147年続く老舗醤油屋 伝統を守り続ける「明治屋醤油」6代目の挑戦 浜松市

多くの家庭にあり日本の食卓に欠かせない調味料、しょうゆ。新たな魅力を探る老舗店の6代目がいます。その挑戦を取材しました。

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147年続く老舗醤油屋 伝統を守り続ける6代目の挑戦 浜松市

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歴史を感じる建物から立ち上る蒸気。浜松市浜北区にある「明治屋醤油」。今年147年目を迎える醤油の醸造所です。

明治屋醤油 6代目 
野末将平さん:「ここが醤油を発酵、熟成させる部屋になります。(貯蔵庫入って)これが麹と塩水がまざったもろみというやつですね」

醤油屋になるのは嫌だった…

丁寧に説明するのは、6代目の野末将平さん。東京農業大学で醸造学を学んだ後、一般企業を経て地元に戻って来ました。しかし、家業を継ぐまでには葛藤もあったそうです。

明治屋醤油 6代目 
野末将平さん:「僕は醤油屋になるのが正直嫌でしたね。中学校が近くにあるんですけど風の向きで匂いが来たり。そうするとお前んちくせえなあってとかって。醤油屋をやるつもりで(大学に)入学したんですけど(継がなくて)僕がつぶしたと思われるのも嫌なので、僕がいない間に醤油屋辞めといてください、と親に言って東京に行きました」

しかし、その考えは、同年代の若手経営者たちと出会って一変。

明治屋醤油 6代目 
野末将平さん:「しゃべっている時にパワーをもらうというか、俺やっているけどこんなことも知らねえんだとか、まだまだ甘いなとか。その人達と触れ合うこと活動することによって(継ぐ気が)出てきたかなと。もっと頑張ろうという思いが出てきたと思います」

6代目として働く決心をしました。

画像: 醤油屋になるのは嫌だった…

醤油作りは難しいけど楽しい

醤油は、主に大豆・小麦・塩を原料としていて、冬から春先にかけては、そのもととなる「麹」を仕込む時期です。

明治屋醤油 6代目 
野末将平さん:「原料の配分を変えたり水の量を変えると出来上がる醤油が全然変わるんでね。あとは香りをよくしようとするとか、そういうところが楽しい。難しいですけど楽しいかなとは思います」

年末年始は、おせち料理や年越しそばなどで醤油の需要が高く、この日も大忙し。熟成が終わったもろみを布に包み、じっくり絞ったものを手作業で火入れするなど出荷作業に追われていました。

画像: 醤油作りは難しいけど楽しい

熟成期間を倍にした「蔵出し」

できあがった醤油は、飲食店や魚屋などへ卸しているほか、店頭でも13種類を取り揃えています。その中で特にイチオシというのがこの「蔵出し」。

鈴木誠記者 食リポ:「醤油の色は濃いんですが味はまろやかで、やわらかい口当たりです」

もろみの熟成期間を通常の1年半ほどから3年にすることで味に深みを出しているといいます。原料の大豆と小麦も、農業経験がある弟の大造さんと協力し化学肥料や農薬を使わずに栽培。その代わり、3頭のヤギが、草取りや肥料の提供に活躍しています。

店を訪れる人は…。

買い物客:「味も美味しいんですけど、すごく素材にこだわって作っていらっしゃるというところが一番惹かれて買うようになりました」

画像: 熟成期間を倍にした「蔵出し」

課題は「事業継承」…子供たちに少しでも興味を持ってほしい

ただ、老舗ならではの課題もありました。

明治屋醤油 6代目 
野末将平さん:「高齢化とかで廃業する人も多い中で、僕らも新たな人を獲得しなければいけないなという思いもありましたね」

そこで将平さんは、工場見学も積極的に受け入れ、小学校で出前授業なども行っています。

醤油絞り体験:「この白い布を1枚大きく広げてもらってひし形においてください。そうです」

また、店では醤油を絞る体験もでき、火入れ前の生の醤油を味わってもらう取り組みも行っています。

多くの家庭にあり、もっとも身近な調味料のひとつ、醤油。一方で地域ごとに色や味、香りに違いがあり、「奥深い」と話す将平さん。伝統を絶やさないため、ひそかな目標もあるといいます。

明治屋醤油 6代目 
野末将平さん:「僕も子どもが2人いまして。子どもが大きくなった時に醤油屋っていう選択肢に入ってもらえる、醤油屋もいいかなっていうようになるのが目標でもありますね。どうすれば入ってもらえるのかなというのが宿題でもあって、やって行かなければいけないことかなって思います」

画像: 課題は「事業継承」…子供たちに少しでも興味を持ってほしい