東大医学部現役合格の研修医は元インカレ女王 「より前へ、より遠くへ…」 異色のアスリートが最後の挑戦 静岡・藤枝市
あるときはアスリート、あるときは医師として…
内山咲良(さくら)さん:「どっちも自分にとっては大事にしたいことだから、どちらかをやっているから、どちらかはできないという風にはしないで、どちらも捨てないように頑張ってきたところは大きい」
医者とアスリート、二足の草鞋。より前へ より遠くへ 最後の挑戦です。
静岡市清水区、清水総合運動場。内山咲良さん、24歳。専門は三段跳びです。2021年9月、大学生日本一を決める全日本学生選手権で自己ベストとなる13m02を跳び、優勝した元インカレ女王です。
中学生の頃に始めた陸上。
内山咲良さん:「私はたぶん陸上が好きだからここまでやってこられているし、大学の時も結果が出ないことが結構長くあって、でもその時に陸上を続けるのかという問いを自分に投げかけて、それでたとえ結果が出なかったとしてもプロセスが愛おしいと思えるだろうと思ったから、陸上を続けてきた」
そんな内山さんには、もう一つの顔があります。
内山さん:「痛いところとか不調なところはないですかね?」
患者:「ぜんぜんないです」
内山さん:「わかりました、ちょっと軽く診察をさせてくださいね。胸の音聞かせていただきます」
内山さんの決めた「あること」
2022年4月、藤枝市立総合病院で研修医としてのキャリアをスタートさせた内山さん。
患者:「一言で言えば、説明上手というか、説得力がある。さすがって感じです」
内山さん:「診ている患者さんの数がやっぱりまだ少ないから、何が正常で、何が異常なのかを見極める能力がまだまだ低いと思っている」
昼は研修医、夜はアスリート。そんな内山さんを研修医仲間は…。
同期の研修医:「普通の同期と同じ感じで、本当に他愛ない話で盛り上がったり、もちろん仕事の話もするが、すごくかわいくて、楽しい子です」
同期の研修医:「競技だけじゃなくて、仕事の面とか学問についても、かなりストイックにまじめに取り組んでいる一面もあって、尊敬しています」
内山さん。あることを決めています。
内山さん:「次の日本選手権で引退かなと一応、思っています。両立ってすごく難しくて、本来あるものに100%かけられるはずの力を、分散してかけているというところもあるので、どっちも質が落ちない範囲で、でも、ちょっとかけられる労力としてはもう少しあるんだけどこっちもやりたいから少しセーブしているという面も、多少あったりはした。
アスリートとしての生活人生というのは、どこかでは絶対終わりを迎えるものというか、私は、陸上じゃないものの節目が結構あって、そこに合わせて、アスリートとしての生活にも線を引いていくのが、納得がいくのかなと思って、こういう決断になっている」
内山さん:「医者になったし、医学にその自分の労力を全部向けるべき時なのかなという気持ちは正直あったりします」
日本選手権で最後の跳躍
11日、大阪で行われた日本選手権。
●会場アナウンス:「ブルーゾーン、内山咲良」
女子三段跳びにエントリーしたのは20人。初めにそれぞれ3回跳躍します。そして上位8人は追加で3回跳び、最も良い記録で競います。
内山さん、1度目の跳躍。12m96。自己ベストに近い記録です。
内山さん:「一本目跳び終わってあの記録だったときはすごくホッとした」
そして、アスリートとしての内山さん 最後の跳躍。記録は12m53。結果は4位でした。
内山さん:「今回の4位という順位は、望みうる最高の順位だったのかなと受け止めているが、やはり、自己ベストは出したかったかなという気持ちもあって、そういう意味では少し悔しい気持ちも残っている感じ」
白木愛奈アナウンサー:「およそ10年の陸上人生に一度一区切り、悔いはないですか?」
内山咲良さん:「やれることはやったのかなという気持ちはあるが、まだやっぱりちょっと受け止め切れていないところはあるかもしれません。ちょっと実感がないというか。なのでまた、その少し時間が経って、気持ちを整理していければいいのかなと思っている」
あるときはアスリートとして。これからは医師として。
内山さん:「体にも心にも寄り添える医師というのを目指しているが、まずは実臨床に当たるうえで、知識面というか、実用的なところが足りていないと思うので、そこを補完して、まずは体をきちんと見られる医師を目指していきたいと思います」