしまった」
「この焼き小籠包だけはオープン当初から据え置きの値段。1番人気の商品なので、これだけは何とか据え置いて、お客様にまた買いに来てほしい」
ケーキ屋さんの「値段据え置き」の工夫は
静岡市内に8店舗を構えるケーキ店「魔法のケーキ屋さん ぷるみえーる」も原材料の高騰に頭を抱えていました。
代表取締役 牧野良弘さん
Q.物価高騰の影響は?
A.かなりありますよ、ほとんどの材料は値段が倍。卵は3倍です。
そうした中で、店では原材料高騰を逆手にとった戦略が…。
代表取締役 牧野良弘さん
Q.どんな対策をしていますか?
A.卵を使わない、もしくは卵白を使った焼き菓子とか。卵をあまり使わない商品を出しています」
ケーキに欠かせない卵は今や高価な材料の1つ。さらに日持ちがしないため、売れ残ったときのロスが大きくなります。そうした背景もあり、卵白のみを使ったメレンゲ・フィナンシェなど、日持ちする焼き菓子にシフトしているそうです。
代表取締役 牧野良弘さん:「食感に特徴があるんです。古典的なお菓子、シンプルでお母さんの味、家庭の味なんです」
さらに“食品ロス”を減らすために力を入れているのが、保存がきくジェラート。客の反応も良い商品です。
実は牧野さんは今年1月、ヨーロッパ最大のコンテストで、ジェラートシャーベット部門の世界3位になった腕の持ち主なんです。
メレンゲやジェラートだけでなく、幅広い商品開発にもチャレンジ。洋菓子店にも関わらず、3種類のピザも開発しました。現在はカカオを使ったカレーも開発中とのことです。
人気商品だけは値段を据え置いたり、新商品の開発をしたり…。原材料費高騰の中で、競争の激しい地下食品売り場にはそれぞれの店のそれぞれの企業努力がありました。