東大医学部に現役合格の元インカレ女王…研修医とアスリートの二刀流 心安らぐ「同期とのひととき」 静岡・藤枝市
「胸の音聞かせていただきます」
東大医学部をに現役で合格し、病院の研修医としても勤務するという文武両道の人物!最近の流行りで言うと二刀流。一言で言うとスーパーウーマン。
研修医仲間:「競技だけじゃなくて、仕事の面でも、かなりストイックに取り組んでいて尊敬してます」
ただ、そんな内山さんにはある思いが…。
内山咲良さん:「次の日本選手権で引退かなと…」
「文武両道」として目指す最後の挑戦。その思いと次へのステップに密着しました。
1日14時間以上勉強し東大医学部に一発合格
静岡市清水区にある清水総合運動場。日も沈んだなか、一人黙々と練習に励むのは、藤枝市に住む陸上選手、内山咲良さんです。
白木愛奈アナウンサー:「 こんばんは」
内山咲良さん:「こんばんは」
白木アナ:「 きょうは何の練習をされてるんですか?」
内山さん:「今日は競技場に来て、走る練習と少し飛ぶ練習をしに来ました」
内山さんは去年9月、陸上競技の大学生日本一を決める大会で、三段跳びで自己ベストとなる13mを記録し、見事日本一に輝いた元インカレ女王。さらに当時通っていた大学は日本最難関とも言われる東大医学部。高校時代は1日14時間以上勉強し、東大医学部に一発合格したという文武両道の人物です。
目標は6月の日本陸上競技選手権
そんな内山さんが、現在目標にしているのは、全国からトップアスリートが集まり、陸上競技の日本一を決める6月の日本陸上競技選手権です。
内山咲良さん:「三段跳びって跳躍だが、やっぱり走る力っていうのがベースの力としてとても大事なので、早く走るための練習として、これをやっている。(練習は)すごく孤独を感じることもあるし、不安とかもあったりするが、やっぱり私は多分陸上が好きだからここまでやってこられてるし、そこに全力を尽くしたっていうプロセスそのものを大事に愛おしく思ってあげようと…」
好きだからこそ、中学から10年以上も続けてきた陸上競技。ただ内山さんはいま、一つの節目を迎えていました。それが…。
内山咲良さん:「次の日本選手権で引退かなと思っている」
目標とする大会での現役引退。この春大学を卒業し、医療現場へと進んだ内山さんは続けてきた陸上と医療の両立について難しさを感じていました。
内山咲良さん:「どっちもやっぱり自分にとっては大事なこと。どっちかをどっちかの言い訳にしないっていう風にはやってきたかなと思っていて、でもだからこそ自分が納得できるような跳躍をして終わりたいかなと思っている」
研修医2カ月…スタートラインに立ったばかり
悩みぬいた中で至った今回の決断。
「文武両道」として最後の舞台へと翔けるなか、内山さんが考えている次へのステップとは…。
藤枝市の藤枝市立総合病院。その一室では、競技場とは別の姿で真剣にカルテを見つめる内山さんの姿がありました。
Q.このカルテを確認するというのはどうしてやっている?
内山咲良さん:「これは自分が見つけられなかったこととかを結構書いてくださっている場合もあったりするので、そういうのを見て、より良いアプローチというか、できないかなとか…」
陸上は10年選手ですが、研修医としてはまだ2カ月目。患者の診察などもすでに行っていますが、まだまだスタートラインに立ったばかりです。
内山咲良さん:「何が正常で、何が異常なのかという能力がまだまだ低いなと思っていて、点滴入れたり採血も100%成功するわけじゃなくて、できなくて患者に迷惑をかけてしまったりして、そういう時はへこむ」
そうしたなかで、この日研修先の先輩から下されたのは…。
藤枝市立総合病院 糖尿病・内分泌内科
髙山尚輝さん:「この患者さんの明日のインスリン量を決めて欲しくて」
内山咲良さん:「はい」
Q.すみません。いま何を話されていた?
髙山さん:「糖尿病はHbA1c(ヘモグロビンA1c)というもので管理されているが、それが内服薬をどんどん増やしても、(数値の)上げ幅がどんどん上がってしまってコントロールがつかなくなって入院している患者がいて、いまインスリン(治療)を始めようと思っているが、そのインスリン皮下注射の量を決めてもらおうかと思いまして」
Q.難しくてわけがわからない…。でも内山さんは患者のインスリン量を決めるということ?
