静岡・川勝知事が「コシヒカリ」発言で緊急会見…自民「火に油」 知事与党も「県民に理解される会見でない」
川勝知事:「あちらはコシヒカリしかない」
臨時会見の冒頭、知事は次のように語りました。
川勝知事
「どうも突然集まって頂きまして、恐縮でございます。先ほどふじのくに県民クラブの会派の代表また幹部の方がお見えになって、参議院補欠選挙の最終日におきまして、私の発言が、大変な誤解を生んでいると。従って、正しくそれを県民の皆様方に説明するのがよいとアドバイスをいただいたので、この記者会見を開いていいただくことになりました」
自らを支持する県議たちに促されての会見だったといいます。
川勝知事「御殿場市民を揶揄する意図はない」
川勝知事会見
「基本的に私は御殿場が大好きで、そして御殿場市民になにか揶揄(やゆ)するとか、市民の方々を傷つけるという意図はさらさらありません。選挙というのは政策の戦いです、論戦です。そして、元御殿場市長の発言を受けて、その発言というのは、『自分はごはんが大好きだ、ご飯があれば何もいらない』ということを繰り返し言っていました。これを逆手にとって、御殿場にはコシヒカリしかないといって、それが御殿場に対して揶揄したととられた。これは違います。そして、御殿場市長の発言、そこには農業観が表れている。自民党候補を難詰するために、そのような発言をした。御殿場市民ではなくて、自民党、元御殿場元市長に向けたものであります」
「言ってみれば、(水を注ぐ)ここに水が入っている(水入ったコップ手に)。コップに水がいっぱい入っていると、それを「水しかない」と言うことができるでしょう。あるいは、(コップの水を飲む)コップに半分の水があると、「半分あれば十分だ」と言う人もあれば、「半分しかないではないか」ということもできる。ですから、御殿場にコシヒカリはあると。しかし、それを「それだけあれば十分である」と強調したのは論戦ですから、従って、「それしかない」と言っているに等しいということで、それを「御殿場市にはコシヒカリしかない」という発言になったと。これは全体の脈絡では明確に、この方が、35市町の全体の代表になる器量ではないと言うための演説で、御殿場市ともう一つの対立候補である浜松市の対立ではなく、2人のうちどちらを選ぶか。御殿場市民にではなく、御殿場元市長に対して、この方が35市町の代表たりえないと言った言葉が切り取られて、御殿場市民を御殿場の地を傷つけるという途方もない誤解を生むことになった。誤解だけはしっかりといておきたい。ぜひ、御殿場に対して何か批判めいたことを言ったとお受け取りになったのは それは誤解であるということを明確に申しあげる」
「しかしながら、そう取られかねないような発言内容でもあるということが、先ほど私は聞かされて、そういうことであれば誤解を生んだ私に責任がある。しかし、火のないところに煙は立ちません。この発言の前提にあったのは、御殿場コシヒカリの自慢がしたいがために、それを御殿場コシヒカリ・つまり、ごはんだけがあれば、おしんこがあれば、何もいらないと言った、これを逆手にとったということでございまして、選挙中の論戦であったということをぜひお踏まえいただきまして、ご理解たまわりたいということでございます」
問題の発言は…
知事が「誤解を生んだ」とした問題の発言は、参院補選最終日の10月23日、浜松市で行われた山崎真之輔氏への応援演説の中で飛び出しました。御殿場市長を務めた若林洋平氏に関連し、次のように訴えたのです。
川勝知事(浜松・中区 23日)
「今回の補選は、静岡県の東の玄関口、人口は8万強しかないところ。その市長をやっていた人物か。この80万都市、遠州の中心・浜松が生んだ、市議会議員をやり、県議会議員をやり、私の弟分。こういう青年、どちらを選びますか。あちらはコシヒカリしかない。だから飯だけ食って、それで農業だと思っている。こちらにはウナギがある。カキも出てくるし、シラスも出てくる。そして三ケ日ミカンもある。肉もある。野菜もある。タマネギもある。もちろん餃子もある。何でもある。そういうところで育んできた青年を選ぶのか、はっきりしています。浜松遠州、経済はここが引っ張ってきた。あちらは観光しかありません。それしか知らない人間が静岡県全体の代表の参議院議員になってどうするんですか。ダメです」
県庁には、この発言についての抗議や問い合わせが8日までに370件寄せられているということです。
県議会各会派とも「知事発言には問題があった」認識で一致
また、県議会の各会派も8日、知事与党の「ふじのくに県民クラブ」を含めて、「知事発言には問題があった」という認識で一致。若林氏を擁立した自民党内からは、知事の不信任決議案や辞職勧告決議案の提出を求める声も上がっていました。
最大会派 自民改革会議 野崎正蔵代表(県庁 9日午前10時ごろ)
「今回の知事の言動については、徳川家康が『ならぬ堪忍するが堪忍』と言いましたが、もう堪忍袋の緒が切れたということです。嘘で塗り固められた静岡県政がこのままでいいのか、と私は思います」
こうした状況の中で開かれた9日の臨時会見。知事からは明確な謝罪の言葉はなく、あくまで「誤解だ」と繰り返しました。
川勝知事会見
Q.誤解した側が悪いのか?
