変わる盛り土規制・再発防止に向けた取り組み~熱海土石流災害から間もなく2年

熱海土石流災害から間もなく2年となります。盛り土の公表、そして盛り土を巡る法律も変わりました。今夜は、再発防止に向けた取り組みと課題を考えます。

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変わる盛り土規制・再発防止に向けた取り組み~熱海土石流災害から間もなく2年

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 今年4月、県は、不適切な盛土の公表に踏み切りました。

 危険な盛り土の拡大防止や、新たな造成行為の抑止につなげるためです。

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 公表された盛土は163ヵ所。

 静岡県内28の市や町に、不適切な盛り土が存在していることが明らかになりました。

「ここはですね、農地法がかかっているとことなんですけど昨年無届けで盛り土がされてしまったところで」

 こうした危険な盛り土に対する監視体制を強化するため、県は去年4月「盛土監視機動班」を新たに設置しました。

 「盛土監視機動班」の見回りは週3回程度。

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 盛土の状況が危険だと判断した場合、現場で立ち入り検査を行い、口頭や文書で行政指導して安全対策を促します。

県監視機動班 中村直樹副班長:
「違法な盛り土は造成が始まると短期間で大きな盛り土になってしまうことがある」

「不審な業者が盛り土行為をしている場面を見つけたら「盛り土110番」に躊躇することなく通報していただき、そこに対応して私たちが盛り土の現場を確認していくという、県民全体が盛り土行為を監視するような体制ができてくればいいなと思っている」

法律改正へ国の動き

 人災とも言われる悲劇を二度と繰り返さないために。

 熱海土石流災害を受け、国は法律の改正へと動きました。

 今年5月に施行された、通称「盛土規制法」です。

 危険な盛り土を全国一律の基準で包括的に規制するもので、都道府県の知事などが、人的被害の出るおそれがある区域を規制区域として指定します。

 その区域内への盛り土の造成を許可制にすることや、定期的な安全確認などが求められることになります。

 県はなるべく早くこの区域の指定を、完了させたいとしています。

 厳罰化も進みました。

 個人に対しては、最大3年以下の懲役または1000万円以下の罰金。

 法人には、最大で3億円以下の罰金が科せられることになりました。

画像: 法律改正へ国の動き

京都大学 釜井俊孝名誉教授3
「2年経っても、なかなか当時の生々しさが残っていて、強烈な印象を持ちます」

 熱海の被災地を先日訪れたのは、京都大学の釜井俊孝名誉教授です。

 釜井名誉教授は盛土規制法の整備に有識者として関わってきました。

京都大学名誉教授 釜井俊孝氏 
「前は谷の中にも土砂があったんだけどそれが無くなっていますね。そういう意味では不法残土が処分されて原因が徐々に減っていると。より安全側に行っているのではないかと思う。」

 熱海土石流災害をきっかけに動き出した法改正。

 施行された盛土規制法は、事業者の違法行為の抜け道を大幅に少なくすることができる一方、自治体の判断に委ねられる部分が大きいと話します。

京都大学名誉教授 釜井俊孝氏
「国の委員会としては、できるだけ幅広くやっていただくという議論がされた。どこを指定するかということも行政の判断だが、逆に言うとどこを外すかもそう(行政の判断)。その辺は行政が、地元の自治体がしっかりと入って、判断することだと思う。自治体は粛々とやっていただくしかない。色々な様々なマニュアルや対策基準を我々が作ったので」

行政代執行とその課題

 県は盛土規制法について、県内の「政令市や隣県と情報交換を行いながら取り組んでいく。法律を運用するために必要な体制を整え、県民にわかりやすく説明していく」としています。

 法整備がなされ、県は盛土監視機動班設置などの対策も進めていますが、違法に盛り土をする業者の中には、行政が出す措置命令に応じないケースも確認されています。

 こうした時の最終手段とも言われるのが「行政代執行」です。

 5月に施行された盛土規制法のガイドラインにも、「行政代執行による公費の投入を回避しようとするがあまりに、監督処分又は改善命令の発出それ自体を躊躇するという運用は行うべきではない。」と書かれていますが。。。

 静岡市葵区の杉尾地区と日向地区。

 土の量は推定で5.1万立方メートルと37.5万立法メートル。
 
 大規模に造成されたこの盛り土も違法です。

画像: 行政代執行とその課題

 この現場は川勝知事も視察して、現状復帰を求める「措置命令」を今年4月に出しましたが、業者側は応じておらず、復旧工事は行われていません。

 今後、台風などによる影響が心配されるため、県は土のうや堰堤を設置する応急的な工事に取り掛かっています。

 県は、「行政代執行」に向けた準備を進めていますが、工事着手にはまだ数カ月かかる見込みで、すぐに対応できない事情があるといいます。

県河川砂防管理課 鍋田航平課長
「行政代執行で何をやるかというのは工事であって工事を進めるためには工事の部分の県の手続きが必要で、工事に必要な期間は、ある程度の期間は必要になっている」