「リポーター泣かせ?」のビールも…静岡は全国屈指の『ビール県』 高まる“クラフトビール熱”

 先日、静岡市の港町・用宗で開催されたイベント。その主役は、クラフトビールです。

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静岡市から:「(ビールを飲んで) ああ!おいしいです!」
島田市から:「すっきりして飲みやすいです。普通のビールとは違いますね」
静岡市から:「結構、県外からビールの旅行に来る人も多い。静岡をガンガンに盛り上げてくれれば、経済効果もあると思う」

静岡県には20以上の醸造所

画像1: 静岡県には20以上の醸造所

 近年伸び悩んでいるビール類とは対照的にクラフトビールの売り上げは、ほぼ右肩上がり。20以上の醸造所がある静岡県は、実は全国でも指折りの“ビール県”なんだそう。

画像2: 静岡県には20以上の醸造所

イベント主催者・BCビアトレーディング 草場達也代表:「静岡市、静岡県といった所は、事業者が集まりやすい場所、設備的要件、すべてがそろっている土地のひとつ。かつ昔からお酒造りだったり、ビール造りといった所に関して、住んでいる人たちに理解をされている場所だと思う」

沼津市「マスターズブリューイング」

 県内でも“クラフトビール熱”が高まる中、特に注目されているのが県東部エリアです。

画像: 沼津市「マスターズブリューイング」

須藤誠人アナウンサー(沼津市・マスターズブリューイング):「JR沼津駅前の商店街です。こちらの通りにクラフトビールの醸造所があるんです。中に入って行きますと、大きなタンクが見えていますね。こちらで作られたビール、出来立てのものが2階でいただけるということなんです」

出来立てほやほやのビールを味わえる

 県東部では、沼津市を中心に、様々なクラフトビールが誕生し、大盛況。こちらは去年の11月、沼津市に5番目にできた醸造所「マスターズブリューイング」。2階には飲食店が併設され、出来立てをその場で楽しめます。

 そもそもクラフトビールとは、いったいなんなのでしょうか?

画像1: 出来立てほやほやのビールを味わえる

マスターズブリューイング 益谷尚豪代表:「基本的に(原料)は、麦芽とホップと水、あとは酵母という形になります」

 主な原料は麦芽・ホップ・水・酵母と、普通のビールと変わりはありません。クラフトビールの定義は、小規模で、独立した醸造所で造られていること。さらにポイントとなるのは、職人のこだわりです。

画像2: 出来立てほやほやのビールを味わえる

マスターズブリューイング 益谷尚豪代表:「ホップはペレットで、こういう形で。これもうちでは30種類ぐらい用意している。これがビールの香りを作る。で、この麦芽を粉砕した、こういうものを作って、これを60~70℃ぐらいで熱してると、麦芽糖というものが出てくる。それをこして、煮沸しながらホップを入れる。煮沸している1時間の最初に入れたやつだと苦くなるし、最後に入れたやつは、苦さより香りが残る。その途中途中でどういうふうに、どういう割合でホップを入れていくのかっていうのが楽しみでもある」

 原料となる麦芽をお湯に溶かし、できた麦汁をろ過するなど、工程はほとんどが手作業。クラフトビールは、希少な原料を使うことやあえて手間のかかる製法で造られることも特徴です。

