県庁内でも割れた意見…『まん延防止措置』再延長要請決定までの1週間 直前まで検討重ね 静岡県

 静岡県でも延長が決まった「まん延防止等重点措置」。決定が出るまで、この1週間は揺れていました。

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2月28日 月曜日

静岡県 川勝平太知事:「私どもは今週中に判断をするという段取りでございます」

3月1日 火曜日

 この翌日火曜日、県の幹部は…。

静岡県幹部:「延長するかの判断は知事会見で発表する。4日に国が判断結果を発表するらしいので、会見をやるなら、あす、水曜の夕方」

 延長か解除か、静岡市内の飲食店も気が気ではありませんでした。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「なかなか集客もできずに、自分の店だけじゃないと思うけど、ちょっと困っている状態」

 1月27日から県内に出ている、まん延防止措置。最も影響を受けているのが、飲食店です。こちらの店でも午後8時に酒類の提供を終え、午後9時に閉店する時短要請に応じています。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「週末に関しては80%くらい減った。もちろん満席にはならないし、すぐ予約が入る個室も埋まることもあまりない」

 酒類の提供が午後8時までだと、午後7時の時点では客足が途絶えるといいます。今回のまん延防止期間中は、こんな取り組みも。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「今はドリンクキャンペーンをやっていて、ドリンク全品100円と飲み放題2時間500円。そういう施策を打ってどれだけの集客があるのかを確かめたくて、だいぶ安いけど、それより来てくれているお客さん。たくさん来てくれるだけいいなと思って、そっちをメインに売り上げというよりもそこ(集客)をメインにやっている」

 ここまでして、人が来なければ、休業も考えていたそうです。しかし新規の客も訪れたといいます。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「前回のまん延防止でできなかったこととか、試したかったこと。今回のまん延防止で挑戦という感じでできたので売り上げはあまり取れていないが、そこは良かった」

 そんな中、6日に期限を迎えるまん延防止措置が、延長するかどうか、吉田さんは気をもんでいました。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「一応延びないという想定で、こちらは取り組んでいる。明けてくれるだろうと願っている。今度こそ開けてもらって静岡全体が元気になればいいな」

 期待を込める飲食店。一方で、食事をしに来た客からは、こんな意見も。

来店客20代(静岡市):「(感染者数が)そこまでまだ減っていないので、やっぱり周りの県と合わせて延長になるんじゃないかと思う。店とか閉まっている所が多いので解除して開いては欲しいけど、また増えて規制が続くのもな。やっぱりここで厳しく長くやった方がいい。黙食とかお一人様とかテイクアウトを使って飲食店は利用したい」
 
 取材をした1日の時点では、東京や大阪、愛知など10の都府県で、まん延防止措置が延長されると見られていました。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「まだ実際に伸びるかどうかも決まっていない状態で、もちろん伸びてほしくはないけど、そこまでに自分の店で何ができるかが一番重要だと思うので、来てくれたお客さん一人一人に、いい接客をして、いい商品を出すのだけは今考えている」

3月2日 水曜日

 翌水曜日。県議会で、川勝知事は…。

静岡県 川勝平太知事:「本県は、首都圏と中京圏に隣接しており、通勤通学をはじめ、ビジネスや観光など社会経済的な結びつきが強く、人的交流も活発な立地特性がある。この立地特性によって、新型コロナ感染症が日本で初めて確認されて以来、一貫して東西の近接都県の感染状況や感染拡大防止対策を把握したうえで本県独自の対策を実施してまいりました。引き続き県内外の感染動向を踏まえた適切な判断を心掛けるとともに、効率的な行政運営を図るために近隣都県との情報共有など適切に連携していく」

画像1: 3月2日 水曜日

 まん延防止延長の是非について、言及しませんでした。 県議会終了後、川勝知事は…。

Q.まん延防止等重点措置の判断について、今の時点でどう考えている?

