電気店、郵便局でも野菜を買える 静岡発「やさいバス」
燃料価格の上昇、ドライバーの人材不足などをうけ、年々、高騰を続ける物流コスト。そんな中、農作物の新たな物流の仕組みが注目を集めています。それが静岡で生まれた「やさいバス」です。
「やさいバス」営業担当 桶葭(おけよし)達さん:「拠点を決めて、時刻通りにバスのように運行しているので、やさいバスと言ってます」
静岡県牧之原市にある「やさいバス」の司令部「やさいバス中央市場」。「やさいバス」は、「エムスクエア・ラボ」が2016年に作った流通サービス。直売所や青果店など約40カ所に『バス停』を設置し、生産者は野菜を出荷、業者など消費者はバス停まで取りに行くという配送システムです。 「エムスクエア・ラボ」 加藤百合子代表:「これまでの流通は、静岡で作った野菜が1度東京に出て、ほかの地域で作ったものと一緒に静岡に戻ってくる。皆さんの手元に届くのに、4日くらいかかる」
生産者と消費者を直接つなぐ
これでは輸送コストが膨大に。そこで「やさいバス」はバス停を利用し、生産者と消費者を直接つなぐことで物流の効率化、コスト削減を実現しているんです。 この日、静岡県藤枝市のバス停にやってきたのは、トマトの生産者。
望月美佐さん:「温泉水を使って栽培している温泉美人トマト。焼津の旅館の若女将でもあるので、旅館の敷地内にわいている温泉水を使ってトマトを栽培している」
温泉水を使うことで、ミネラルと旨みのあるトマトになるそうです。サービス開始当初から「やさいバス」を利用している望月さん。その理由のひとつが、自分で決められる価格です。 望月美佐さん:「市場に卸すと市場の価格になってしまう。価格が季節変動で変わらない点も大きい」
価格に見合った商品を作る努力
市場では、商品の大きさや形、流通量などで価格が決められますが、消費者とダイレクトにつなぐ「やさいバス」は、純粋な“味で”評価する利用者が多く、「おいしいものを作って高く売ろう」というモチベーションアップにもつながります。
望月美佐さん:「自分たちで値付けをしている以上、価格に見合った商品を出さないといけない。年間通しておいしいものを味わっていただく生産努力につながる」
「価値があれば、高くても買う時代」
Food marche CHOHO
一方、業者はそんなこだわり満載の野菜を、欲しい分だけ少量でも買えるのが魅力のひとつ。早速、野菜の引き取りにやってきたのは、、、。 Food marche CHOHO 丸橋和典店長:「業務用スーパーで販売しています」
市街地にある業務用スーパー。周りにレストランが多いので、小規模農家が作る「やさいバス」の野菜が、客の要望にマッチしているといいます。
Food marche CHOHO 丸橋和典店長:「スーパーにない変わったものが求められる。付加価値があるトマトとか、価値があれば高くても買う時代、変わったいいものがあるので、導入した」
全国に広がるやさいバス
しかも、何種類の野菜が入ろうと、一箱の配送料は385円。1種類ずつ取り寄せることを考えれば、大きなコストダウンにつながります。そして、農作物でもっとも気になるポイントといえば鮮度。注文はネット上で行い、最短で2日後の納品となりますが…。 「やさいバス」営業担当 桶葭達さん:「注文受けてから収穫してすぐ出荷する。お客さんのもとには、すぐに届く」
実際、出荷日の朝に、浜松の畑で収穫されたものが、その日の午後には、静岡市のレストランに届く、ということも可能です。
実はいま、この静岡生まれのシステムが、全国に拡大。長野、神奈川、茨城を皮切りに、愛知や広島、九州でも準備が始まっています。また、元々業者向けに始まった「やさいバス」ですが、コロナ禍でも、直接野菜を購入できる、安心・安全なシステムとして、一般消費者の注目を集めています。そんな中始まったのが、「ご近所八百屋」。「やさいバス」の路面店です。 「やさいバス」営業担当 桶葭達さん:「人が密集するところでしか野菜が手に入らなかった。野菜を扱う店ではなくても、生活拠点のどこか1つに野菜があってもいい」
電気店で野菜を
こちらは、焼津市にある電気店ですが、新鮮でおいしい野菜を、お客さんにも味わってもらおうとお店で一括注文した商品を販売。この試みは、飲食店や郵便局などにも広がっています。
料理教室
さらにこちらのお店では、料理教室を開き、野菜を使ったレシピも紹介しています。選んだのは、浜松のまいたけ。 受講者:「甘い」「うまみがすごい」
受講者:「ここでまいたけ買ってから、ほかで買えない」
「やさいバス」営業担当 桶葭達さん:「むかしの八百屋さんだったら、これおいしいよ、と話ができた。それがなくなりつつあるが、もう1度野菜の魅力を伝えてもらえる場所があるのがいい」
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