A.「これは火のない所に煙は立ちませんが、なぜこの点が論争になったのか。選挙戦の最後の論戦です、そして、その中の論争の中のひとつが静岡県の第一次産業を儲かる産業にするということだった。自民党候補の考えは、その方の言われる農業観というのは、御殿場コシヒカリに全部集約するようなものであったと思える。それを逆手にとれば、「それしかないではないか」ということになる。これは論戦ですから。これは若林自民党推薦候補に対して向けたもので、御殿場市議会、あるいは現市長、市民に向けたものでは全くありません」
Q.そもそも、若林氏のコシヒカリ発言は、農業政策について言ったものではないと私は記憶していて、好きな食べ物を報道陣に問われて「コシヒカリだけあればいい」と言っていた。そもそもそこで齟齬(そご)がある。知事がよく使われる広辞苑によると、誤解は意味を取り違えると間違った理解をすると書いてあるが、何をどう間違うとこのような発言になるのか、また選挙中の論戦であれば何でも言っていいのか?
A.「選挙は激しい論戦。そして農業観というのはやはり自分が経験したものによって培われると思う。私は彼に対して静岡の農業を担う到底代表ではないと」
Q.知事がおっしゃった、浜松・遠州の中心経済をひっぱってきた、こちらは観光しかありません、そんな人間が静岡県の参議院議員になってどうなるんですが、だめですと、これはどういう意味なのか? 観光が主な産業の地に生まれ育った人間は、静岡県全体の参議院議員になる資格がないということなんでしょうか?
A.「これも比較ですね。まあですから、浜松市議会議員をやり、県全体のことを司る県議会議員をなさった方、そして浜松というのは、人口も80万ということでですね。圧倒的に多いと、そこの中心の産業が、これはものづくりであることも誰も知っています。もちろん観光もあります。農業もあるということですから、こうしたことを経験しているものと比べると、比べてもらうということがですね、有権者の方に比べてもらうということが大事で、これはあの候補者同士を比較するために一方の候補者を選んでもらうための演説ですから」
Q.人は生まれる場所は選べないわけですけれども、生まれた出生地によって議員資格が有る無しが分けられるんでしょうか?
A.「いや、それは分けられないでしょう。だけど、その小さな町に生まれても県知事になられた尊敬している山本敬三郎という先生いらっしゃいますけども、小さな町に生まれても、県全体をやっているじゃありませんか、だけどですね、35市町全体の代表であるということを繰り返し、前自民党候補は訴えられていました。最後まで訴えられていました。それは違うと、35市町の代表たり得ないと。何故かということでですね、浜松との対比をさせたということであります」
Q.改めて言うまでもないが、川勝知事は35市町の代表であり、300万県民の代表だが、そういう方が今回、選挙で特定の候補に非常に強く肩入れしたと。結果こういうことになったと思うが。そこは何ら問題なかった、反省すべき点は全くないのか?
A.「これは知事選の続きだった、6月の激しい知事選、これは自民党が公認をとって、大きなお金を使って組織をしめあげて、そういう選挙をなさって、当然相手候補の私をとことん貶める戦術をとった。それを知っているがゆえに、これはさすがにノーサイドたりえないと選挙直後に申し上げた。ですから、県全体の代表であるということ、県民党の党首という比喩で申し上げているが、その立場は全く変わらない。それに対して県民の公共善をないがしろにして、党利党略に対してはノーと言わざるを得ないのがこの3か月の私の態度であります」
知事与党・ふじのくに県民クラブ会長「県民に理解される会見でない」
川勝知事を支える県議会第2会派「ふじのくに県民クラブ」は、知事の会見を聞いて…。
ふじのくに県民クラブ 佐野愛子会長
「私どもは知事にしっかりと謝罪の記者会見をお願いしたつもりでした。しかしながら謝罪にはなってなかったので、少し私どもにとっては内容的にはちょっと不安な会見ではありました」
Q.改めてどういったことが佐野会長と思い違いになりましたか?
A.「謝罪の会見になっていなかったので、ですから『誤解を与えた申し訳なかった』というふうに、言ってほしかったなと私は思っております」
Q.県民にも理解される会見ではなかったと?
A.「そう思います」
自民改革会議「火に油を注ぐような会見」
一方、最大会派の自民改革会議と第3会派の公明党県議団の代表は知事室を訪ね、無所属議員も含めた県議49人の連名で、コシヒカリ発言に対する抗議文を手渡しました。
自民改革会議 野崎正蔵代表
「あの会見を聞いて、県民のみなさんが納得できるような内容だったと思われますか? 火を消すどころか、火に油を注ぐような会見だったような気もしますけれども。 我々としてもあまり生産的でない事柄に対して、多くの時間を費やすというのは本意ではありませんけれども、やはり、多くの県民からしっかりとしたけじめをとっていただきたいという声も我々の所に届いておりますので、そうした声に応えられるような行動を取っていきたいと思っております」
Q.すなわち、不信任決議案ないしは辞職勧告決議案の提出ということは、引き続き視野に入るというのでしょうか?
A.「いろんな手法があるかと思いますので、その中で対応を考えていきたいと思っております」
御殿場市長「市民の心を傷つけた気持ちはとても消えない」
また、御殿場市の勝又市長は、知事の会見を受けて、次のようにコメントしました。
御殿場市 勝又正美市長
「明らかに御殿場市に対して揶揄しているというか、非常に御殿場市民あるいは御殿場市を傷つける言葉だと感じることは間違いありませんし、そういったことが、やはり市民の心を傷つけていると私はそう思います。本日の知事の会見をお聞きしまして、謝罪という会見ではなくて、この内容からいきますと御殿場市民の心を傷つけた気持ちというのはとても消えない。そういった内容だと私は感じました。以上です」