「ピンチは明日への推進力。笑いと一緒に受け流そう」 ベストセラー絵本「大ピンチずかん」作者・鈴木のりたけさんに聞く
静岡市清水区の清水文化会館マリナートで、「鈴木のりたけ 大原画展」が5月10日まで開催されている。『大ピンチずかん』や『しごとば』シリーズなど、日常の何気ない出来事を鋭い観察眼とユーモアで描き出す人気絵本作家・鈴木のりたけさんに創作にかける思いなどを聞いた。
犠牲たっぷりの展示
――のりたけさんの作品が一堂に会する原画展が静岡からいよいよ全国巡回がスタートしますがどうですか?
ドキドキですね~!
全部自分で描いてきたものですが一堂に会する、これだけまとめて自分でも目にすることはないので、新鮮な気持ちです。いろいろ込み上げるものがあって、上ずる気持ちになっています。
――300点以上並んでいますが、アトリエにあるものを持ってきたんですか?
アトリエで絵を描いている途中なのに、パレットを勝手に持っていかれたりとか(笑)
結構業務に支障をきたしていたりもするんですけど…それを乗り越えて展示していますから。
――本当に魅力たっぷりの展示なんですね。
そうなんです。犠牲もたっぷりで(笑)
――のりたけさんらしい、遊び心満載の展示という感じがしますね。本当にアトリエに遊びに来たような形になっています。メインビジュアルは、絵本に登場する作品のキャラクターたちが大集合していますね。
大原画展で色々な原画が集まるということで集合させました。
――特にこだわりのポイントはどこですか?
立体感があると思いますよね。奥と、手前と。この小さいスペースの中で全てを入れ込むためには、向こう側にいて、こっち側にいてと言うように、横の広がりだけではなくて、奥の広がりというか、そういうのは結構苦労してレイアウトしました。
――メインビジュアルの中には、川の上の方で雨が降って、川が流れるデザインもありますね。
いいところに目をつけましたね!「かわ」という作品があるんですね。
魚を描いただけではなくて、ちゃんと水の流れの循環を学んでほしいと思って書いた絵本なのでその思いが表れていますね。
――のりたけさんは色々な趣味をお持ちですよね?魚が好きだったり、漫画をやられていたり、全ての経験が絵本作りに繋がっているのですか?
結構飽きっぽく色々なことに手を出す人間ではあるんですけど、それがモノになるというよりは、そうやってトライしたのも自分の人生の一部なので、積極的に認めてあげて、隠そうとしないでちゃんと利用しようと思っています。
財政面が不安⁉
――そしてこちらには「大ピンチ博物館」という門があります。2025年のベストセラー第1位にもなった話題作「大ピンチずかん3」をはじめとした、大ピンチシリーズの原画をピンチレベル順に展示したコーナーですよね。
この門にお金をかけて良かったのだろうかという不安もありますけどね。
本当に立派な門が建っていていいですね。
裸で座ってシャワーヘッド
――日常に潜む大ピンチが並んでいるが、この作品を選ぼうと思ったきっかけはなんですか?
一番初めに「大ピンチずかん」が出たのが2022年かな、そのもうちょっと前に着想したんですけど。ちょうどその頃、長男と次男が小1と小3ぐらいのときで、例えば「うわばき」のことを「うばわき」と言ったり、ちょっとした言い間違いとか、かわいらしい失敗が日々起こるような年頃だったんです。そういうのが携帯に残っていて、いつかこういう細かいネタを集めて絵本を作れないかなと考えていたんですよ。それがこうやって結実したものですね。
――作品の中でご自身の子ども時代の経験が反映されていますか?
絵本を書くときって、自分の子どもの時を思い出すというよりかは、今何が面白いかということを子どもたちにも分かるような形でどう絵にしたらいいかということを考えています。
――のりたけさんのお気に入りの大ピンチは何ですか?
「お風呂入っているときにシャワーヘッドが見つからない」というピンチですね。シャワーヘッドをちゃんと掛けて置いてあるといいけど、床に置いてしまうと水圧で後ろの方に行っちゃったりして「アッ…」ってなったり。なんかかっこ悪いじゃないですか、めちゃくちゃ。裸で座ってシャワーヘッド探すのなんて。
――読者も共感するあるあるですね。
「これ私もすごくやだな」と自分に引き寄せて考えられる本になっている。それがヒットした一番の要因だと思っています。
――ピンチに対しての対処法も書いてあって、ピンチにあったときのヒントになっている気がします。
それぞれの具体的な対処法というよりは、心構えというかね、捉え方というか。自分でどう対処するかということの心の問題が結構大きいかなと思っています。ピンチになるときには思考停止に陥っちゃう人が多いと思いますが、そうではなくて、ピンチというのは日常生活で起こるものだから、それを正面から受け止めて、笑いと一緒に受け流していこうよという、明日への推進力みたいなものを提案して、そういう姿勢というか、考え方の助けになればいいなというのがあります。
鈴木 のりたけ(すずき・のりたけ)さん
1975年、静岡県浜松市生まれ。絵本作家。
大学卒業後、JR東海に入社。その後、デザイン会社でグラフィックデザイナーを経て独立。
「大ピンチずかん」で第15回MOE絵本屋さん大賞2022を受賞するなど数々のヒット作を生み出す。主な作品に『しごとば』シリーズ、『とんでもない』『なんでもない』など多数。
鈴木のりたけ大原画展
2026年5月10日まで、静岡市清水区・清水文化会館マリナートで開催中。