静岡市が「大井川利水関係協議会」に加わる動き これがリニア問題解決への第一歩になるのか
リニア問題に川勝知事が言及した一方で静岡市の難波市長も新たな考えを示しています。大井川の流域市町で作る協議会に参加の意思を表明。その背景にあるものとは。
川勝知事 17日:
「国策でよくJR東海のリニアを言うが、南アルプスは日本の国立公園だから、それを守るのも国策です」
17日、新年度初めてとなる静岡県の幹部職員会議で南アルプスに言及した川勝知事。
「リニア中央新幹線」の工事が沿線の都県で進む中、静岡県ではこの南アルプスでの工事めぐってこう着状態が続いています。
その主な要因が「水問題」です。
ところがここにきて、新たな動きが出てきました。
静岡市 難波喬司市長 静岡市役所 13日:
「流域という面で言うと静岡市も流域。ですから、大井川の流域で市町が作っているものに参加していないというのは普通に考えると変だなと思うので、そういう面から言っても当然そこには加わるべきだと思っている。
どういう立場で加わるかはこれから検討・整理が必要だが、加わらないという選択はない」
先週、就任後の臨時会見でこう話した静岡市の難波喬司市長。
大井川利水関係協議会に「加わる」考えを示しました。
そもそも、この協議会は県や大井川流域の市や町が2018年に設立したもの。
水の利用者の立場からJR東海に対し懸念や要望を訴えるものです。
現在、参加している自治体は島田市や牧之原市・川根本町など10市町。
県内11ある大井川流域市町で唯一、静岡市だけ参加していない状況です。
ではなぜ静岡市は、これまで加入していなかったのでしょうか。
静岡市が大井川利水関係協議会に入っていない理由
その理由が・・・
2018年6月の協定締結の様子
「田辺前市長と金子前社長の握手」
遡ること5年前。
静岡市はJR東海とリニア工事推進の合意書を交わしています。
その背景には、以前から地元住民が求めていた井川地区と市街地を結ぶ県道トンネルの建設をJR東海が全額負担で整備することがありします。
田辺信宏市長(当時)2018年6月:
「中下流域へも配慮して誠実に対応してほしいということを強く申し上げました。社長に約束していただきました」
ところが、川勝知事はこれに激怒。
静岡市が「抜け駆け」ともとれる動きをしたことで、県や他の流域市町との間に溝が生まれました。
静岡市以外の流域市町によって
大井川利水関係協議会が結成されたのは、
この2カ月後のことです。
島田市 染谷絹代市長 2018年8月:
「私どもはJR東海と直接的な交渉の窓口を持っておりません。ですから8市2町の思いを知事に託したい」
川勝知事 2018年8月:
「オール静岡で情報を共有しながらこの件についてなにしろ水は生活、工業、農業全てに関わることで、まさに命の水」
リニア問題で「オール静岡」で解決できるのか
今回、リニアに精通する「川勝知事の元部下」が静岡市の市長に就任したことでさっそく”変化の兆し”を見せ始めているの状況です。
川勝知事 県庁 13日:
「彼は副知事時代に利水関係協議会とか連絡協議会本部長として、全ての情報に精通しているですから、流域の静岡市を除く方たちで、利水関係協議会というのが作られているので、そこに目をつけられたのは、もっともなことだと思っていて、ぜひ利水関係協議会の会員の皆様とこれまでが異常な状態でした。静岡市が入っていないのは。これは三ツ峰落合トンネルの影響ではないかと思うが、突然にああいう発表があったので、ですから手放しでリニアをなさるJR東海のやっていることをそのままいいですよという、そういうスタンスでした。しかし、やっぱり水問題であるとか、自然環境の問題というのは極めて重要で、大井川の川根本町より流域側の人たちだけじゃなくて、上流はまさに静岡市の行政区なわけですね。ですから入っていないのは本当におかしいというのは、多くの人が思っていたんじゃないかと思う」
知事も静岡市の加入に前向きな様子です。
流域の牧之原市の杉本喜久雄市長は…。
牧之原市 杉本喜久雄市長 牧之原市 午後2時半ごろ:
「難波市長がどのような考えでそういう発言をしているのか確認していないので、知事とのスタンスをどうするのか、あるいはリニア問題についてどう対応するのかその辺が分からない中で私の方からそれについてイエスとかノーとか言う状況にない」
ところが、難波市長のこうした突然の発言に対し苦言も…。
静岡市議会の最大会派である「自民党市議団」の鈴木和彦会長は静岡朝日テレビの取材に対し…
自民党市議団 鈴木和彦会長:
「自民党市議団とリニア事業の推進について、政策協定を結んでいるのに事前に何の相談もなかった。加入自体は反対ではなく、静岡市はもっと関わった方がいいと思っている。ただ議会軽視は困る。もっと議会を尊重してほしい。議会のバックには市民がいるのだから。選挙で応援してきたのに…」
鈴木会長によると、難波市長はお詫びをした上で理解を求めたということです。
就任早々、議会から苦言を呈された難波市長。
リニア問題を”オール静岡”で解決できるのでしょうか。