土石流発生から5日目 雨と暑さの過酷な捜索現場 静岡・熱海市の1000世帯で断水続く
人力で続く懸命の捜索活動
須藤誠人アナウンサー:リポ空撮 午前9時すぎ
「熱海市には朝から雨が降っていますが、捜索活動も進められています。崩壊してしまっている家の中に入ろうとしているのでしょうか、その建物の前にふさがるようにたまっている土砂をかき分けている様子がわかります。この作業にあたっているのは10人以上の人たちです」
林輝彦アナウンサー:午前8時ごろ
「雨が降る中、国道135号にかかる逢初橋のすぐ先では、こちらからは警察官、そして消防隊員の姿が見えます。土砂の中に行方不明者がいる可能性を考え、手作業で行方不明者の捜索活動を行っています」
斉藤慎一朗記者:午前8時ごろ
「土石流があった中腹部分では、警察や消防隊員がショベルを使いながら土砂の撤去作業を行っています。横一列になりながら、民家なのでしょうか、中に入りながら土砂の撤去作業を行っています」
隊員たちが、泥とがれきを撤去し建物に救助者がいないか確認していきます。まだ重機が入れない現場では、頼りになるのは人の力だけです。数人がかりで力を合わせ、ロープを括り付けたがれきを撤去します。
雨と暑さの過酷な現場
隊員たちの足元を勢いを増した濁流が襲い、また堆積した泥がぬかるみとなり捜索を阻みます。
齋藤慎一朗記者:午前8時ごろ
「雨が降っていて地盤はかなり緩んでいます。消防隊員が土砂に足をとられながらゆっくりと前に進んでいきます」
神山晃平記者:午前9時半すぎ
「午前9時43分です。サイレンがなり、アラームでしょうか退避でしょうか、捜索隊の動きが慌ただしくなっています。捜索隊が建物から外に出てきます」
雨により危険が増した現場では、救助隊員たちが退避する場面もありました。連日こうした状況が続いています。
きょう熱海市の最高気温は30℃を超え真夏日に。今年一番の暑さとなりました。いっそう過酷な現場で、救助に活動が続いています。
不明者の家族の思い
77歳の女性。いまだ連絡が取れない1人です。安否の連絡を待つ長男にお話を伺いました。
女性の長男(53)
「土砂が流れてきている方角が まさしく母親が住んでいる家の方だったので、まさしく家があった場所が更地になっている状況っていうのが確認できましたので流されたんだなということは確信しました」
母親は夫が仕事を引退した後、夫婦でセカンドライフを楽しむため20年前から熱海暮らしを始めたそうです。
長男(53)
「非常にいいところだと。山ですけど地盤も溶岩で強いし安全だしとはいつも言ってましたね。できる限りのことはやっているが応答はない」
父親は難病を患っていて入院中のため、母親は3か月前から一人暮らしだったそうです。父親には土石流の件は伝えていません。
長男(53)
「ほんとに仲が良かったんですよ。なので兄弟の総意として言わないようにしようというのは決めてます。なんか葛藤しているんですよね。やはり無事でいてほしいという気持ちと、覚悟を決めた方がいいという気持ちとですね」
新しいフェーズに入るもいまだ続く断水
きょう熱海市の斉藤市長は、現状について新しいフェーズに入ったと言及しました。
熱海市 斉藤栄市長(午前10時ごろ)
「これまでの緊急的対応から新しいフェーズに入ると思っている。特に救助活動中心に行ってきた、これは引き続き行っていくが、この活動に加えて特にライフラインの復旧、水道や道路、また避難者がいるわけだが、住宅をどうしていくのか、そういった生活再建に少しずつ重点が移っていく」
伊豆山地区では現在も全域のおよそ1000世帯で断水が続いています。
斉藤慎一朗記者:午後1時ごろ
「午前中の雨がやみ、じめッとした暑さになりました。この地域は断水が続いていて、地元住民らが給水場を開いています」
被災地では昼頃に雨がやみ、気温が上昇する中、地元住民たちによって給水所が設けられた地域も。
仲道町内会 高橋薫会長
「お年寄りの方とか、体が不自由な方とか、車いすの方とか、そういう方はあちら(避難所)へ行きたくない、自分の家の方が良いということで残っている方もいる。そういう人たちは飲む水もない、出ないんだから。そういう人たちはこっちに取りに来る」
ただ、給水所で多くの水を一度に持ち運べるわけではなく、水を節約しながら自宅で生活する高齢者も。
男性 70代
「こんな状態でどうしようもないという、例えばああいうところで下着を洗ったりという程度。風呂の水が無くなったら本当に不便ですね」
高齢者や介護施設利用者の受け入れ始まる
そんな中、こちらのグループホームでは避難している高齢者や、被災地付近の介護施設利用者の受け入れを始めました。
あたみ翔裕館 永岡辰章 施設長
「近隣のデイサービスが運営できない状態だというところで、利用者の方が(避難所では)お風呂に入れない、またとても怖いという声があるので、とにかく安心して暮らしていただけるように受け入れていこうと、定員をオーバーしても受け入れていこうという形をとった」
こちらのグループホームは30人が定員のところ、現在避難者を含め5人オーバーの35人が利用しています。避難者に対しては基本的に日中は施設で介護支援を行い、夜間は避難所に戻ってもらう形をとっていると言います。
避難者 80代
「知らない人ばっかりだが、こういうのがあるといいなと思って、(施設が)いいよと言ってくれたので来させてもらっている。(皆と体操したりすると)気持ちは落ち着きますよね」
施設では多くの避難者を受け入れるため、全国にある同じグループの施設から介護士の応援も行いました。今後、定員に関係なく避難者を受け入れていく方針だと言います。
あたみ翔裕館 永岡辰章 施設長
「顔には出ていないが、必ず(心の傷が)残っていると思う。それを少しでも払しょくして、笑顔で帰っていただいてということをスタッフで心がけている」