内山さん:「そうですね」
Q.それはちなみに初めてきょう決める?
内山さん:「自分で決めようというのは初めて」
Q.どうですか気持ちは?
内山さん:「ついに来たかという感じ」
初めて行う責任重大な仕事に不安も感じるなか、それでも根底にあるのは、陸上時代に培った持ち前のストイックさ。納得できるまで質問を重ねながら、必要な情報を何度も確認します。そんな内山さんに、病院側も…。
藤枝市立総合病院
森田浩副院長:「研修医はやることがたくさんあって覚えることがたくさんあるので、細かい患者との接触というのは実際には難しいことも多いが、患者さんに寄り添って色々と話を聞きながらどういう風な治療法に結びつけていくかということをとても熱心に考えていて、本来の医療の中ではすごく重要なことだと思う。そういうことができる先生になれると思いますし、すごく期待している」
心安らぐ「同期とのひととき」
その後も、別の階にいる患者の定期回診など、様々な研修メニューをこなします。お昼すぎ、ここで束の間の休息に。
白木愛奈アナウンサー:「内山さん、今からお昼ご飯ですか?」
内山咲良さん:「はい、そうです。大体はお弁当を持ってくることが多くて、これは朝6時くらいに起きて作ってきました。赤があって緑、黄色みたいな感じ。でも、こんなのほぼレンジでチンしかしてないくらいでできてるし、この辺もすぐにできる簡単な感じなので…」
多忙な中でホッと一息つけるのがこのランチタイム。そしてそれ以上に内山さんが大切にしている時間が…。
白木アナ:「この集まりは何の集まりですか?」
内山さん:「研修医1年目の同期の皆さんです」
白木アナ:「こうやって昼休みに集まるんですか?」
内山さん:「昼休みは科によっては、時間通りに取れなかったり、前にずれたり後ろにずれたりということもあるが、タイミングがかぶっている時には、こうして話が出来る時もある」
自分と同じ同期の人たちと過ごす、何気ない日常の時間です。
白木アナ:「今もう咲良と呼んでいたが、皆さん下の名前で呼んでいる?」
研修医:「ウッチーって呼んでます。女子からは咲良って下の名前で呼んでいる気がします」
研修医
小長谷朱里さん:「アスリートという話があったが、普段本当に普通の同期と同じような感じで、一人暮らしが初めてと言って友達を招待するのが楽しみみたいな、すごく可愛くて、楽しい子です」
研修医
小林萌々子さん:「隣の席でご飯とか食べていても、今回っている診療科の情報とかをすごく調べていたりとか」
Q.ご飯食べながら勉強している?
研修医:「早く食べてやっているよね?」
内山さん:「早く食べてるかもしれない。単純にご飯を食べるのが早いのは多分癖で、あんまりよくない本当は」
お互いに支え合いながら、一歩ずつ医師への歩みを進める内山さん。そもそも医師になろうとしたきっかけはなんだったのでしょうか。
内山咲良さん:「自分自身も医者に診てもらう中で、女性アスリート外来にかかったこともあるが、体を見てもらうということ以上に話を聞いてもらったりとか、そういうところで救われたなというところもいっぱいあったし、自分も今まで陸上をしてきた経験を活かしてそういった女性アスリートをサポートしてみたいなと」
アスリートとして進んできた、内山さんが目指す医療。それは自身の経験を生かした女性の支援です。
内山咲良さん:「今のところは産婦人科医になりたいと思っている。最近だと産婦人科の中でも婦人科で女性アスリートを支援するというような取り組みがあって、体にも心にも寄り添える医者というのが理想してあって、例えば患者が辛く思っていることが他にもあるかもしれないと、その患者の心にも思いを馳せられるような医者になりたいと思っている」
午後5時過ぎ。病院の通用口には、これからまたしても陸上の練習へと向かう内山さんの姿が。
Q.研修もやってその後競技場に向かうって結構大変では?
内山咲良さん:「でも練習するためにはこうするしかないので」
Q.内山さんにとって医療と陸上は?
内山咲良さん:「どっちも自分にとっては大事なもので、どっちも捨てずに頑張りたいと思っているので、練習も研修もという形でやっている」
6月の日本選手権までは、医者とアスリートの二刀流。有終の美を飾るため、内山さんはきょうも強く駆け抜けます。