若手マジシャン突然の感染…「まさか私が」 公表後の中傷 浜松市
根方ゆき乃記者:「サルにフクロウなど…国内外の動物がずらっと集まっています。そのすぐ横のステージで、マジックショーが行われていて、不思議な技が繰り出されています」
「本日は相方『ニシオ』と私『オリバー』、2人合わせて『ニシオリバー』によるマジックショータイムを始めさせていただきます。よろしくお願いします!」
華麗な技で人々を魅了するのは、浜松市在住のマジシャンユニット、『ニシオリバー』です。
ハンカチが棒になったり、手袋がハトになったり、華麗な技を披露します。
今年初めてのステージ…「緊張しました」
緊急事態宣言によって、出演予定だったイベントは全て中止に。ステージに立つのは今年初めてです。
Q.緊張しましたか
ニシオリバー:「緊張しました。この汗見てくださいよ、こうした大きな会場で披露することができて、ありがたかったし、早くコロナが収まってほしい」
こうして2人が笑顔でステージに立つ、その裏側には、大きな悩みや葛藤を乗り越えた過去があります。
店長務める店がクラスターに
根方記者:「オリバーさんが店長を務める『手品家浜松店』。去年16人の感染者を出し、クラスターとなりました。今は席を3分の1に減らし、消毒を徹底するなど万全を期して営業しています」
浜松市の街中にある手品家浜松店。去年7月、客や従業員ら16人が感染し、クラスターとなりました。
オリバーさん:「私がまず、手品家のスタッフの中で症状、微熱が出て、次の日、結果出た時に『陽性』と電話で受け取って。その時は驚きの方が強くて。いつどこで? というのもあったし、絶望に近い言葉が出た。まだ陽性者も少なかったので。まさか私がと」
SNSで公表 投稿するときには手が震えた
当時この店で働いていたニシオさんを含む従業員3人も感染しました。その事実をSNSで公表しましたが、悩みに悩んだ末の決断でした。
オリバーさん:「公表は本当は迷った。SNSやツイッターで、それを発信したが、投稿するときに手も震えたし、これを投稿したら全部終わってしまうのではないかと思ったし…」
その後2人を苦しめたのが、誹謗中傷や差別的な扱いです。
オリバーさん:「客や家族など手品家に来てくれていた方が、他で手品家に行っていたなら、うちに来ないでと言われたり、言葉をあとから聞いて本当に胸が痛かった」
ニシオさん:「僕は無症状だったが、精神的に社会の目とか気になった。僕らもともと髪がオレンジ色と青だったが、全く知らない人から指をさされた」
Q.どういうこと?
ニシオさん:「手品家のメンバーは髪が派手だったが、あの人たちはマジシャンだと何となく知っている方がいて。なので今、黒髪なんですけど…」
オリバーさん:「とりあえず、コロナが落ち着くまでは黒髪にしようと」
コロナが完治してからも、心は不安定な状態が続きました。
オリバーさん:「ショッピングモールやスーパーに買い出しに行くときも、こそこそ人目を気にしながら歩いていた」
ニシオさん:「なるべく遠いスーパーに行っていた」
Q.しばらく続いた?
オリバーさん:「3、4ヵ月は続いた」
2人の支えはお客さんからの応援メッセージ
そんな2人を支えたのは、客から届く応援のメッセージや励ましの言葉でした。
オリバーさん:「メンタルしんどかったが、知らない客から手紙やメッセージなど励ましの言葉をたくさんいただいたので、また本当に頑張っていかなきゃと思って」
しかし、これまで多い日には120人以上だった来店客は激減。一人も来ない日もあり、厳しいのが現実です。
家庭で出張マジックショー
そこで2人が始めた新たな取り組みが…。
Q.きょうは何しに
「ご家庭で出張マジックショーを披露しに来た」
消毒をして…
「こんばんは。本日はよろしくお願いします」
Q.何している
「感染対策の一環だが、自宅に上がる前に靴下も履き替えて、利用者にも安心してもらう」
イメージカラーであるオレンジの靴下に履き替え、準備はばっちりです。
オリバー:「まずオープニングをかざるのは、オレンジマジシャン、ニシオ。出てきたら大きな拍手をお送りください」
ニシオさん:「よろしくお願いします」
去年11月から始めた出張マジックショーには、すでに20件の依頼がありました。
「出前感覚でマジックを気軽に楽しんでほしい」という願いが込められています。
手袋からハト!
新聞でサプライズ!
家がまるで劇場のような特別な空間にー。30分間にわたるショーを披露しました。
女の子:「タネを見破ろうとしているが、分からなくて、すごいなと思った」
男の子:「ユーチューブとかで見ていたので、本物のマジシャンに目の前でやってもらうというのが、すごくて手品もすごくてうれしかった」
Q.と言っているが…
ニシオさん:「ありがとうございます! マジシャン冥利に尽きます」
ニシオさん:「まずは1日でもコロナが早く終わって収束して、マスクのない、笑顔が見えて、その上でパフォーマンスができる日が早く来てほしい」
オリバーさん:「気軽にお寿司やピザを出前する感覚で、マジックも出前していただけたら。誕生日会や家でご飯を食べるときに、ちょっと面白いことないかなくらいの感覚で、依頼していただけたら」
応援や励ましをくれた人々に今度は恩返しを。笑顔を届けるため、2人の新たな挑戦が始まりました。
オリバーさん:「応援しているという言葉をたくさんいただき、今後、お店でも他のイベントでもマジシャンがパフォーマンスができる
ような環境を作り、静岡にもっと楽しめることを提供していけたら」
Q.かっこいいですね、マジシャンって
「ありがとうございます!」