須藤アナ:「やっぱり近くで見ると、タンクも大きいですね」

画像3: 出来立てほやほやのビールを味わえる

益谷代表:「はい、500リットルの発酵タンクと貯酒タンクが5基あるんですけども、これがたぶん日本で一番小さい部類に入る醸造所だと思います」

須藤アナ:「これでも小さいんですか!?」

益谷代表:「私が一人で醸造家として、運営しているので」

 醸造する職人のこだわりが詰まった味わいがクラフトビールの魅力。自宅でも、その味を楽しめることが人気を支えています。

益谷代表:「では、うちの看板商品であるヘイジーマスターズIPAというのを」

須藤アナ:「黄金色に輝いていますね」

益谷代表:「軽く濁りがあるんで」

 へイジーと呼ばれる、濁りが特徴の一杯です。

画像4: 出来立てほやほやのビールを味わえる

須藤アナ:「では、いただきます。ああ、いい香り」
(ビールを飲んで)「苦みと香りのバランスがものすごくいい」

益谷代表:「このビールは、うちで苦みを一番抑えたタイプ」

須藤アナ:「そうですか!? でも後味スッキリとした、キリッとした苦みですね。すいすい飲み進んじゃうような。かなりおいしいです」

「リポーター泣かせのビール?」

 富士山を眺めながら、味わって欲しいこちらは…

画像: 「リポーター泣かせのビール?」

益谷代表:「飲む方によって、甘いと感じる人と苦いと感じる人がいるという」

須藤アナ(ビールを試飲して):「なるほど、僕は甘いと感じました」

益谷代表:「理論数値では、こっちの方が苦いんですけども、人によって甘く感じたり、苦く感じたり、まるで朝日を浴びている富士山のように、刻々と表情が変わっていくということで、紅富士って名前にした」

須藤アナ:「それぐらい、何なんでしょうね!? リポーター泣かせなところもありますよね」

 そもそも、人口20万人ほどの沼津市に、5つもの醸造所が集まるのは、国内では異例のこと。

 そんな“クラフトビールの街”からは次々と新しい動きが…

三島市「リパブリュー」

須藤アナ:「三島市の住宅街にやってきました。その中でもひと際目立つ大きな建物、あちらでクラフトビールが作られているということなんです」

 沼津市のクラフトビール醸造所「リパブリュー」が今年3月、三島市で稼働を始めたのが、缶ビールを主体とした新しい工場。驚くべきは、その大きさです。

画像: 三島市「リパブリュー」

須藤アナ:「こちらのタンクでは、どれくらいの量のビールが入っているんですか?」

リパブリュー 畑翔麻代表:「はい。こちらのタンク、4700リットル。缶にすると、1万缶ぐらい」

須藤アナ:「1万缶ですか!?  想像がつかない量ですね」

畑翔麻代表:「例えると、365日、28年分ですね」

 こちらの工場、約5000リットルの発酵タンクを8基も備えるなど、県内有数の規模を誇ります。2年前には東部の製造業社など、6社が集まって共同組合を設立。原料や資材の共同購入するほか、自治体との関わりも深めているといいます。

沼津市の「ふるさと納税」返礼品に

画像: 沼津市の「ふるさと納税」返礼品に

畑翔麻代表:「私自身もコロナ禍で缶ビールの製品を販売し始めたんですけど、その頃から沼津の名産品として認められて、ふるさと納税の(返礼品)としてクラフトビールを出している」

 新たな醸造所や新しい工場の立ち上げなど、活気づく県東部のクラフトビール。醸造所が集まるは、首都圏に近く、富士山からの湧き水に恵まれていることが背景にあるといいます。

畑翔麻代表:「リパブリューの定番商品 69IPAを」

須藤アナ:「では、いただきます」
(※ビールを飲んで)「キリッとしてますね。柑橘系のような香りがするなかに、苦みがきますね」

 続いて、濁りが特徴のこちらは…。

須藤誠人アナウンサー(ビールを飲んで):「全然違う。甘いです。フルーティーな味わいですよ、不思議な口当たりです」

畑翔麻代表:「すごいやっぱり、ビール飲みなれているからか、言っているとおりで」

須藤アナ:「本当ですか!? でも、これは割と女性でも飲みやすいのかな、ビールに慣れていない方でも」

「ビールを求めて静岡県に来るのが理想」

 クラフトビール熱が高まっている、静岡県。造り手が今後に期待することは…?

画像: 「ビールを求めて静岡県に来るのが理想」

リパブリュー 畑翔麻代表:「まだまだクラフトビールを知らない人たちが多いので、そういった人たちに一人一人幅広いビールのスタイルがあることを知っていただけたらと思う」

マスターズブリューイング 益谷尚豪代表:「地元の方にも、もちろん飲んでもらいたいけど、東京とか大阪の方がわざわざビールを求めて静岡県に来るっていうのが理想です」

 地域の特色を生かしつつ、作り手の思いもたっぷり詰まったクラフトビール。その人気は個性豊かな香りとともに、さらに広がりをみせそうです。