ついに最終章! 素人集団がつくる「新しい名産品」 市長も思わず「うまい」 浜松市
農家でも食品会社の社員でもない、素人集団が作った国産グレープフルーツジュース。浜松の新しい名産品を作るというか、経験もノウハウもありませんが、それを補うのは行動力と情熱です。知られざる浜松の名産品・グレープフルーツを使った素人による日本一のジュース作り。いよいよ、プロジェクトは最終章を迎えます!
浜松産だけを使った国産100%のグレープフルーツジュース
5月12日。浜松市北区にあるジュース工場「Kurumix」。この日、施設の中には、窓際でじっと作業を見つめる一人の男性がいました。
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「もうやっとかなって感じ。1年ぐらい前から準備をしてやっとこの日を迎えたので…」
こう話すのは、浜松市で「どいーにはままつ」という有志のグループを立ち上げた、会社員の石川大輔さん。食い入るように見つめる視線の先には、次々に注がれるジュース瓶がありました。
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「いよいよ夕焼けルビーの製造になったので、一度試作はしているが、その時とは本数も違うということで…」
工場で作られているのは、浜松で収穫されたグレープフルーツだけを使った国産100%のグレープフルーツジュース。
現在国内で流通しているグレープフルーツはほとんどが輸入品。わずかに収穫されている国産品は、なんと、ほぼ全てが浜松市で作られているんです。
「素人」が立ち上げたプロジェクト
この浜松の隠れた名産品をもっと全国的にアピールしようと、石川さんが立ち上げた「どいーにはままつ」は、農業経験も、飲食業界の経験もない素人でありながら、日本一のグレープフルーツジュースをつくろうとプロジェクトを立ち上げたのです。
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「僕はひたすら面白い、見てて。ずっと同じ画だから、(普通は)多分あきちゃうんだろうけど、全然あきない、ずっと見ていられる」
構想からおよそ1年。自分たちの思いが、ようやく形となったこの日。ついに待ち望んでいた瞬間が訪れました。
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「完成です、夕焼けルビー」
今回作ったジュースは赤い果肉のグレープフルーツだけをしぼった「夕焼けルビー」と、赤と白の果肉を混ぜあわせた「夕焼けルビーピンク」。どちらも浜松のグレープフルーツを使い、浜松の工場で作られた、まさにオール浜松のグレープフルーツジュースです。
思い描いていた味になっているのでしょうか?
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「まさに、僕がグレープフルーツが好きだから、こういうのを作りたいっていった物ができています。ありがとうございます。よかったです」
期待通りの出来栄えに思わず笑顔がこぼれます。実はこのプロジェクトには、石川さんのこんな思いが秘められていたのです。
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「もともと、こちらの施設に何か仕事を出せたらということがきっかけで始めているので、こうやって夕焼けルビーのために、みなさんが働いてくださっているのを見て、一つ達成したなと」
障がい者の就労支援も込めて
こちらの工場は、障がい者の就労支援を行う施設でもあり、これまで、主に地元でとれるミカンなどのジュースを製造してきました。
しかし、収穫時期である冬を過ぎると仕事は激減。石川さんは、そうした現状を仕事を通して知りました。ならば、自分たちが別の果物を使ってジュース作りを依頼しようと動き出したのが今回のプロジェクトだったんです。
Kurumix 伊東加織施設長:「(障がい者へ)何かをしたいって思う気持ちって、往々にそういう気持ちは(誰でも)あると思う。ただ、それを行動に移す、それって誰でもできることではないと、石川さんと出会って思った。やっぱりこの出会いは大切にしたいと思う」
より多くの人に飲んでもらい、より多くの人にこの施設のことを知ってほしい。そんな思いから、石川さんが作ったジュースはおよそ2300本。
市長を訪問してPR
6月15日
完成品の販売に向け、次に必要なのは宣伝。石川さんは商品のPRを行うため、ある大胆な作戦にでました。
目の前に現れたのは、浜松市の鈴木康友市長。石川さんは、浜松市のトップに直接商品を売り込もうと、市に表敬訪問を申し込んでいたのです。
浜松市 鈴木康友市長(試飲して):「おっ。グレープフルーツ100%?」
石川さん:「そうです、グレープフルーツ100%。濃縮還元もしてないというジュースになる」
鈴木市長:「なるほど…。へえー…」
直接のアピールは効果があったのか、市長の反応は。
浜松市 鈴木康友市長:「うまい。おいしいですね」
石川さん:「ありがとうございます」
市長から「おいしい」の一言が。さらには…。
浜松市 鈴木康友市長:「これ、うちの楽天市場で出せば?」
石川さん:「出世市場?」
インターネット上のWeb物産展、楽天市場内の「はままつ出世市場」への出品を、市長自らが提案。PR作戦はひとまず成功です。
Q.どうですか今の感想は?
