台風での停電が命取りに…災害時の在宅患者をどう守るのか 浜松市
浜松市に住む青野豊(あおの・ゆたか)さん(68)。19年前にALS(エーエルエス)=筋委縮性側索硬化症という難病を発症し、体を思うように動かせなくなりました。声を発することもできません。
セントケア富塚 介護福祉士 永海美幸さん:「1、2の3。背中拭きますね」
普段は、女性ヘルパーが一人でサポートします。日常生活は、電気で動くベットや移動に使うリフトが欠かせません。
セントケア富塚 介護福祉士 永海美幸さん:「高さを腰の位置とか上げれば女性でも、豊さん大きいんですけど、力を使わずにできる/こういった福祉道具を使うことで、私たちも助けられてご本人も助かってると思う。ですかね?豊さんもそう思います」
2年前の台風 大規模な停電でベットもリフトも使えず
しかし2年前、青野さんの命を脅かす事態が・・・
静岡を襲った台風24号。県内では過去最大となる71万5000戸が停電。被害の大きかった県西部では、復旧まで6日かかった地域もありました。
青野さんはケアマネージャーの太田(おおた)さんの判断で週末だけ利用していた福祉施設に急遽受け入れてもらい、危機を乗り切ることができました。
記者:「自宅で電気のない生活は?できないですね」
ケアプランセンター光 主任介護支援専門員 太田世津子さん:「青野さんここから移動することができないので、早めに避難しないといけないが(普通の)避難所に行けるかといったら、無理なので」
障害者が通う生活介護施設での災害時の対応は?
在宅生活を送る障害者が通う生活介護施設。ここも、2年前に自宅での生活が困難になった利用者を受け入れました。
ふれんず施設長 川合由美さん:「こちらの施設は幸いにも停電になってなかったので通常の開所ができた」
33人の利用者のうち、14人が日常的に人工呼吸器などいわゆる「医療的ケア」を必要としています。再び同じような状況になった場合電源の確保が欠かせません。
ふれんず 施設長 川合由美さん:「あちらにある青いのが発電機。車からも電源が取れるようにインバーターを準備」
さらに利用者ごとに3日分の食料や医療器具などを用意しています。しかし、災害が長期化すれば、いつまで受け入れることができるのか不安は尽きません。
ふれんず施設長 川合由美さん:「ほんとに大規模の災害が起きたときには病院が対応できるわけではないので少しでも受け入れるところができたらいいと思う。」
行政の対応は?
行政も、この課題に取り組んでいます。
浜松市 障害保険福祉課 橋本啓司 副主幹:「医療的ケアの必要な方において全数の調査、それからその方々がどういう症状か、同意書を提出していもらっている」
医療的ケアの必要な人がどこに何人いるかを調査し、速やかに安否確認ができる体制づくりに取り組んでいます。
しかし具体的なことは決まっていません。
浜松市 障害保険福祉課 橋本啓司 副主幹:「一人ひとり医療的ケアの内容が異なる。一人一人の支援を考えるにあたっては時間がかかるというところは把握している」
いざという時のために普段からの連携が大切
災害時に在宅で生活する患者や障害者を直接的に支援する制度はありません。台風被害を通じ、太田さんは備えの大切さを改めて感じています。
ケアプランセンター光 主任介護支援専門員 太田世津子さん:「普段からショートステイの方との連携をとりながら、何かあったらお願いしますとお願いしていくということが普段からのそういう協力関係が大切と思う。実際に起きたらどうするか考えながら、先のこと考えた手当をしないといけない備えが大事と感じます」
停電が命の危機に直結する在宅患者や障害者。言葉にならない声を聞き、伝えていくことがその命と生活を守ることにつながります。