「自分の犬とはっきりわかる」「ちょっとかわいそう」 犬や猫にマイクロチップ埋め込み義務化へ 阪神大震災きっかけに議論
マイクロチップを挿入
獣医師:「きょうはマイクロチップの挿入ということでお願いします」
獣医師:「胸の音を聞かせてください。身体検査上、問題ないので、きょうはマイクロチップを挿入させていただきます」
静岡市清水区にある、動物病院。この日は2匹の犬がマイクロチップの装着に来ていました。
獣医師:「マイクロチップを(袋から)出していきます。こんな形の注射器になっている」
専用の注射器を使って、首の後ろのあたりに挿入します。
獣医師:(マイクロチップを挿入)「頑張ってね。よしよし。えらい、えらい。頑張って、頑張って」
マイクロチップとは長さはおよそ1センチ、直径2ミリほどの円筒形の電子機器。埋め込んだところに専用のリーダーをかざすと…。
獣医師:(専用のリーダーをかざすと電子音が鳴る)「ピピッ!こういった番号が出てきます」
マイクロチップには15桁の数字が記録されています。この数字は同じものがなく、それぞれの犬や猫固有の番号になります。この番号と、飼い主の情報を国のデータベースに登録することで、犬や猫が迷子になっても、飼い主の連絡先が分かるようになります。
飼い主は「自分の犬とはっきりわかる」
ペットにマイクロチップを埋め込んだ飼い主は…。
飼い主 60代
「もし震災とか、静岡も昔から東海地震とかで、万が一いなくなったりした場合に、この犬が私どもの犬ですよというのがはっきりわかるようにということでさせてもらった」
飼い主 60代
「後ろからバイクでふかされて手から離れてしまって見つからなかったということがあった。こういった物(マイクロチップ)が入っていれば見つけやすいのかなと」
きっかけは阪神大震災
6月1日から改正動物愛護管理法が施行され、ペットショップやブリーダーなどが犬や猫を販売する際、マイクロチップを埋め込むことが義務付けられます。そして、買った人も自分の連絡先などを国のデータベースに登録することが義務化されます。この法改正のきっかけは「阪神淡路大震災」です。
今から27年前に起きた阪神淡路大震災では、1500匹を超える犬や猫が保護されました。しかし、飼い主の元に戻ったのはわずか数十匹。このように迷子になってしまうペットを減らそうと、議論が始まりました。
ペットショップでは…
こちらは、静岡市内のペットショップ。
西尾梓アナウンサー
「大きな瞳をしていてかわいいですね。こちらのペットショップにいる全ての犬には、既にマイクロチップが装着されているということなんです」
ドッグハウス ラヴァーズ 林久美子オーナー
「マイクロチップは法律的には良いと思う。私は反対じゃないです、賛成です」
こちらの店では、法律の施行に先立ち去年6月から、全ての犬や猫にマイクロチップを装着しています。義務化に賛成する理由は、迷子のペットを減らすこと以外にもあると言います。
ドッグハウス ラヴァーズ 林久美子オーナー
「今コロナ禍で犬はなんかおもちゃのように飼う人もいるし。こんなはずじゃなかったと捨ててしまう人も多いので、そういう面ではマイクロチップがあれば誰が飼ったかというのが分かるので、それがいいと思う」
おうち時間増え、ペットを飼う人が増加
コロナ禍でおうち時間が増え、ペットを飼う人が増加。去年1年間で新たに飼われた犬と猫は合わせておよそ89万匹とコロナ前と比べておよそ2割増えています。その一方で、世話をしきれずに捨ててしまうケースが後を絶ちません。マイクロチップの装着には、無責任な飼い主を減らす効果も期待されています。
今回の法改正では、装着の義務は犬や猫を販売するペットショップやブリーダーが対象です。費用は病院にもよりますが、数千円から1万円ほど。既に家で飼っている犬や猫に対しては、努力義務とされています。
街の人は、マイクロチップの装着をどう思っているのでしょうか。
静岡市 40代
「ちょっとかわいそうかなという思いもあるが、やっぱりマイクロチップを入れることで、どこかに逃げたりすると戻ってくる可能性があるので、極力入れることを考えている」
静岡市 50代(3匹の犬を飼う 既に購入時にチップが入っていた)
「うちの犬は全部入っているし、災害とかあった時にはあると安心かなと思う。手放してしまう人も結構多いと聞くので、そういうのが入っていると飼い主が分かるし、責任がやっぱり」
73%の飼い主が「賛成」「どちらかといえば賛成」
犬や猫を飼っている人に対して実施したアンケートでは、73%が装着の義務化に「賛成」「どちらかというと賛成」と答えています。「犬や猫が迷子になったときの身元確認が容易になる」「飼育放棄の抑制につながる」「災害や盗難時に身元証明ができる」などが主な理由です。
一方で、ペットの体内にチップを埋め込むことへの不安の声も聞こえました。
静岡市 50代(8歳の犬を飼う)
「今の状態でメスを入れるとか、あまり考えたくないなというのが正直なところ」
「今から入れましょうとなると、ちょっと考えちゃうかもしれない。例えば自分の体にそれを入れろと言われたら、やっぱり考えるし。同じ家族になっているので、今更傷つけてそこにいれるのもどうなのかなと考える」
「装着したい」飼い主は10.1%
マイクロチップを知っているけれど装着していない飼い主に、装着する意向を聞いたアンケートでは、「装着したい」と答えたのはわずか10.1%。過半数が「装着する予定はない」と答えています
マイクロチップは、体内に入れても毒性などがなく、長期間劣化しない「生体適合ガラス」で覆われています。装着は医療行為にあたるため、獣医師が行います。
みなとまちアニマルクリニック 望月敬太獣医師
「マイクロチップは明らかに大きな、言ってみれば異物を生体にいれることになるので、傷口が大きくなるので、できるだけ痛くないようにという技術的な配慮をしている。日本における動物を取り巻く環境が少しでも改善されればいいなと思っているので、僕は好意的に見ている」
日本獣医師会によると、装着による動物への障害はほとんどなく、副作用の報告も寄せられていないといいます。
一方で、飼い主が引っ越しなどをした際に登録情報を更新せず、連絡が取れなくなったなど制度の不十分さを指摘する声もあります。
まもなく始まる新しい制度。ペットをめぐる問題を解決する第一歩となるのでしょうか?