「お茶離れ」ではなく「急須離れ」? 新茶シーズン目前 静岡茶の復権かけ若者に魅力発信

春風に揺れる、鮮やかな萌黄色。今年も静岡県内に新茶の季節がやってきました。

もうすぐ八十八夜

銀平・山形農園
山形直樹さん:「ちょっと僕はもう目が慣れてしまったんで、ちょっとあれですけど、やっぱり改めて見るときれいですね。ちょっと悪いと全体的に黄色っぽかったりするんですけど、今年は割とグリーンに傾いているので。いい感じの色になっていると思いますね」

画像: もうすぐ八十八夜

 そう語るのは、明治から続く農園の6代目・山形直樹さん。周りを山に囲まれた宇津ノ谷地区の茶畑で、無農薬にこだわったお茶栽培をしています。茶葉の色も上々ということで、この季節の到来を楽しみにしていたか聞いてみると…

銀平・山形農園
山形直樹さん:「楽しみ4割、不安6割くらいですかね。ご注文いただいているお客さんの気持ちに応えないといけないのでお茶をつくって、いざ発送するときに『このお茶ができてよかったな』って思えたときに、その不安が解消されます」

 ここ最近の雨で、生育は少しだけ遅れているそうですが、八十八夜を迎える頃には、本格的に摘み取りが始まる見込みです。

静岡茶を取り巻く厳しい現実

18日月曜日に行われた、静岡市の新茶初取引。去年は禁止されていた試飲が解禁されるなど活気に包まれた茶市場で、ひときわ注目を集めたのが、JAふじ伊豆の手もみ茶「さえみどり」です。価格は1キロあたり196万8000円と、静岡茶市場での取引史上最も高い価格となりました。

JAふじ伊豆
鈴木正三組合長:「香りは本当に素晴らしいし、色も鮮やか。言うことないんじゃないかな」

画像: 静岡茶を取り巻く厳しい現実

 お茶業界を盛り上げる明るい話題の一方で、静岡のお茶を取り巻く、しぶ?い状況も…。農林水産省が発表するお茶の産出額で2019年、静岡県は鹿児島県に抜かれ初の2位に…、2020年に再びトップに返り咲いたものの、産出額はこの10年で半分以下にまで減っています。

「お茶離れ」ではなく「急須離れ」?

まさに「お茶離れ」とも言えるこの状況に、静岡県立大学でお茶に関する研究などを行う、中村特任教授は…

静岡県立大学
中村順行特任教授:「私自身は『お茶離れ』という印象は、実はあまり強くは持っていないんです。ただ『急須離れ』は確実に進んでいると思うんですね」

画像: 「お茶離れ」ではなく「急須離れ」?

 中村さんは、急須を使ってお茶を入れる人が少なくなった一方、ペットボトルなどのお茶が普及したことで、より手軽に楽しむ形へとお茶の飲み方が変わってきたのではないかと指摘します。では、お茶どころ静岡の茶業界に明るい話はないのでしょうか?

静岡県立大学
中村順行特任教授:「『喉が渇いたときは水を飲めばいい』、『心の渇きを癒すにはお茶がいい』みたいな言葉もあるくらいですので、単純に『お茶を飲め飲め』というよりもですね、むしろ楽しみながらお茶を嗜好品として飲んでいくことも重要かなと思うんですね。『お茶』という1つのキーワードのもとに、販売方法や飲み方も含めて(新しく)提案していければ、全然お茶は捨てたもんじゃないと思いますよね」

お茶の新しい飲み方

静岡市にある居酒屋「バチェラーキッチン」。この店で提供するお茶の新しい飲み方が、ここに並んだ数々のドリンク。これは…?

バチェラーキッチン
望月崇史さん:「こちらはですね、茶葉を使ったお茶割りとなります」

 えっ、お茶割り?お茶割りっていうと、もっと緑茶に近い色をしたイメージですが…。では緑茶とジンのお茶割りを飲んでみると…

北川彩アナウンサー:「緑茶のやさしい甘みの中に、ジンのサッパリ・スッキリした感じが合いますね。シュワシュワっと弾けますね。パンチのあるお酒になっています」

 シュワシュワとは、お茶割りでは聞き慣れない感想ですが、実はこのお茶割りには炭酸水が使われているんです。ここに粉ではなく茶葉を1日つけて旨味を抽出することで、豊かなお茶の香りと炭酸の爽快感が味わえるそうです。

バチェラーキッチン
望月崇史さん:「茶葉自体が高品質なものを使っておりますので、高級感のある高貴な香りというか、家では飲めないお茶割りかなと…」

画像: お茶の新しい飲み方

 このお茶割りは、川根本町に本社を置く「クラフトティー」が考案したもので、いま県内で飲めるのはこのお店だけ。いずれも県内産の緑茶・ほうじ茶・紅茶と、ジン・焼酎・アマレットを掛け合わせた
9種類のほか、同じく県内産の和紅茶を使ったお茶割りを提供しています。
 このお茶割りを出すに至った背景には、望月さんが抱くお茶への思いが…

バチェラーキッチン
望月崇史さん:「私も茶農家の生まれで、元々お茶に関しての愛着があったんですね。茶農家さんが『茶葉が売れない』というのが昨今の悩みでもある。リーフを使ったものを何か提供して、盛り上げていけたら。お茶割り文化を広げていこうと頑張っています。

こちらは「映え」狙いで…

同じく静岡市にあるカフェ「CHA10(チャトウ)」窒素を使うことで、抹茶ならではの泡感が楽しめる看板メニュー「ナイトロ抹茶」を始め、県内産の抹茶を、目と口で楽しめると人気のお店です。その中でも…

CHA10
中野目則子さん:「最高で、(写真を)200枚撮って頂いた方がいて、豆乳のアイスが溶けきってしまって…」

 写真を撮るのに夢中になるあまり、アイスを溶かしてしまったお客さんもいるというメニューが、この「抹茶ジャーケーキ」。抹茶シロップで和えたパウンドケーキに特注のあんこ。豆乳カスタード、抹茶ソース、豆乳アイスと、なんとも見目(みめ)麗しい5重奏です。

北川彩アナウンサー:「かわいらしいですね」

中野目則子さん:「何層かを一緒に召し上がって頂くと、おいしいかと思います」

北川アナ:「すごくおいしいです。お茶の濃厚さ、あんことカスタードの甘さ、いろんな味と食感が楽しめつつ、全てが絶妙なバランスですね」

画像: こちらは「映え」狙いで…

 あんこ以外は自家製というこのケーキ。もちろん主役となる抹茶にも強いこだわりが…

CHA10
中野目則子さん:「川根抹茶を使っています。雄々しいといいますか、抹茶ならではの苦味をしっかりと感じられる、甘さに負けないお茶だと認識しています」

 味だけでなく、そのビジュアルにも力が注がれたCHA10(チャトウ)のメニュー。そこには静岡のお茶を盛り上げるためにしかけられた、中野目さんの狙いが…

CHA10
中野目則子さん:「『お茶離れ』というか特に若い方は、急須を持っていない方も多い中で、どうしたらお茶に親しんでもらえるか、というところで始まったカフェなので、まずはどんな形でも飲んで頂きたい、食べて頂いて『あっ、こんなにおいしいのが静岡のお茶なんだ』ということをわかってもらうために、『映え』狙いをしています」