「避難指示」一本化でどう変わる? 改正災害対策基本法が20日から施行
大雨などの時に自治体から出される避難情報の基準などを定めた改正災害対策基本法が、20日から施行されます。「避難勧告」が無くなり「避難指示」に一本化されます。
2019年の 台風19号
2019年、静岡県内にも甚大な被害をもたらした台風19号。静岡市駿河区西島では床上浸水が8戸、床下浸水が67戸の被害が出ました。
中野結香アナウンサー:「通常ですと中田雨水幹線から浜川へ水が流れていくんですが、おととしの台風19号では大雨になり、川の水の流れが悪くなって、およそ100mに渡ってこちらの擁壁が崩壊したということです」
中島学区自主防災会
矢部眞一会長:「このグレーチングが外れてしまっていたために、そこに足をとられてしまって流れに巻き込まれる寸前の方も見うけました」
この時この地区に出ていたのは避難準備情報。避難勧告が出たのは、すでに浸水が始まり避難が困難になっていた午後1時ごろでした。自治体からの情報発信を的確な避難行動につなげることはできませんでした。
西島町内会
亀山茂会長:「自分の家の前に水が来て、これは危ないねって19号の時は逃げたのが実態なんですね。まだ水を見なければ大丈夫だって思っていたかと思います」
改正災害対策基本法とは
あすから改正される災害対策基本法では、住民により的確で迅速な避難を促すため5段階の大雨警戒レベルの基準を変更します。最も大きな変更点はレベル4。これまでレベル4は避難に必要な時間を考慮し、前もって出す「避難勧告」と状況がより切迫した際に避難を促す「避難指示」の2つがありましたが、違いが分かりにくいとして「避難指示」に一本化されます。この段階で危険な場所にいる人は、全員避難が必要です。
レベル3の「避難準備の情報」は「高齢者等避難」に変わり、対象がより明確になりました。
レベル5は「災害発生情報」から「緊急安全確保」へ名称が変わり、災害が発生または切迫している状況に発表されます。
今回の変更の狙いについて、国の検討会のメンバーを務めた静岡大学の牛山素行教授はこう話します。
静岡大学 牛山教授:「(警戒レベル)3、4、5は基本的な意味は変わらない。言葉を明確化したり、位置づけを明示したり、そういうようなことしたのが今回の改定。何らかの避難行動をとるのは警戒レベル4避難指示の段階まで」
法改正に住民や行政は…
おととしの台風19号の時に、静岡市の西島地区で住民に避難を促していた亀山さんは今回の変更をこう受け止めています。
西島町内会
亀山茂会長:「(今回の変更は)指示ですから、勧告じゃありませんから、すぐ行かなきゃいけないねってその判断材料の一つにはなる」
避難情報を出す自治体も、避難のタイミングがより明確になることに期待しています。
静岡市 危機管理総室
杉村晃一係長:「避難勧告と避難指示の違いが分かりにくいというご意見はよく頂きますので、市民の方にとって情報が一本化されるということで分かりやすくなることはあるかと思います」
「避難指示」の情報慣れを懸念
しかし「避難指示」の情報に慣れてしまう懸念もあります。これは静岡市の避難行動についてのアンケート調査です。避難勧告が出された際「すぐに避難する」と答えた割合が2016年と2018年を比べると半減しているのです。
静岡市 危機管理総室
杉村係長:「毎年のように避難勧告は発表されるけれど、災害が起きないのですぐに避難しなくてもいいかなという方がもしいらっしゃったら、今回避難指示に変わって避難勧告は避難指示と同じタイミングで発表されますので、避難指示が出たら必ず避難行動を終えて頂きたい」
静岡大学 牛山教授:「避難指示だけではなくて、レベル3というのも活用していただきたい。レベル3というのは早めの行動を起こすタイミングといってもいい。土砂災害の犠牲者の8割~9割がハザードマップによって示された土砂災害の危険箇所になっていますし、私たちの暮らしているところでどのような災害が起こりうるか理解しておくことがスタートライン」