静岡市用宗漁港を襲うシラス漁の異変 その原因は4カ月前の・・・
漁師:
「まだ来るぞ」
漁師:
「おいおい。ストップ、ストップ、ストップ」
Q.これが毎日起こっている?
漁師:
「日常茶飯事。これがあるから、漁ができない」
網にかかってあがってくるのは、魚ではなく、大量の流木。
駿河湾で一体今、何が起きているのでしょうか─
栗田麻理アナウンサー:
「静岡市にある用宗漁港です。こちらでは今シラス漁が行われているんですが、漁港の隅にはこのように大きな塊となった流木が置かれています」
シラス漁で有名な静岡市の用宗漁港。
今ある異変に直面しています。
清水漁業協同組合 用宗支所 増田新 支所長:
「漁に出て網に流木が入る。そういったことはほぼ毎日、漁に出ればどこかの船が流木を持ってくる状態が続いている」
その要因が―
石田和外アナウンサー:
「安倍川の水位は昨夜からのかなりの量の雨量で水位が上がりました。その頃に比べると、水位は少しずつ下がっていると思われますが、ご覧のように濁流が海に注いでいます」
去年9月、県内各地に甚大な被害をもたらした台風15号です。
記録的な大雨は過去にないほど大量の流木やがれきを巻き込み、海へと流れ込みました。
発生から4カ月、今も用宗の漁師たちを苦しめています。
栗田麻理アナウンサー:
「これから特に流木が多いという、安倍川の河口付近に向かいます」
用宗漁港から安倍川の河口まではおよそ2キロ。
漁場(ぎょじょう)に着くと、すでに他の船が網の回収作業を始めていました。
漁師:
「回せない。回せない」
2隻で網を引く、用宗のシラス漁。
網の回収を始めてすぐに、網を巻き取る機械が止まってしまったといいます。
Q.今はどんな状況?
漁師:
「大きい流木がかかっていると思う。網が止まっているから本当だったら浮きが伸びていく。だから下に何かかかってしまっている」
その後、少しずつ網を巻き上げていくと─
漁師:
「来るよ。見ていて」
Q.かなり大きな流木ですね
「これじゃ小さい」
Q.こういったことは毎日?
「ここの漁場では日常茶飯事。これがあるから漁ができない」
本来、安倍川の河口付近はシラスのえさになるプランクトンが豊富で、漁師たちにとっては絶好の漁場です。
しかし、そこに台風15号によって発生した流木やがれきが堆積し、現在は網を入れることさえ困難となっています。
漁師:
「これはもう(船に)上げられないから切る」
Q.上がらない場合は網を切る?
「網を切るしかないんだよ」
Q.網の修理代はどのくらいかかる?
「かかる時は50万円くらい。この前の船は60万円くらいかかった」
絶好の漁場であっても漁のたびに網を犠牲にすることはできません。
普段は魚群探知機を使って流木を調べ、そうした場所を避けざるを得ない状況で、去年11月と12月の漁獲量は前の年から半減しました。
栗田麻理アナウンサー:
「今最後のところまで網が引き上げられそうだったんですが、かなり大きい流木が挟まっています」
最後に上がってきたのが、この流木。大きさは5メートルほどもありました。
漁師:
「おいおい。ストップ、ストップ、ストップ」
撤去作業中には大きな流木が当たりそうになり、ひやりとする場面も…。
港に戻る途中、魚群探知機には海底に沈む流木が映っていました。
通常の海底の様子と比べると、その違いは一目瞭然。
この凹凸(おうとつ)、すべてが堆積した流木やがれきだといいます。
先ほど網を引いていた船の漁師に話を聞くと─
漁師:
「(流木がかかると)量にもよるが、その日が終わる。間違いなく。(修理が)次の日に間に合えばいいっていうぐらい」
Q.収入はどうなる?
「その日は0円。全員が0円になる。(流木に)かかった船は」
Q.網の修理費も…
「全部がマイナス。まずいよ・・・」
漁協の依頼を受けた静岡市は去年11月に流木の撤去を一度行いましたが、漁への影響を解消するには至っていません。
県も要請を受けて周辺の調査を進めていますが、いずれも今後の具体的な撤去作業の計画は立っていないそうです。
先週の漁をもって禁漁期間に入ったシラス漁ですが、漁が解禁される予定の3月21日までに流木やがれきの撤去が進まなければ、影響が長期化する恐れもあります。
清水漁業協同組合 用宗支所 増田新 支所長:
「安倍川の水が今までに経験したことのない量だったので、漁業被害っていう意味ではすごかったのかなと。市も県も国も解禁までに何とかしようとおっしゃってくれているので、期待したいと思う」