牛乳が消える? ステーキが食べられなくなる? 子牛1頭1万円も…取引価格暴落に追い打ちかけるエサ代の高騰 酪農家「これが続いたら廃業」
価格が10分の1以下になる牛も
ドイファーム 土井良太専務:「こちらの牛はホルスタインの雄牛で、先月生まれた。今、市場に出すと大体1万円ぐらいの価値になっている。コロナ前は大体10万円ぐらいだったが、10分の1以下にまで価値が下がってしまっている」
「こちらの牛は先月31日に生まれた交雑種(黒毛×ホルスタイン)のメス。この牛もコロナ前までは20万円前後だったが、最近は10万を切るようになっていて、今だと8万円ぐらいの価値まで下がってしまって、とても経済的に厳しい状態」
さく乳牛80頭で餌代は月に1000万円
独立行政法人農畜産業振興機構によると、子牛1kg当たりの単価は下落の傾向が続いていて、黒毛和牛は5年前と比べ400円ほど、他の種類も200円ほど値下がりしています。取引価格の暴落。そこに追い打ちをかけているのが、餌代の高騰です。
ドイファーム 土井良太専務:「こちらの牛舎は全部さく乳牛で、全部で80頭ぐらい入っている。(餌代は)毎月1000万円近くはかかっている」
Q.牛乳販売の利益と餌代のバランスは?
A.「月によっては、餌代の方が多い月もある」
生乳の生産がメインとは言っても、肉牛の販売も欠かせない収入源です。
ドイファーム 土井良太専務:「子牛の販売利益で北海道から新しい親牛を導入するが、そのお金がない。いま全国の酪農家は同じような厳しい状態になっているので、一斉に酪農家がなくなると牛乳がなくなる、国産の牛乳がなくなるということになりかねないので、本当にどうにか国や県に助けをいただければというのが本音」
物価高騰で牛肉が需要減 肉牛の価格も下落
価格が下落しているのは子牛だけではありません。
静岡市葵区の水見色地区にある「勝山畜産」。毎年およそ100頭の子牛を仕入れ飼育しています。育て上げた成牛は、これまで県の品評会で3度の最優秀賞に選ばれたこともある「静岡するが牛」というブランドで市内を中心に販売しています。
勝山畜産 勝山佳紀代表:「牛肉が動かないという話もお肉屋さんから聞いて、動かないということは、どうしても余ってしまうので、売れ行きが下がって、価格が下がってきてしまって…」
物価高騰で牛肉の需要が減っているため、成牛自体の出荷価格も下がっているのです。
こちらの牧場では、1頭あたりの出荷価格が去年に比べ10万円~20万円ほど値下がり、年間の売り上げは1000万円以上減少したと言います。出荷するまでに必要な2年分の経費を差し引くと、現状、利益はほとんど残らないと言います。
「売っても赤字」
勝山畜産 勝山佳紀代表:「売ったお金で自分たちも子牛を買うので、利益を出すとなると、どこにしわ寄せが行くかというと、子牛の価格を下げなきゃいけない。下がっているが、まだこれでも高い方で利益は出ない」
Q.売っても赤字?
A.「赤字です」
肉が売れなければ成牛が売れず、成牛が売れなければ子牛も売れない。まさに負のスパイラル。
勝山畜産 勝山佳紀代表:「(経営が)大変だからと出荷だけして2カ月ぐらい子牛を買うのをやめるとすると、2年後に出荷する牛がいなくなる。出荷できなくなると、餌代だけ丸々支払わないといけない。支払うお金がどこにあるかというと牛を売って餌代にするので、常に毎月、牛をいれていないと経営的には怖いところがある」
勝山さんは知人の農家から餌となるワラなどを安く譲ってもらい、経費を抑えるようにしていますが、不安は尽きません。
勝山畜産 勝山佳紀代表:「いつまでもこれが続いたらもう廃業。牛を減らすしかないし、減らすとなると増やすこともかなり大変なので。本当になんとか手を打ってもらわないと、畜産はなくなる。不安な商売。本当に経営していくのは大変だと思う。子どもも小さいので、できれば続けたいが、本当考えさせられる、将来について」
廃業の影がちらつく今の酪農、畜産業界。出口が見えなければ、我々の食卓から肉や牛乳が消える恐れがあります。
(2月17日放送)