おからが出ない豆腐? リピーター続出 おいしくて栄養豊富な「一石三鳥」の秘密とは 静岡市

とってもおしゃれなカフェのようですが、実はこちら、豆腐屋さんなんです。看板商品はツルンと光る、真っ白な四角い豆腐。一見何の変哲もありませんが、実はある社会問題の解決にもつながる、一石三鳥の豆腐なんです。今年1月静岡市にオープンした大鈴屋安倍川店。市外からもお客さんが訪れる人気店です。

おからを出さない豆腐?

画像1: おからを出さない豆腐?

北川彩アナウンサー:「おしゃれで可愛らしい店内ですね。こんにちは」

大鈴屋豆腐店 
鈴木税社長:「いらっしゃいませ」

北川アナ:「こちらのお店にはどんなお豆腐があるんですか」

鈴木社長:「おからを出さない特殊製法の豆腐を作ってますので、一味違います」

北川アナ:「おからを出さない豆腐?」

画像2: おからを出さない豆腐?

 大豆から豆腐を作る過程で、豆乳を絞った際に残る「おから」。それを出さずに作られた豆腐なんです。一風変わった豆腐に、お客さんは興味津々。

客1人目:「店舗の看板におからを出さない製法の豆腐作りというのがあって、非常に興味があったのと、じゃあ味はどういうふうに違うんだろうと気になってお店に来た」

客2人目:「前に買っておいしかったのでまた来た。おからを使ってないということなんですけど、割と舌触りもあまり変な感じではなくて味が濃い」

 お味は?

北川アナ:「(食べて)すごく濃厚です。やっぱりこれは大豆をまるごと使っているからこその濃さですね。なめらかな食感の中に素材の味をしっかりと感じます」

開発の背景には悲しい経験も

 開発した背景には、大豆が大好物だという鈴木さんの悲しい経験がありました。

大鈴屋豆腐店 
鈴木税社長:「元々(別の)豆腐屋に勤めていて、そこで毎日のようにダンプカーいっぱいに積まれて捨てられていくおからを見て、もったいないなと思って、すごくショックを受けた。お金を払ってまで捨てられていた。もう本当に栄養たっぷりで、おからってすごい良いものだと思っていたので、宝の山を捨てに行くというのはつらかった」

画像1: 開発の背景には悲しい経験も

 全国で出るおからの量は、年間およそ66万トン。料理に使ったり動物のエサや肥料などにも使われていますが、年間3万トン以上が産業廃棄物として捨てられているんです。

大鈴屋豆腐店 
鈴木税社長:「なんとかこのおからを有効活用したいなと思って、クッキーに入れたり、ハンバーグに入れたりいろいろやってみたが、次から次へと出てくるおからをそこで使いきることはとてもできなくて、どうしたらいいかなと考えた末に、おからを有効活用する究極の方法は、おからを出さない豆腐を作ればいいんじゃないかと思った」

 この発想の転換から「究極の豆腐」を目指し、研究の日々が始まります。従来の豆腐作りでは、すり潰した大豆を煮て、絞る段階でおからと豆乳に分かれます。この豆乳だけが豆腐に使われます。

画像2: 開発の背景には悲しい経験も

大鈴屋豆腐店 
鈴木税社長:「うちの製法は大豆をまるごとパウダーにして、それを水と攪拌して豆乳にする」

 大豆を丸ごと使って豆乳を作ることにしたのです。しかし当初、大きな課題がありました。大豆のえぐみが入ってしまい、おいしさが損なわれてしまったのです。当時鈴木さんのお小遣いは月2万円。そのほとんどを開発費へ回し、毎日試作品を作り続けました。そして2年後、完成したのがこの企業秘密の大豆パウダーです。

大鈴屋豆腐店 
鈴木税社長:「おからを出さない製法で本当においしいお豆腐が完成した。嬉しかったですね。これならいけるって思った」

さらなるメリットも…

さらに、もう一つメリットが。おからに含まれる栄養素も全て取り入れることができるため、食物繊維や大豆イソフラボンなど、栄養価も抜群な豆腐になったのです。環境に優しく、おいしくて栄養も抜群。まさに一石三鳥の豆腐は、お客さんにも大好評となりました。

客3人目:「自分が買うことによって一役買った方がいいかなと思う。こういう健康志向の中で、一般の豆腐よりは多少高いかもしれないが、買う価値はある」

客4人目:「環境にも良いし、無駄なく材料を使えるのは今の時代に良いのかなと思う。とっても食感がしっかりしていて、おいしかった」

 鈴木さんが手掛けた豆腐は徐々に知名度が上がり、今では直営店やスーパーに留まらず、多くの飲食店にも卸しています。焼津市にある居酒屋「青宇宙(あおそら)」。食材にこだわる店主の法月さんも、大鈴屋の豆腐に惚れ込んだ一人です。

青宇宙 店主 
法月晃さん:「大豆の味が濃くて、すごくおいしい豆腐だと思ったので、オープンの時からずっと使っている。大豆本来の栄養や旨味がすべて詰まっているのが良いと思う」

 かつおだしを効かせたっぷりの野菜と一緒にいただく揚げ出し豆腐や、アメーラトマトと合わせてシンプルに仕上げた一皿など、多くの料理におからの出ない豆腐が使われています。

画像: さらなるメリットも…

北川彩アナウンサー:「(食べて)さっぱり。トマトとの相性抜群です。トマトの甘み、そして大豆本来の味わいがぐっと広がりますね」

青宇宙 店主 
法月晃さん:「豆腐の味が濃いので、なるべくその豆腐の味が活きるように味付けを心がけている。みなさん大体1回食べるとまた次も頼んでいただけるくらいみんなおいしいおいしいって食べてくれている」

惣菜やスイーツにも

大鈴屋豆腐店 
鈴木税社長:「お待たせしました。ありがとうございます」

 鈴木さんのお店では、豆腐だけでなく、お惣菜やスイーツも人気。もちろんこれも、おからを出さない豆腐や豆乳を使っています。

画像: 惣菜やスイーツにも

大鈴屋豆腐店 
鈴木税社長:「いろんな形で広まっていただければありがたい。もっともっとこの一石三鳥のおいしく体にも環境にもいい豆腐を、たくさんの方に食べていただいて、元気になっていただきたい」