どいーにはままつリーダー 石川大輔さん:「飲んでいただけて良かった、おいしいって言ってくださったし」
浜松市のお墨付きも手にいれ、いよいよ次は、完成したジュースの店頭販売です。果たして売れるのか。お客さんは来てくれるのか。不安と期待が入り混じりながら、迎えた販売会当日…。
店頭に並ぶ「夕焼けルビー」
販売会当日
浜松市の中心部で行われた地域の特産品を販売するイベント。周りには農家直売の販売店など、様々な店舗が店を構えていました。そんななか、1年以上かけて作り上げた夕焼けルビーが店頭に並びます。
販売価格は1本540円。
すると早速、最初のお客さんが…。
開店早々に駆け付けたのは、SNSで活動を知り、応援していたというお客さんでした。
お客さん:じゃあ2本のやつを。
石川さん:ピンクとルビーで?初めてのお客さんですよ
お客さん:やった、うれしい!
石川さん:記念すべき第1号。
お客さん:やった、うれしい!
石川さん:ありがとうございます
浜松市民 30代:「ずっと発売するのを待っていた。地元・浜松を応援する気持ちが、(石川さんは)すごく溢れていて、人柄もよくて。じゃあ俺も応援してみようかなということで。これは家に帰って娘たちと一緒に飲みたいと思う」
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「想像以上にうれしい。やっぱり自分の作ったものが買ってもらえて、飲んでもらって喜んでくれたらもっとうれしい。頑張ります」
開始5分で売れるという幸先のいいスタート。その後も、次々とお客さんが。
「夕焼けルビー」をSNSなどで知っていた人も、店頭で初めて見たという人も、次々に手に取っていきます。
浜松市 30代:「浜松がグレープフルーツ生産量日本一ということを全然知らなくて、自分も地元が浜松なので、何か貢献出来たらいいなと思って」
豊橋市 40代:「ずっとインスタで(活動を)見てた。それでいつできるのかなってすごく楽しみにしてて、発売日がきょうということで、いま走ってここに買いに来た」
浜松市 10代:「(飲んで)おいしいっすね。酸味あってめっちゃおいしいっす」
中には箱につめて買っていくお客さんも。
浜松市 60代
Q.どれぐらい買った?
A.「(ルビーとピンク)10本ずつで20本。障がい者雇用の関係で石川さんが少しでもお役に立てればと、そういう記事を読んで偉いと思って。それと同時にお酒好きだから、これ焼酎に合わせたらおいしいんじゃないかなと思って、ただそれだけの理由」
この日は、朝9時から正午までの3時間でおよそ130本を販売。想像以上の売れ行きに石川さんは…。
どいーにはままつ リーダー 石川大輔さん:「見たことあるって言ってくれる方がいたので、少しずつ有名になってきたんだとうれしく思う。いままでの活動を見てくれていた人が、楽しみにしてくれていたんだというのと、応援してくれてたんだというのが分かって、本当にやって良かったなと思った。皆さんの期待にも応えられたと、それがわかって本当にきょうは良かった」
商品はAmazonでも販売開始。「日本一のグレープフルーツジュース」を目指してゼロから始めたプロジェクト。石川さんたちの夢が大きな一歩を踏み出しました。