時給1000円時代が目の前に…街では「1500円でもいいくらい」 事業者は「その額でも人が集まらない」 静岡
10代(大学生):「1000円を超えてくれたらいいなって感じですね!」
時給1000円。静岡県内でもそんな時代が近づいてきています。7日、静岡労働局の審議会が、県内の最低賃金を現行の944円から40円引き上げ、時給984円とする内容を答申しました。過去最大の引き上げ額となります。働く人からは、最低賃金の引き上げを歓迎する声が聞こえてくる一方で、最低賃金が上がることで、中小企業の経営が苦しくなるという一面も。時給アップが、私たちの生活にどんな影響を与えるのでしょうか。
「スタッフが揃わず100%稼働できない」
津村直人社長:「飲食業大変厳しい状況です。飲食店経営者の間で話を聞いても、どこもなかなか人が集まらないとか、コロナの時に一回人を雇いきれずに減らしてしまった分が戻ってこない。お客さんの動きは活発になってきましたので、お客さんは増えたが、スタッフが揃わなくて100%稼働できないという状況がどこにもある」
創業から67年。静岡市の蕎麦店「戸隠そば」。7月には4店目となる草薙店をオープンしました。この新店舗のオープンもあり、「戸隠そば」では、従業員を30人ほど増やしました。現在の従業員数はおよそ130人、しかし、まだ、慢性的な人手不足が続いているといいます。
そんな中、7日入ってきたニュースが、「最低賃金の引き上げ」。「最低賃金」とは、雇い主が働き手に必ず支払う必要がある最低限の賃金。7月28日、厚生労働省の審議会は、今年度の最低賃金を全国平均で時給1002円する目安を取りまとめました。
この目安金額を受け、静岡の審議会でも、県内の最低賃金改正に向けた議論が行われ、7日、県内の最低賃金を現行の944円から40円引き上げ、時給984円とする内容で答申されました。答申通りの決定となれば、引き上げ金額、引き上げ率ともに、時間額表示となった2002年以来最大となります。
街では「1500円くらい」「物価も高いし…」
最低賃金の引き上げについて街の人は…。
静岡・葵区(1日)
10代大学生:「最低賃金が低いより高い方が貯金とかもできるし、いろんなことにお金を使おうと考えるので、多い方がうれしい」
50代会社員:「収入というか、時給というところと、世の中の動きがやっぱりマッチしていないと思う。気分的には最低賃金というのは1200~1300円とか、下手すれば1500円くらいでもいいと思う。」
40代主婦:「物価が今すごい高いので、海外みたいに物価も高いけど、賃金が高いというのであればいいと思うが…」
事業者「最低賃金では人は集まらない」
街の人からは期待の声やさらなる賃上げを希望する声が多く聞かれました。一方で不安を抱えているのは中小規模の事業者。
戸隠そば 津村直人社長:「最低賃金が上がることによって、実際に(パート)募集する賃金も上げざるを得ないとは思っている。元々最低賃金944円(現在の静岡最低賃金)でも、実際その金額だと、慢性的な人手不足というのもあって、なかなか応募がとれない。そんな中で、実際には最低賃金以上の金額で募集をしていたので、今回、最低賃金が更新されれば、やはりそれ以上の金額で募集をかけていかないと、人が集まらないと思っている」
今は、全体的な募集数に対し、働き手の数が少なく、最低賃金が984円に引き上げられたとしても、実際にはその金額では人が集まらない状況。
一方で、原材料費の高騰など、経費は膨らんでいて、賃金を大きく上げられない事情もあり、時給をいくらで設定し、募集をするか、落としどころが難しいといいます。
津村直人社長:「正直難しい状況にはなっています。ただ、この最低賃金の上昇などは、ここ数年の課題ではなくて、この先継続的に行われていくことだと思うので、売り上げをしっかり取り、収益を確保して、それを働いている人に還元して、より良いサービス、より良い商品をお客に提供でき、お客が家族に納得してもらい、再来店してもらうサイクルを生み出していかないと、店舗経営はこれからの時代成り立っていかない」
物価高騰に加え、最低賃金の増額と、なかなか利益を生み出せない状況の中、経営者にとっては悩みの種は尽きません。
静岡労働局「関係機関連携して賃上げの環境整備に取り組む」
こういった状況に静岡労働局は…。
笹正光 静岡労働局長:「関係機関とも連携をして、積極的に(対策に)取り組んでいきたいと思っているが、県内では今年の6月7日に、県庁の中でパートナーシップの構築宣言というものが、関係機関の中で調印されまして、経済、労働団体、それから静岡県、関係省庁など関係機関が連携をして適正な取引、それから賃上げなどの環境整備に取り組んでいる」
今後も引き上げが予想される最低賃金。中小企業は賃金引上げに対応できる環境を整えることが、これまで以上に重要となりそうです。
(8月9日放送)