同じ本は複数置かず…こだわりの本を店頭に 本離れの中、本に触れる場所をつくりたい 静岡市
去年9月、静岡市にオープンした「ひばりBOOKS&COFFEE」。文学小説から絵本まで、約1万冊の新刊が並んでいます。小学校の教室ほどの小さな店内に(60平方メートル)カフェコーナーが併設されています。
太田原由明さん:「街からどんどん本に触れる場所がなくなっている。『本離れ』と言われているが、まず本を手に取って触れる場所がなければ仕方ないと思う。街中に本屋がある、そういう街が好きだから、自分でもできることがあるなら、そういうことを手助けしたいと思い、自分で本がある場所を作ることが一番の目標でした」
店主の太田原由明さん。51歳。「街の本屋」の売りは、お客との距離の近さです。
●太田原さんとお客さん
太田原さん:「こういう仕事しているんですか?」
お客さん:「いえ、全然。主人が」
太田原さん:「専門誌ですからね」
お客さん:「そうなんですか、私見たことない」
太田原さん:「なかなか出回ってないですよ」
お客さん:「いつも骨董市とか行って、時計探したり」
太田原さん:「そうなんですね、自分でやったりするんですか?」
お客さん:「いえ、磨いているくらい」
県内最大手の書店が閉店…「文化的場所が消えるのは、残念」
太田原さんがこの店を開いた理由。それは去年7月の出来事にありました。
太田原さん:「県内のチェーン店の書店員をしていた、25年ぐらい。一番県内で大きい店だったのでもう、まさかって感じ」
去年7月、10年間の営業を終えた戸田書店静岡本店。太田原さんはここの書店員でした。県内最大級の大型書店の閉店は、国民の半数が1カ月に1冊も本を読まないという時代の、『本離れ』を象徴する出来事でした。
太田原さん:「文化的な場所が静岡から1つ消えていくというのは、本好きだけでなく静岡の人には残念な出来事だったと思う」
「知らない本との出会いが、本屋の一番大事なこと」
書店員として約30年。本を売ることの難しさを身にしみて分かっていながらも、その決断に迷いはありませんでした。
太田原さん:「不安も自信もない、何も考えずに始めちゃった」
Q.奥様にオープンの話をした時どうだった?
太田原さん:「最後まで反対していた。本屋で知らなかった本と出会ったことって、皆さんあると思う。それが本屋の一番大事なこと」
太田原さんにも、心の安らぎとなる1冊の本との出会いがありました。
太田原さん:「大人向けの絵本で「星空」というタイトルです。学校とか家庭でつらい目に遭っている男の子と女の子が2人で冒険するっていう話です。これ僕も仕事とかでつらいことがあると書店の店頭で本置いてるので眺めて癒されていた本です。今でも時々眺めているんですけど」
こだわりの1冊を
店に並ぶのは、自ら選んだこだわりの本。1冊でも多くの本を取りそろえるため、同じ本を複数置くことはほとんどありません。
お客さん(富士市60代):「読みたいなと思う本がいくつも並んでいる。前の(大きな書店)だと探すのが難しくて、なかなか行きにくかった」
お客さん(静岡市50代):「スペースが限られているので、なんでも置くというわけにはいかないと思うが、こだわりの店主の棚を見るのが楽しみ」
その本棚には、ある秘密が…。
須藤アナ:「まだオープンして4カ月あまりしか経っていないんですが、本棚には少し使い古された跡があります。実はここにある本棚、すべて戸田書店静岡本店で使われていたものなんです」
大型書店の書店員から、街の本屋さんに。「本をもっと身近な存在に」。変わらない思いを胸に、本との出会いを演出しています。
太田原さん:「この本棚って、僕だけの本棚じゃない。あのお客さんがこの本買っていきそうだなっていう本を仕入れているので、僕はすごくワクワクしています。(本棚が)どういう風に変わっていくんだろとて楽しみです。本で人生が変わるということもあると思う。なるべく、人の心に届くような本を選べたらいいなと思う」