牛乳値上げ~消費者の事情と酪農家の苦悩
林輝彦アナウンサー 田子重 西中原店 静岡・駿河区
「静岡市内のこちらのスーパーでは11月からほとんどの牛乳が値上げされたそうで、お客さんの間でも少しだけ買い控えの動きがあるようです。」
生活に欠かせないという人も多い乳製品。
今月から最大でおよそ1割の値上げとなりました。
田子重 西中原店 二橋 秀剛店長代理:
「やっぱり(今月)1日以降はちょっと本数的な売り上げが減っているのかなと実感している。その前にたくさん購入したというの人もいたので、ただ牛乳は日がそんなに持たないので、またこれで落ち着けば普段通りに買っていただけると思うんですけど、今まで以上に簡単に手が届かなくなったのかなと思います。」
こちらのスーパーでは、牛乳が10円から40円ほど値上げしたことに伴い、例年より1割ほど売り上げが落ちているといいます。
ただ、それでも牛乳は飲み続けるという客も。
客 20代:
「牛乳の値上がり、ちょっと痛いですね。
Q.値上げしても牛乳は買う?
「必需品なので、やはり買う。」
客 70代:
Q.牛乳は普段から飲む?
「ほとんど毎日(飲む)。(値段が)上がっても飲まなければいけない」
田子重 西中原店 二橋 秀剛店長代理:
「本当にお客様が買いたいと思った時に商品が並んでないともうどうしようもないもんですから、少々高くてもしっかり商品を切らさないこと、特に月曜日・金曜日の特売日は必ず最後まで閉店までギリギリもつように発注に余裕をもってとるように心がけている」
酪農家が直面する深刻な現実
牛乳を購入する側だけでなく牛乳を生産する側にも、今深刻な影響が出ています。
ドイファーム 土井一彦さん:
「絞れば絞るほど赤字になってしまうっていうのが今現在の状況なんですけど」
こう話すのは富士宮市の酪農家です。
林輝彦アナウンサー:
「富士宮市の牧場です。今こちらの乳牛が食べているエサはトウモロコシの葉と配合飼料を混ぜたものです。配合飼料に関しては、海外からの輸入に頼っていて、円安やウクライナ情勢を受けて、この配合飼料の価格が倍になっているというんです」
酪農業にとって経営費用の半分近くは牛などの飼料、つまり餌代が占めています。
ところが、餌に使われる小麦の主な生産地はウクライナやロシア。
情勢が緊迫する中で飼料価格が高騰しました。
こちらの「土井ファーム」でも1年前には牛1頭あたり1日950円だった餌代が、今では1日1900円と、2倍になっています。
静岡県を含む、9都県で生乳を受託販売している関東生乳販連は、今月から、生乳の取引価格を1キロあたり119円から129円に値上げました。
ただ、この値上げによって酪農家を取り巻く環境はさほど改善されないといいます。
ドイファーム 土井一彦さん:
「おそらく10円上がっても飼料の高騰分をカバーできるほどの効果は期待できない。乳価に追いついてきたような感じで、逆にも本当に乳価を追い越しているようなのは現実なんですけど、絞れば絞るほど赤字になってしまうっていうのが今現在の状況なんですけど、絞れば絞るほど経費がかかる。餌代が増えてしまうので、餌くれないわけにはいかないし」
Q.絞る回数を減らしたり、ちょっと絞る量を抑えるというのは?
「それをしてしまうと、乳房炎っていう牛にとっては命取りというか、経済動物なんで、それをやると体調崩したり生理的におかしくなっちゃうんで、工業生産のものとは違って生体なので、蛇口をひねるように牛乳を出したり少なくしたりというのは出来ないのが現実です」
土井さんの知り合いには、利益が見込めず廃業してしまった酪農家もいるといいます。
少しでも餌代を抑えるため、土井さんは飼料の生産にも取り組んでいます。
ドイファーム 土井一彦さん:
「海外の輸入の餌に依存するだけでなくて、昔からうちには自給飼料といって餌を近くの畑を自分の飼料畑として作って、牛に与えることもやっている。今年から来年にかけてもっと増産してるのが現状です。飼料代の軽減、自給率上げる酪農を今模索してる最中」
ドイファームでは生まれてきた仔牛の販売もおこなっています。
ただ、現在は仔牛の販売価格も下降傾向になり、経営をさらに追い込んでいるといいます。
酪農家を取り巻く環境は厳しさを増しています。
ONドイファーム 土井一彦さん
「仔牛が生まれてそれを市場に出すんですけど、その方の手取りも下がってきちゃってるんで、本当に厳しい経営に拍車かかっているような感じで、厳しいのが本当の現実です。本当、消費者の方に申し訳ないんですけど、牛乳飲んでください。お肉食べてくださいってこと言い続けつつ、もっと値上がりをしてもらわないとやってけないというのが現実かと思います」