コロナ禍で変わるふるさと納税 自宅で楽しめる返礼品強化で3割増 静岡・藤枝市

 静岡県藤枝市にある割烹「魚時会館おさかな亭」。目利きのプロが選んだ鮮魚と、素材を生かした逸品が自慢です。創業88年目の今年、最大の危機に陥りました。

画像: コロナ禍で変わるふるさと納税 自宅で楽しめる返礼品強化で3割増 静岡・藤枝市

魚時会館 おさかな亭 石上忠義専務:「宴会と仕出しをメインでやっていたので、2月末から4月の上旬にかけての予約が全てキャンセルになってしまった」

 店の売り上げの柱は宴会や法事、仕出し弁当。新型コロナウイルスの感染拡大は経営を直撃しました。

魚時会館 おさかな亭 石上忠義専務:「県や国の支援の手続きを進めて、営業形態も変えてやっていたが、このままでは非常に危険だなと思って、周りの店もすごく大変になっていくなと思った時に、市に何か連携や支援をお願いできないかと話をさせていただいた」

 苦境を乗り切るには、どうすればいいのか。活路を見いだしたのは、ふるさと納税でした。

 藤枝市は、新型コロナの影響による外出自粛を逆手に取り、自宅で楽しめる返礼品を強化していました。

 鰆(さわら)の西京焼きなど、魚時が自信をもって提供する魚の詰め合わせは2万円のふるさと納税で受け取ることができます。店の返礼品が市の特集に掲載されてから、注文は例年の5倍にまで跳ね上がったということです。

魚時会館 おさかな亭 石上忠義専務:「いろいろな方からご注文いただいて、その気持ちもうれしかった。外食ができなくなると、お客様と接点を持つ手段が限られてしまうので、その中でふるさと納税からご注文いただいて、おいしかったという反響をいただくのは非常に励みになった」

藤枝市の担当者「ふるさと納税通じて地域の魅力を知って」

 2008年に始まったふるさと納税ですが、現在、全国で広がっているのが、「ガバメント クラウドファンディング」です。これは、地方自治体がプロジェクトの実行者となり、インターネットを通じて資金を募る仕組みです。

 静岡県も5月に開始し、3カ月間で、約1000万円が集まりました。寄付金は医療従事者への支援や、PCR検査の拡充にあてられるということです。

 専門サイト「ふるさとチョイス」では、全国約500の自治体が、新型コロナに関連した特集を企画しています。藤枝市でも、「家ごもり応援特集」「市内事業者・生産者支援特集」を組みました。

藤枝市企画創生部 堀田貴久さん:「今年の4月にふるさと納税に返礼品を提供している事業者から、売り上げが大幅に減少しているという話を聞いて、ふるさと納税をツールとして何か支援ができないかと考えた。ふるさと納税の宣伝をしていくという形で支援をすると、市として予算がなければできないということはないので、スピード感を持ってできる」

画像: 藤枝市の担当者「ふるさと納税通じて地域の魅力を知って」

 最近3カ月の藤枝市へのふるさと納税は、去年より3割増えたといいます。寄付した人へ感謝の気持ちを込めたふるさと納税の返礼品は事業者や生産者の支援にもつながっています。

藤枝市企画創生部 堀田貴久さん:「寄付者も全国のいろいろなところに行けなくなったというのを、ふるさと納税を通じて地域の魅力を知って、またコロナが収まったらぜひ寄付した地域へ訪れていただくのが、ベストな形だと感じる」

魚時会館 おさかな亭 石上忠義専務:「ふるさと納税を利用される方も店舗側も無理のない範囲でやっているので、どちらも得になっているところは、非常にいいと思う」

 応援したい自治体に寄付をする「ふるさと納税」。新型コロナの感染拡大で、これまでに経験がない危機に直面した今こそ、大きな力となります。