コロナ禍で参加者制限の中…藤枝市は「家族の防災訓練」で対応 静岡県
菊川市は市の職員だけが参加
「避難してる人がいて一人発熱。新型コロナの疑いある。家がつぶれていなければ自宅に帰ってもらって待機」
静岡県菊川市は市の職員のみが参加し、避難所の運営などを想定した訓練を行いました。本来は県総合防災訓練のメーン会場となる予定でしたが、新型コロナの感染拡大を受けて中止に…。
訓練では災害と感染症、2つの対策が迫られる今年ならではの課題が残りました。
菊川市 伊藤欽文危機管理課長:「顔を近づけて協議しなければいけない状況もある。どうしても密になってしまう」
各自治体も、大幅な訓練の変更を余儀なくされています。
県内35市町のうち27市町が訓練実施、25市町は住民の参加制限
県内35の市と町のうち、訓練を実施したのは27市町。このうち25市町で住民の参加を制限しました。
専門家は、大規模な訓練ができない今だからこそ、家庭でできる備えの重要性を指摘します。
静岡大学 岩田孝仁特任教授:「組織だって参加するだけが訓練ではない。基本は自分の家族、自宅が安全であるというのが基本」
25年前の阪神淡路大震災では、死者6434人のうち、約8割が自宅で亡くなっています。(内閣府による)
静岡大学 岩田孝仁特任教授:「(当時と比べ)耐震化率を見ると、それほど大きく伸びているわけではない。今でも震度6強、7に襲われると、多くの建物が被災する可能性があるので、家の中の安全対策を徹底してほしい」
藤枝市の訓練は各家庭で…
斉藤慎一朗記者:「藤枝市の中学校で防災の特別授業が開かれています。生徒は班に分かれて、自分が住む場所の危険について学んでいる」
例年通りの訓練ができない中、藤枝市は各家庭に独自のワークシートを配布しました。授業では、市の担当者が生徒にシートの使い方を説明。最後に、ある宿題を言い渡しました。
藤枝市瀬戸谷中学校 西ケ谷友恵教頭:「お話いただいたものをもとに、ぜひ、家で家族の皆さんと一緒に、家の防災対策がどうなっているか、話してください」
中学1年の森脇温紀くん(12)。毎年、地域の防災訓練に参加していますが、今年はこのシートを使い、家族で話し合いします。
森脇温紀くん(12):「家具が固定されているかとか、家具で部屋の入り口がふさがれないかとか、そういうのを話し合いたいです」
今、覚えている限り家具は固定されているか?
森脇くん:「ちょっとギシギシいう」
訓練当日。温紀くんの家には地元の消防団に所属する、父の陽亮さん(42)らが集まりました。家族で話し合いながら、チェックシートを埋めていきます。
父:避難先はどこですか?
温紀くん:小学校だっけ?
父:違う
温紀くん:幼稚園?
父:そう、高根幼稚園
父:自宅の周辺は大雨による土石流と急傾斜崩壊の恐れがありますか?
温紀くん:あります
続いていつも温紀くんが生活しているリビングへ。食器棚や本棚をチェックしていきます。
父:家具の転倒防止できていますか?
温紀くん:できてる。できてる気がする
訓練は約1時間で終了。普段は消防団として訓練を指揮する陽亮さんに教わりながら、防災グッズの使い方や避難経路を確認しました。
温紀くん:「自分の部屋はガラスが近くにあり、物が散らかっているので、もう少し整えて、逃げにくくならないようにしたい」
父・陽亮さん:「どうしてもマンネリ化してしまって、同じ訓練、同じ避難経路という形になってしまうが、家族で子どもの意見を聞きながら対策できたことがよかった」
コロナ禍で見直される家族の防災。新型コロナが拡大する中でも、自然災害は待ってくれません。