“駿河湾の宝石”サクラエビに熱狂 「浜のかきあげや」は100mの行列250分待ち 静岡市清水区由比
午前7時…整理券は40番台
午前7時すぎ。港に鳥のさえずりと仕込みの音が響く中、店を訪れる人たちが、次々に「黄色い札」を手にしていきます。その正体は、この店で注文をするために必要な整理券。配布開始から40分余りで、すでに番号は40番台です。
愛知県から来た親子(70代・50代)
母「43番」
娘「43番?」
母「4時に起きて出てきたんだよ」
Q.道は混んでませんでした?
母「ガラガラ」
43番の札を手にしたのは、愛知県から来たという親子。
愛知県から来た親子(70代・50代)
母「テレビでやるから。ゴールウィークに入ったら、やたらとここが映るから、それで来た。」
Q.きょうのお目当ては何ですか?
母「(無言で店を指差す)」
娘「私は生のサクラエビ」
Q.生のサクラエビは地元だと食べる機会がない?
娘「ぜんぜんない。サクラエビそのものも売ってない」
母「あんまり見たことないね」
娘「コウナゴばっかりでしょ」
母「そりゃそうだよ」
娘「人生初…51年目にして初めての生のサクラエビ。楽しみ」
今年は豊漁
駐車場に止められた車を見てみると、岐阜に、大阪、岡山など、そのほとんどが県外ナンバー。各地から由比に人が集まってくる理由、その背景にあるのが、サクラエビの豊漁です。
4月解禁された今年の春漁。初日の水揚げ量はおよそ40トンと、去年に比べて44倍にも上りました。今シーズンは、これまで7回の水揚げでおよそ173トンと、漁の期限を1カ月あまり残した段階で、すでに去年の春漁に近い数字となっています。
店を訪れる人は後を引かず、午前8時近くになると番号は3ケタに突入。
三重から来た夫婦
夫「三重県の方は(サクラエビが)全然ないので、本当にこれをメインに来た感じですね。」
ただ、ゲットできた整理券の番号は…
三重から来た夫婦
妻「186」
Q.何時間待ちとか聞きました?
妻「180分待ち」
夫「朝も一応、抜いてきたので」
妻「直で来て朝ごはん代わりに食べれればと思っていたんですけど、まさかのお昼すぎ」
夫「ビックリしました。ここら辺だと富士山がちょっと見えにくいから、見える場所があればいいなと、ちょっと散歩しようかなと思ってます」
妻「3時間待ちます。頑張ります。」
開店10分前には100メートルの列。待ち時間250分
待ち遠しさからなのか、メニューを眺める人々や、調理する様子を、カウンター越しに見つめる人の姿も…。オープンまで1時間を切った頃には、整理券は200番台に入り、手書きの紙に代わっていました。
スタッフ(オープン10分前)
「前のお客さんの番号を見ながら、ズラッと向こうに行って並んでください。(最後尾は)今250番ぐらいの番号を持ってますから」
オープン10分前、整理券の順に並んだ列をたどっていくと…。
その距離、およそ100メートル。待ち時間は、テーマパーク並みの250分にまで…。
店の人と客のやり取り
店「好きな所っていうか、ご自由になさっても大丈夫です」
客「2日くらい待つのかと思って」
店「いえいえ、4時間で済みます。お待ちしております」
Q.ここまで混むことは結構ある?
スタッフ「だいたいそう、(営業する)金・土・日の3日間はそう。漁が始まってからね。きょうは特別多いよね。きょう多いね。普通の日曜日より多いね」
商店街は…
いつも以上に人が訪れていたのは、由比の商店街も同じです。創業200年以上を誇る、こちらのお店では、この店の売りのひとつ、黒はんぺんフライが大好評。
店員:「いつも閑古鳥が鳴いてるんだけど、きょうは結構歩いています。
待ってられない人たちが、この辺を散策しながら食べたりとか、揚げ物も結構出ました。食べながら歩くって」
黒はんぺんフライの味をかみしめている男性、本来のお目当ては…
愛知県から
「旬のサクラエビを何度か食べたことがあるんですけど、やっぱりおいしいなと思っているんで。やっぱりかき揚げ丼は最高。ドうまいですもんね」
Q.浜の方も見たのか?
A.「混んでたんで、3時間以上待つと言われているので、それを食べるくらいだったら、この辺を散策して、(空いている店で)食べておけばいいんじゃないかなと思ってるんで」
地元名産のシラス、サクラエビを使った「紅白ピザ」
また、同じ通り沿いにあるこちらのお店では、地元の名産を使った新たな商品を開発。それが、窯から取り出された、このピザ。ここに、由比で取れたシラスと、同じく由比産のサクラエビをふんだんに乗せた、その名も「紅白ピザ」です。
渡辺忠夫商店 渡邊敬文さん
「ここで取れたもので何かやりたいと始めたもんで、他の肉とかやっても意味がないもんでね、ここで取れたサクラエビとシラスのみで」
3年ほど前から始めたというこのピザ。1日30枚ほどを焼き上げ、保存がきくよう冷凍で販売しています。
渡辺忠夫商店 渡邊敬文さん
「ここ3年くらいは取れなくてエビも高くなっちゃったり、コロナもあって大変だったけど、(今年は)初日取れて、まだ最近まで取れているからね、本当に良かったよね」
Q.期待している部分は大きい?
A.「そうだね。今年のGWはやっぱ、一生懸命こっちで商売してね、エビ、シラス、地元のものを売っていくという形でやっていきたいと思ってるんだけどね」
正午には新たに並ぶのはストップ
午前10時、浜のかきあげやがオープン。ようやく出会えた駿河湾の恵み、皆さん、次から次へと口の中へ頬張ります。
午前7時すぎから待っていたという、藤枝から来たという親子は…
藤枝市から来た親子
母「着いて51番でした。何時ですかって聞いたら『1時間くらいです』と言うから、じゃあ、10時50分くらいですねって。今見たら、ディズニーみたいな」
お母さんが話す横では、生のサクラエビを食べる娘に、お父さんが自分のかき揚げをを渡す一コマも。
藤枝市から来た親子
Q.生とかき揚げは違う?
娘「違いますね。」
Q.どっちの方がいい?
娘「私は生の方が好きですけど、(かき揚げも)サクサクでおいしいです」
愛知県から来た親子
娘「やったー」
こちらの親子も、念願の生のサクラエビとご対面。
愛知県から来た親子
娘「いただきまーす。(食べて)うーん! こんなに甘いの? 全然臭みがなくて、甘くて、甘エビみたいに甘くておいしい」
母「エビのドーナツも買ったわよ。おみやげで」
娘「かき揚げは夜、晩ご飯」
Q.お昼は生を食べて…
母「夜はかき揚げで」
娘「早起きしたかいがあった」
そして、まだまだ行列が続く正午。この時間で、新たに並ぶのはストップとなりました。
今着いた客と警備員
客「終わりですか?」
警備員「営業時間がオーバーしちゃうので、これ以上は」
客「そうなんですね」
この時間になっても、まだまだ200分待ち。結局、3日最後にサクラエビにありつけた人は、午後3時を過ぎてからだった、ということです。