川勝知事:「あすの正午が国への(回答)期限。今、専門の委員やデータを集めてどうするか、あしたの午前中には決めなければならない」

Q.判断材料は病床のひっ迫率?

川勝知事:「そうです、おっしゃる通り」

Q.病床のひっ迫率が若干低下傾向にあるが、どの辺はどう見ている?

川勝知事:「ギリギリまで見るということ、高止まりですから」

 県幹部の言っていた知事の会見は この日、開かれることはありませんでした。県庁内でも意見が割れていたのです。

県幹部A:「医療提供体制はひっ迫が続いている。病床使用率を見ると解除するわけにはいかない」

県幹部B:「高齢者施設や教育施設で感染が拡大している。飲食店では感染拡大が起きていないのに、まん延防止措置の適用で飲食店に制限をかけることが本当に効果があるのか」

県幹部C:「飲食関連業のみ長期間、制限がかけられている。経済も止めるべきではない」

画像2: 3月2日 水曜日

 県民からも様々な声が…

静岡市民70代:「もう2週間くらいは延長してほしい。ワクチン(接種)も進んでいなくて、3回目もまだ接種券が来なくて打っていない。それだけ静岡市は遅れているので、もうちょっと気をつけて少なくしてほしい」

静岡市民10代:「(まん延防止が)出ていても結局感染は減っていない。まん延防止の影響で学校に行けない。私は学校に行きたいと思っているから、できれば解除してほしいが、やっぱり(感染者が)増えていくと自分もかかる可能性が高くなるので、もうちょっとだけ延ばしてもいいかな」

 まん延防止措置を延長するかどうか。判断材料となるのが、病床使用率です。当初、県の方針を決めるとしていた今週水曜日の時点では、県全体で53.4%。判断の目安となる50%を上回っていました。医療関係者からも迷いの声が…

浜松医療センター 矢野邦夫医師:「まん延防止は飲食店がターゲットになっている対策だが、感染が起こっている場は高齢者施設・病院・保育所です。だから、まん延防止が直接有効とは思えない。そう思うとまん延防止を終了してもいいんじゃないかと思うが、今ここでまん延防止が終了になると、周辺の県、愛知県とか神奈川県の方から人の流れがやってくるんじゃないか。そしてそれがきっかけとなって、もし患者が増えた場合、今病棟はかなり厳しい状況で、ここで少しでも感染者が増えると、もう耐えられない。そこまで考えると、まん延防止が必要なのかな。なので、本当にまん延防止が必要でないのか必要なのか本当に議論が分かれると私も思っている。最終的にどうなるかは知事が決めることなので、その判断に従いたい」

3月3日 木曜日

 そして、Xデーとなった、3日の木曜日。

Q.きのう(水曜)までの感染状況を見てどう?

川勝知事:「高いですね」

Q.まん延防止措置の判断は?

川勝知事:「きょうこれから朝一番で会議を開いて、12時までには決める。皆さんには、午後1時半から午後の議会が始まるので、その前の時間をいただき、結果を報告したい」

 延長を要請するのか、解除を求めるのか。回答期限の正午ギリギリまで検討する意向を改めて示しました。

画像1: 3月3日 木曜日

 午後1時、インターネットでも生配信された川勝知事の会見。その様子をパソコンに映し、見つめる人が。

川勝知事:「まん延防止等重点措置の要請を、再延長の要請をすることに決定いたしました。きょうの正午が6日以降の延長をする場合の要請の期限でしたので、すでに要請は済ませたということで、そのご報告をいたします」

Q.どうでしょうか?

