少子化や節句離れで需要低迷…創業70年の老舗屏風店の4代目は28歳の女性 静岡市
Q.屏風職人になってどのくらい?
望月悠さん:「7年になります。出来ることが増えたので楽しくやっています」
今は5月5日のこどもの日に向けて大忙し。兜や鎧の背景につかう屏風を、急ピッチで制作中です。
望月悠さん:「かなり力強いデザインのものが多いです。喜んでもらえるようにきれいにつくろうと意識しています」
こちらは望月さんが考案した今年の新作。洋室にも合うようにと、シンプルなデザインを選びました。
望月さんが屏風を作り始めたのは21歳のとき。当時は別の仕事をしていましたが、2人の兄が別の職業に就いたことが転機になりました。
それまで家業を継ぐ気持ちはなかったそうですが…
望月悠さん:「たぶん他にやりたいことがあったら、他もやりたいことあるしなって思いながら、この会社にいたのかもしれないですけど、もうやりたいことはすべてやれたので、一生懸命ここでやれているのだと思います」
屏風作りで最も重視されるのは、和紙を貼る技術。望月さんは先代である父親にその腕を認めてもらうまで、3年かかったといいます。
望月悠さん:「(屏風の技術は)祖父の弟夫婦に教えてもらっていました。手取り足取り教えていただける感じじゃなくて、見て覚えなさいという雰囲気で。職人気質でした」
望月屏風店は1950年に望月さんの曾祖母と祖父が設立。しかし、少子高齢化や「節句離れ」によって需要は低迷。全盛期に静岡市内だけで20社あったという屏風店は、現在、県内全体でも3社しかありません。 望月さんの父、3代目の篤さんは、自分の代で廃業することを考えていました。
望月さんの父、篤さん:「私の代で終わらせようと思ったものですから。そのあとに娘が入ってきて。正直、長続きするかどうか心配だった。若い人はいないしやる仕事ですので、それができるか心配だった。今はもう一人前の職人だと思っていますし、たぶんうちの会社の中では一番上手に貼れると思います」
北川彩アナウンサー:「とっても素敵な商品が並んでいますが、全て和紙でできているんです」 望月さんが力を入れているのが、伝統技術をいかした屏風以外の新しい商品の開発。
すべて、屏風に使われている和紙を用いてつくられたものです。なかでも、一番人気はこちらの「命名屏風」です。 望月悠さん:「屏風の形にして、書いたらすぐに飾れるように開発しました。すごくこだわって、磁石がつくように加工がしてあるので、写真の裏に磁石を付けてもらうと、ピタッと付けられます。こんな使い方もできるんだねって、昔いた職人さんたちは驚いてくれて喜んでくれています」
若い感性で伝統技術の可能性を模索する望月さん。28歳の屏風職人の挑戦は始まったばかりです。
望月悠さん:「(節句づくりを)辞めちゃうと、どんどん節句のお祝いが簡素化してしまうので、少しでも3月3日、5月5日を忘れてもらわないように、誕生や成長を祝うところで、盛り上げるというか彩りを与えられればなと思います」