犠牲者のほとんどが圧死…阪神大震災から26年 住宅耐震化に限界も…95%の目標に届かず 静岡県

 1月17日で、阪神淡路大震災から26年になります。近代都市を襲った大地震は、私たちに「耐震化」という課題を突き付けました。しかしあれから26年が経ち、「限界」も見え始めています。

 1995年1月17日午前5時46分、兵庫県を襲った震度7の揺れ。6437人が犠牲になった阪神淡路大震災です。死因のほとんどが建物の倒壊による「圧死」と言われています。

 当時、静岡県の職員として被災地に1カ月に渡り、応援に入った岩田孝仁さん。40年以上防災に関わってきた中でも、あの経験は「特別」だといいます。

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静岡大学 岩田孝仁特任教授:「人間が作ったもの、ビルとか道路とか建物とか、人が構築してきたものが、こんなに簡単に壊れてしまうのがショックだった」

岩田教授:「冬のさなかだったがうちの…(涙)、自宅の中から救助された人が毛布もない、そのまま路上で家族に看取られて囲まれている光景もあった」

 あれから26年、岩田教授が今も残る課題として一番にあげるのが「耐震化」です。

岩田教授:「耐震性がないとそこをもう少しちゃんとやっておかないと、時間が経って忘れ去ってしまうと揺れの脅威に対して日常感覚が鈍ってきている」

 阪神の教訓を生かし静岡県が進めてきた住宅の耐震化。しかし、ここにきてその「限界」が指摘されています。耐震化率は89.3%と、全国平均を上回っていますが、最近は伸び悩みの状態が続いています。

 県が掲げた「今年3月までに95%」という目標は、達成困難な状況です。特に進んでいないのが、高齢者の暮らす古い住宅だといいます。

築42年の自宅を耐震化 自己負担は40万円

画像: 築42年の自宅を耐震化 自己負担は40万円

 静岡市葵区新間で美容院を営む長倉カツヨさん、79歳。3年前に夫を亡くし、一人暮らしになったことをきっかけに、築42年の自宅を耐震化しようと決断しました。
Q.一人暮らしになると急に不安になる?
長倉カツヨさん(79):「不安大ですね。今までは(夫が)ただいるだけで違う。何もしなくても、今は猫しかいないから」

 工事は去年秋、静岡市の補助制度を利用して行いました。住居部分の7カ所を補強し、費用は約140万円。自己負担は40万円ほどで済んだといいます。

Q.どんな工事を?
長倉さん:「かすがいは入ってはいたが、年数が経っていたので、もろくなっている。畳を上げて、床下から天井を抜いて丈夫なかすがいを入れてくれた」

長倉さん:「耐震工事をする前は震度1でも2階が…揺れた 風でも揺れた。大型車が通っても揺れた。それがあまり感じなくなった。ありがたい」

 県内の各自治体では、こうした補助制度や無料の耐震診断などで補強を進めたい考えですが、思うようにいかないのが現状です。

1980年以前に建築の建物…15万戸が基準満たさず

画像: 岩田教授提供

岩田教授提供

 県によりますと、1980年以前の古い耐震基準で建てられた住宅やビルなどは、県内に約32万戸。そのうち15万戸が耐震基準を満たしていません。想定される南海トラフ巨大地震では、阪神のような揺れと東日本大震災のような津波が同時にくると言われています。
静岡大 岩田孝仁特任教授:「最初の一撃に耐えないと、そのあとにつながっていかない。もう一度我々は、(南海トラフ地震の)震源域の真上に住んでいるという意識を強く持つ必要がある」

 建物の倒壊で失う命がないように。26年が経った今でも大きな課題は残されたままです。