「お腹いっぱい食べてね…」 300円の『絆カレー』がつなぐ地域と施設、大人と子ども… 静岡・富士市

じっくり煮込んだ1杯のカレー。実はこれが地域の絆を結んでいるんです。

子どもたち大絶賛のカレー

画像1: 子どもたち大絶賛のカレー

静岡県富士市にあるこちらのお店。人気メニューは、7種類ある焼きたてのメロンパンです。そしてもう一つの名物メニューが…このカレー。1杯300円とお手頃価格。でも驚くのは値段だけではありません。

 夕方、お店にやってきたのは、お腹を空かせた近所の子どもたち。

職員:「いらっしゃいませ」

子どもたち:「カレーひとつください」

職員:「はい。ありがとうございます」

 注文し終えると、話は学校に…。

子どもたち:「(きょうは授業)6時間…」

職員:「そう!疲れたでしょ」

子どもたち:「はい」

 待ちに待ったカレーが運ばれてきました。

子どもたち:「おいしい、おいしい。とろとろで味がちょうどよくていい」

「ヤバイ。全部食べ終わるかもしれない」

「うーん、家と違います」

Q:どう違う?

「味が違う。こっちの方がおいしい気がする」

画像2: 子どもたち大絶賛のカレー

おいしそうに食べているカレー、実は無料なんです。

絆カレー 管理者
須田智美さん:「中学生以下の子どもがチケットを使って、カレーを1杯無料で召し上がっていただけるシステムになっている」

 一体どういうことなんでしょう…?

カレーの味付けにはこだわりが…

このお店を運営しているのは、障害者の就労を支援する事業所「アクティブ」。障害者22人が働いています。大人気のメロンパンもみんなで手作り。
 そして、あのカレーも。1杯300円のカレーですが、カルダモンやコリアンダーなど4種類のスパイスを調合してルーを作っています。幅広い年齢層に食べてもらうため、味付けにはこだわりが。

絆カレー スタッフ
佐々木勘太さん:「本格的なカレーはちょっと辛かったり、大人が食べておいしいところがあると思うが、どうしてもチケットを利用してもらいたいので、そういう辛みは極力控えて。子どもが食べておいしい、大人も食べておいしいと両立できるようにみんなで考えながら作り上げた」

Q:今どんな作業を?

就労支援施設利用者:「ルーの材料をはかっています」

 施設では、誰でも同じように作業ができるように、壁に作業工程を貼りだすなど工夫しています。

Q:どんなところが楽しい?

就労支援施設利用者:「料理を作っているところ。いろんな工程があるけど、いろんなことができて楽しい」

Q:カレーの売りは?

就労支援施設利用者:「愛情ですかね」

Q:どれくらい入っている?

就労支援施設利用者:「たくさん入っています」

『絆カレー』…その名に込められたふたつの意味

丁寧に手作りしたカレーに付けられた名前は、『絆カレー』。この名前には、ある思いが込められていました。

画像1: 『絆カレー』…その名に込められたふたつの意味

絆カレー 管理者
須田智美さん:「チケットを買ってくれる大人と、食べる子どものつながりの『絆』。ここの事業所の利用者と、地域とのつながりの意味での『絆』」
 
 チケットというのは、この『絆チケット』。1杯300円のカレーとは別に、この「絆チケット」が、1枚200円で販売されています。食べ盛りの子どもたちにお腹いっぱい食べてほしい、という大人の客がチケットを購入。
 チケットはホワイトボードに貼られ、中学生以下の子どもたちは、そのチケットを使ってカレーを1杯無料で食べることができるのです。

 カレーの販売を始めてから7カ月。

須田さん:「ここまで反響があるとは思わなかった。本当に2000円分とか、今までは1万円分という人もいて、想像以上に買ってもらって、善意の温かい気持ちでいっぱい」

 これまでに、600枚近くのチケットが購入されました。チケットを買った大人たちからは、カレーを食べる見知らぬ子どもたちに宛てたメッセージも。

チケット購入者のメッセージ:「おいしいカレー食べてくれてありがとう」

「モリモリ食べて元気に成長してね。みんなの笑顔で世界を笑顔に。おじさん・おばさんはいつも近くで見守ってます」

画像2: 『絆カレー』…その名に込められたふたつの意味

そして、カレーを食べた子どもたちからは、店に置かれたノートに感謝の気持ちが。

子どもたちからのメッセージ:「おいしいカレーをありがとう。また来ます」

「ありがとう~」

「おいしいカレー思い出になりました。これからもがんばってください」

大人と子ども、施設と地域を結ぶ『絆』に

施設で作られたカレーが、地域の大人と子どもを結びます。そして、多くの人が店に訪れることが、施設の存続や活性化にもつながります。

画像: 大人と子ども、施設と地域を結ぶ『絆』に

絆カレー 管理者
須田智美さん:「本当に、1個数円の軽作業だととても追いつかないというか、対応できない状態になっているので、こういった感じで自主製品というか、事業所の製品をつくって販売するというのは必要になってきたこと。
 あとはプラス、どうしても事業所って閉鎖的なイメージだったと思うが、もっとオープンに地域とのかかわりを持つきっかけになればいいなとも思っている」

 人と接することは、施設利用者にとってコミュニケーションをとる訓練にもなるといいます。

須田さん:「まだまだ購入してもらったチケットがたくさん使ってもらえるという状況ではないので、もっともっと絆カレーの仕組みを盛り上げていきたいという気持ちと、どんどん外に売り出して、利用者と地域との交流をもっともっと深められるようにしたい」