台風8号で浸水 松崎町の老舗旅館の長い道のり【WEB限定特別企画】
2022年も残りわずかです。きょうとあすの2日間、WEB限定配信で特別企画を放送します。まずは、台風8号で被災した静岡県松崎町の老舗民宿についてです。浸水被害を乗り越え営業再開させるまでの道のりを追いました。
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松崎町雲見地区。
地区の中心を、太田川(おおたがわ)が流れています。
太田川沿いにある、民宿「太郎」。
この地で、54年続く老舗です。(昭和43年創業)
来客:
「お疲れ様です。ありがとうございます。」
この日の宿泊客は、香港からきた4人です。
「太郎」の売りは、湯冷めしにくいという温泉と。
「どうぞ船盛りです。どうぞ」
それに、雲見港であがる海の幸です。
宿を切り盛りするのは、鈴木とし子(すずき・としこ)さん(62)。
太郎・鈴木とし子さん:
「外国からいらっしゃって嬉しいですね。本当に元気もらえますね。仕事するのが楽しくなります」
8月、日常が、一変しました。

【8月 台風8号】
下山カメラマン:
「松崎港沖合です。土砂が海に大量に流れ出ています」
8月14日の台風8号。
大雨で、土砂や木々が太田川(おおたがわ)に流れ込み、水が川からあふれ出ました。
幸い人的被害はありませんでした。
しかし、住宅1軒が全壊。
地区内のおよそ40軒で浸水被害がありました。
また、川の岸壁に設置されていた水道管や温泉管も壊れ、長いところで2週間にわたり断水しました。
民宿「太郎」も…。
白鳥衛記者:
「こちらの民宿では玄関の戸を突き破り、1階部分のこちらまで泥が流れ込んできたということです。現在は漏電の危険性があるため電気を消して泥の撤去作業がおこなわれています」
伊豆雲見温泉 太郎・鈴木とし子さん:
「ここのガラスが破れてここからものすごい勢いで水が中に入っていった。テーブルなんかもみんな倒れて、畳も浮いてしまって、布団もほとんど浸水して濡れました。全部」
片付けに追われる日々…。
宿の魅力の一つだった温泉も止まり、お客さんの受け入れが出来なくなりました。
伊豆雲見温泉 太郎・鈴木とし子さん:
Qどれくらい時間がかかるのか
「どのくらいかかるのか、さっぱりわからない。さっぱりです。本当に。なるべく早く再開したいです」
再開に向けた道のりは長く…。

【発災1カ月 9月】
発災1カ月が経った今年9月。
川や道路の土砂は撤去されました。
復旧作業を後押ししたのは、地元の中学生です。
松崎中学校の51人がボランティア活動に参加。
給水タンクを届けたり、ゴミを運び出したり…。
松崎中1年 関蒼太くん:
「雲見が大変だということを知ったので来た。思ったより被害がひどくて、家の中も泥だらけだったのでびっくりした」
松崎中1年 小林紋奈さん:
「人のために自分ができることなら、できればいいなと思ってやった。前みたいに美しい松崎町になってほしい」
民宿「太郎」は…
「扇風機で床乾かす」
1カ月が経ち、張り替えが終わった床はまだ半分。
伊豆雲見温泉 太郎・鈴木とし子さん:
「床下がほぼ乾燥して、大工に床を貼ってもらっている状況。」
復旧には、1000万円近くかかりました。
伊豆雲見温泉 太郎・鈴木とし子さん:
「怒涛の1カ月という感じでたちまち1カ月が過ぎたんですけど。11月中くらいには再開したいという気持ちはある」

【11月19日】
「白鳥:こんにちは。よろしくお願いします」
「鈴木:良かったら見てみてください。こんな綺麗になりました。おかげさまで。
「白鳥:以前は泥が」
「とし子さん:ドロドロでした。みんなに泥かいてもらって、やっとこんな状態になりました」
発災3カ月が経った、11月19日、営業を再開。
かつての日常が戻りました。
伊豆雲見温泉 太郎・鈴木とし子さん:
「長い期間のはずなんですけど、とても早くきょうに至った。やっぱり普通の生活、当たり前の生活が幸せなことなんだなって思いました。手伝ってくれたみなさんに本当に感謝感謝で毎日生活しています」
それでも…。
伊豆雲見温泉 太郎・鈴木とし子さん:
「川向こうのお宅はまだ来年ということでうちの方としても再開してもいいのかなという気持ちはあったんですけど雲見を元気にさせたいなという気持ちもあって頑張って再開しました」
「ありがとうございます。お風呂入ってゆっくりしてくださいね。」
伊豆雲見温泉 太郎・鈴木とし子さん:
「何もかもが初めての事だったので日々を過ごすのが精いっぱいで今となってみればあっという間で元に戻った状態を見ると前の状態が何だったんだろうというようなそんな感じです。雲見は温泉がとってもいいですし、お料理も磯のお料理がたくさん出るのでたくさんのお客さんに雲見温泉に来てもらいたい」
