新茶初取引…最高値は両河内産「高嶺の香」1キロ120万円 両河内の茶栽培の秘訣と初取引の舞台裏に迫る 静岡市 /「ニュースの現場」
茶商「ちょっと身震いするようなところはありました」
生産者「ホントにうれしいニュースだと思っています」
生産者「すごく自信をもって世に出せると思います」
茶商「きれいですし、味も素晴らしいし、申し分ないと思います」
今週の「ニュースの現場」は、1キロ120万円で取引された「お茶」を、収穫から、加工、そして初取引、最後は私の口に入るまで、完全追跡しました!
最高値で落札「和田長治商店」社長「誰が見ても特別なお茶」
新茶シーズンの到来を告げる、静岡茶市場の初取引。長年、「最高値」で「機械もみ」のお茶を落札しているのが、和田長治商店です。会社のホームページを見ると「40年以上、最高値で落札している」と書かれています。
和田長治商店 和田夏樹社長:「僕は両河内のお茶に魅了されている。もっと多くの人に、このお茶の良さを知ってもらいたい。静岡茶らしいお茶というのがあるので、このお茶を仕入れ続けています。茶市場に出るお茶は、たくさんのお茶がシーズンごとに出るんですけど、誰が見ても特別なお茶で、だから最高値が続いていたのかなと思います」
収穫
12日、最高値のお茶を栽培している、静岡市清水区の山あいを訪ねました。
伊地健治アナウンサー:「まもなく午前8時30分になろうというところです。人や車が続々と集まってきました。あちら、ハウスの中にある最高級茶を、手摘みするために両河内じゅうの茶農家の方々が集まって来ているんです」
生産者
Q:最高級茶を手摘みする気分は?
A.「最高です」
A.「光栄ですしね、誇りですよね、やっぱりね」
Q:両河内の?
A.「そうですね」
両河内茶業会には、茶農家33軒が入っていて、新茶初取引の前日に、およそ40キロの新芽を摘み取ります。商品名は「高嶺の香(はな)」
伊地アナ
「両河内の最高級茶は、このようにハウスの中で育てられています。通常はこのように露地栽培で、かまぼこ型に仕立てられていますけれども、最高級茶はハウスの中で、このように形を整えられていません。「自然仕立て」というそうです。その先に出た新芽を、皆さんひとつひとつ手で摘み取っているんですね。さらに摘み取りの1週間ほと前から、この寒冷紗と呼ばれる黒い物でハウスを覆って日光を遮ります。そのことで葉の色を良くしたり、さらに旨みを乗せたりするそうなんです」
生産者
Q:今年の出来は?
A.「今年の出来は、去年より、去年もよかったですけど、今年のほうがまだ
芽数が多いですよね」
Q:芽の数が多い?
A.「芽数も多いし、よく育ってくれて、積みやすいです。いいものできると思います」
生産者
Q:両河内のお茶にはどんな思いがありますか?
A.「若い方にもお茶を好きになって、頑張って飲んでいただきたいです」
両河内茶業会 望月秀樹会長
Q:最高級茶を摘み取る日の気分は?
A.「これ茶業会全体でやっていることなので、先輩方がもう40数年前からやっている取り組みなので、僕らが継続させていかなければならない。そういった思いで、毎年、ホントに神経をとがらせながら、きょうを迎えるという感じです」
工場で荒茶に「茎の中に一番の旨みが…」
およそ50人で「手摘み」をした結果、2時間で40キロを収穫。JAしみずの工場で、荒茶にする作業を行います。
伊地アナ
「先ほど摘み取られたばかりの新芽が、この製茶工場でまずは蒸し器にかけられています。かけられた茶葉はあっという間にしんなりとしてでてきます。そして、この工程が始まった途端に、工場の中は若葉の香り、上質なだしをとっているような、なんとも言えないいい香りが漂っています」
蒸した「お茶の葉」を、今度は1時間かけて乾燥。その後、機械で揉んで、葉と茎の水分量を同じにします。
JAしみず柑橘茶振興課 望月保秀さん
「茎の中には一番旨みが入っているので、それをここでしっかり出してあげて、できたときに飲んでもおいしいお茶にしてあげるのに、ひと手間ここで大事なところになります」
Q:葉っぱより茎に旨みが多いですか?
A.「そうですね、茎に旨みが入っていますのでね」
荒茶をつくる作業は、夜まで続きました。
初取引
そして迎えた、初取引の当日。和田社長も、両河内の生産者も、緊張の面持ち。ついに入札を行います。
和田夏樹社長
「ちょっと値段つけさせてもらいます。いい値段つけちゃうけど、使ってください」
難波新市長も、気になるご様子の「高嶺の香」、その価格が決まりました。
「パンパンパン」「パンパンパン」
取引価格は1キロ120万円に決定。「機械もみ」と「手もみ」を合わせた、この日の最高値となりました。両河内の関係者も、ほっとした表情をしていました。
和田社長「身震いした」
両河内茶業会 望月秀樹会長:「取引が無事終わったということで、一安心ということと、44年間、買い手の和田長治商店さんとのお付き合いの中で、お互いの信頼関係を築き上げてきて、僕ら生産者も最高のモノを作ろうということで、今年も最高のものができたと、自信をもって出しているんで、これがこういう形で評価されたことは、本当に両河内茶業会にとっても、本当にうれしいニュースだと思う」
和田長治商店 和田夏樹社長
Q:この市場で最高値にしたいという思いはあった?
A.「ありました。今まで40年以上見守ってきてくださっているほかの方々の思いも背負っているつもりでいるので、そう思うと身震いするようなところはありました」
無事に最高値となった「高嶺の香」。和田社長にも笑顔が戻りました。取引成立から2時間後、落札した120万円相当の「お茶」が到着です。
さて、お味は…
お茶を届けた人「お茶の納品です」
和田社長:「ありがとうございます。大事なお茶なので、ありがたく頂戴します。すぐに仕上げしたいと思います」
届いたお茶は、すぐに工場にいる職人さんのもとへ。わずか1キロのお茶ですが、ふるいにかけて、形をそろえます。その後、香りを芯から引き出すための「火入れ」を行い、完成です。
試飲した従業員
「すごいですね、やっぱり生産者の人たちの努力の賜物ですよね。きれいですし、味もすごいですし、申し分ないと思います」
私も、特別に「高嶺の香」を飲ませていただきました。
伊地アナ
「うーん、ホントに薄い緑ですね。心していただきます」
「おいしいですね、何とも濃厚な、おだしの感じもしますし、ちょっとお茶だなという片りんはあるんですけど、お茶とは違う飲み物のような感じもします。おいしいし、満足感があります」
40年以上続く、最高値の裏側には、お茶に携わる人々の情熱と心意気がありました。
(4月15日 とびっきり しずおか! 土曜版)