サンコートラベル 宮川憲代表:「まぁ、残念だけど致し方ないのかなという気はする。何とか、まん延防止が終了してくれればなっていう気持ちは持っていた」

画像2: 3月3日 木曜日

 静岡市にある旅行代理店。まん延防止措置の最終日とされていた6日の日曜日に合わせて、準備してきたこともあったといいます。

サンコートラベル 宮川憲代表:「一応、3月6日が終了ということを前提に春休みからゴールデンウィーク、初夏に向けてツアーを企画していて、6日に合わせて新聞の折り込みもチラシも入れる段取りで進んでいるので残念には残念だけど、こういう状況であれば致し方ない。ここの期間にはまっているツアーに関しては、もしかすると色んな施設とかも相談しながらツアーを中止せざるを得ないのかもしれない。」

 3月中は県内で観光するツアーを組んでいました。また、再来週末には3連休もひかえていて、期待していた面もあったといいます。

サンコートラベル 宮川憲代表:「小グループで家族単位で動く分であれば、まん延防止が出ても感染防止の対策は皆さんしっかりしていますし、バスもコロナ対策万全でいつも対応してくれているので、その辺ご理解いただいて、ワクチンの接種率も上がってくれば、ぜひ安心してツアーに参加してもらえれば」

 一方、解除を期待していた飲食店は…

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「またか…という感じ。(感染状況が)変わるのかな、この1週間2週間で、それがちょっと心配。終わるころにはまた延びるのかもという考えもしていかないといけない」

 影響が大きかったのは、方針決定のタイミングです。延長するにしても、水曜日には決断してほしかったと話します。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「1日違うだけで本当に、本当に違う。人員とかも含めて全部変更しなきゃいけないので、働いてくれている子にも迷惑をかけてしまう。今メニューを絞って営業しているけど、メニュー復活の準備もしていて、そういうものもまたゼロからになったので、本当に気持ち、もう少し早ければ、こっちも上手く対応できたのかなと思う」

 歓送迎会のシーズンでもある3月。飲食店としては、客足が戻ることを期待していたようです。

モガル静岡駅前店 吉田匠店長:「ちょっとしんみりした3月になってしまうなとは思う。来てくれているお客さんに対して、いい接客とかいい商品を出すことくらいしかできないので、まん延防止があけてからいいスタートが切れるようにお店で頑張っていきたい」

3月4日 金曜日

 飲食店に関わる人たちからも、ため息がもれます。

亀屋村越 大久保忍社長:「ほんと今まで厳しかったんだけど、もうどうしたらいいか分からない」

画像: 3月4日 金曜日

 新品のお酒でも賞味期限が過ぎ、廃棄せざるをえない状況になっていた酒の卸売業者。延長決定のニュースを、配達先の飲食店で見ていたそうです。

亀屋村越 大久保忍社長:「ここ2~3日、お客さんのところ(飲食店)回って、6日にあけるから、これから注文の荷物もどうしようという話をしていて、だけどこんな(感染)人数じゃ、解除されないかもしれないっていう話をしていたけど、思った通りに延長という形でお客さんと共に先行き不安だねって話をしていた」

 この日も飲食店からの発注は、酒が数本ずつ。解除されれば、朝からもっと多くの注文が入るはずだったといいます。さらに…

亀屋村越 大久保忍社長:「これだけ間に合わないで来ちゃった」

Q.本来なら7日から使う予定のもの?

A.「そうですね」

 延長が決まり、まず急いだのは、翌週配達を予定していた、お酒のキャンセル。今回は、メーカーの厚意もあり、余分な出費を防げたそうです。

亀屋村越 大久保忍社長:「「村越さんも大変だから、この日(木曜)までならキャンセルは可能だ」と。本当ならもうちょい早めに言わなきゃならないんだけど、こっちの都合も向こうの都合もあって、きのう(木曜)まで延ばしてもらった」

 それでも、また2週間は、これまでのように、少ない発注が続きます。仕事自体がないため、従業員も休ませなければなりません。

亀屋村越 大久保忍社長:「私たち酒屋も魚屋も八百屋もそうだけど、補償が少なすぎて、毎月どうしても赤字になってしまう。それが2年続くとやっぱり限界」

 21日まで再延長となった県内のまん延防止措置。2週間後の感染状況はどうなっているのでしょうか。