「夜盲症」解明に“一筋の光”…カギになるのはジンベイザメ 静岡・三島市 国立遺伝学研究所

 視野が狭くなってしまったり、視力が低下したりと、私たちは様々な「目の病気」のリスクを抱えています。中には治療が難しいものもある中、静岡県内で行われている研究が今、世界的に注目を集めているんです。

画像: 「夜盲症」解明に“一筋の光”…カギになるのはジンベイザメ 静岡・三島市 国立遺伝学研究所

国立遺伝学研究所 工樂樹洋教授:「それ(人の目の病気)がどういうふうに起きているのか、仕組みを調べること。そういう仕組みをより理解するということにはつながるのではないかと思っています」

 三島市にある国立遺伝学研究所の工樂樹洋(くらく・しげひろ)教授。“ある魚”のDNA情報を研究しています。この研究が、暗い場所でモノが見えにくくなってしまう「夜盲症」という病気の解決につながるかもしれないんです。

水面近くから深海2000mまで潜るジンベイザメ

その“魚”というのが…。

画像1: 水面近くから深海2000mまで潜るジンベイザメ

国立遺伝学研究所 工樂樹洋教授:「実はジンベイザメの視覚がちょっと特殊だと。それはつまり、深海にまで届きうる、人の目で見ると青い光に見えるその光を受け取ることに、ちょっとチューニングがされてると」

 ジンベイザメはプランクトンなどを食べるため、普段は水面近くを泳いでいますが、実は深海2000mほどまで潜ることができます。光がほとんど入らない深海ですが、ジンベイザメはそこに差し込むかすかな光を受け取る特殊なDNA情報を持っていることが、工樂教授の研究でわかりました。この研究論文はアメリカの科学雑誌に掲載されています。

画像2: 水面近くから深海2000mまで潜るジンベイザメ

ジンベイザメの研究が仕組みを解明につながるか

 先天性の夜盲症は今も、治療が確立されていません。ただ、このジンベイザメの研究が「人間が抱える病気」の仕組みを解明する“一筋の光”になろうとしているんです。

国立遺伝学研究所 工樂樹洋教授:「人の場合は、結局DNAの突然変異による疾患というか、症状ですので、それを完全に直してしまうことは無理なんですが、それがどういうふうに起きているのか、仕組みを調べること。仕組みをより理解することにはつながるのではないかと思っています」

 工樂教授は今後もジンベイザメの研究を進めていくつもりです。

国立遺伝学研究所 工樂樹洋教授:「少ない光を効率的に使うための目の仕組みは、それぞれの種で、海の深いところに潜るほかの種だと、イルカだったり、クジラだったり、あとウミガメですね。ジンベイザメは今、特に今回は光の利用という、あるいは深海での暮らしという、そこに注目した研究でしたけれども、(個体が)どうやって増えてるかっていうのをDNAでも調べてみたいなというふうに思います」

 ジンベイザメの「遺伝子情報」によってひらけた“可能性”。今後も活発な研究が期待されます。