【リニア】『部分開業』めぐり川勝知事とJRが「バトル」 静岡市長は知事をやんわり批判「静岡には止まらない、言及する必要ない」/今週の静岡

川勝知事「部分開業」主張

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静岡県 川勝平太知事(1月29日):「名古屋までも部分開業なんですね。全線開業以外のものは。途中までになると、部分開業です。まあですから、それ先行開業とか言って、部分開業とは言ってない。でも中身は部分開業ですね。ですから、それを全線開通するまでにどういう工程で、リニア工事を進めていくということは、今、誰も分からなくなりました」

 29日月曜日の川勝知事の定例会見。リニアに関する見解について、「部分開業」という言葉を連発しました。

静岡県 川勝平太知事(1月29日):「2027年までには南アルプスは出来ないと言っているわけだが、それ以外のところができるということ。そうすると、実験線が一番近い駅2つということもあるし、それから甲府から品川まで、これもできているということだから、それを営業しないんですか、ということはかなり疑問出てくる」

川勝平太知事
川勝平太知事

JR東海「知事にいささか誤解がある」

 品川から名古屋までを「2027年以降」に開業するリニア計画。当初の「2027年」から開業時期の表現が改められたことで、今、静岡県とJR東海との間に大きな溝が生まれているのです。

JR東海 木村中専務執行役員(1月24日 静岡市):「当社が進める中央新幹線について、静岡県知事のほうから様々な発言があって、いささか誤解がある、私どもは大変困惑をしている状況」

JR東海 木村中専務執行役員
JR東海 木村中専務執行役員

JR東海 澤田尚夫常務執行役員(1月24日 静岡市):「県の事務方にいろんな情報は伝えている。伝えているが、なかなか知事の発言には反映されていないので困惑している」

JR東海 澤田尚夫常務執行役員
JR東海 澤田尚夫常務執行役員

川勝知事、JR東海に反論

 先週、これまでの川勝知事の発言に対して「困惑している」と反論するような会見を開いたJR東海。知事はこのJR東海の「反論」に「反論」しました。

静岡県 川勝平太知事(1月29日):「別に事実を誤認しているわけではないでしょ。事実誤認という言葉が一人歩きしないようにしてください。何の事実を誤認しているのか明確に言って質問してください」

 そして、この根本にあるのが、リニアの開業時期をめぐる「部分開業論争」なのです。

JR東海 丹羽俊介社長(1月18日):「部分開業については従前から申し上げている通り、これを行う考えはございません。仮に限定的な区間だけ開業する場合があっても、車両基地や指令設備の整備など、開業のための多くの設備をセットで完成させる必要があったり、試運転や運営体制をはじめ、確認すべきことが数多くある」

JR東海 丹羽俊介社長
JR東海 丹羽俊介社長

 これまでJR東海が頑なに否定してきた“部分開業”。これに対し、川勝知事は29日月曜日の会見で疑問を投げかけたのです。

静岡県 川勝平太知事(1月29日):「なぜ2027年以降であるかの説明が、静岡工区が遅れているためだということだったので、言い換えると2027年までに東京から山梨まで、また長野から愛知までは完成できるということ。しかし、それは使わないと。なぜかというと、名古屋までつながっていないから。どう考えますかね? ですから、考え方によっては、甲府から品川までサービスしたらいいのでは、という意見が出てくるのもありえる」

 つまり、静岡を挟んで東西のエリアではリニアが運航できる状態になるため、だったら営業すれば良いというのが川勝知事の考え方です。

川勝知事の主張
川勝知事の主張

JRの目的は「のぞみ」機能のリニアへの移管

 ただ、JR東海側は先週開かれた川勝知事に対する「反撃会見」で、“リニアを開業する目的”をあげています。

JR東海 木村中専務執行役員(1月24日 静岡市):「やはり新幹線と交差している品川‐名古屋が、第1局面として行って、これも最小単位と言えると思うが、その上で、品川‐名古屋‐大阪を結んでいくということで、この東海道新幹線と交わらないような部分で部分開業を行っていくというのは、そもそも、その機能は私どものこれを進めてる目的からしても、そういったことはないということ」

リニア開業の目的
リニア開業の目的

 リニア新幹線の開業目的の1つに、現在の東海道新幹線の「のぞみ」機能をリニアに移管する狙いがあります。つまり、これは品川~名古屋間を通すことで初めて意味を成すというのが、JR東海側の考え方です。

 一方で、川勝知事は静岡工区以外の工事も、2027年に間に合わないのではと指摘しています。JR東海によると、去年9月末時点で全線の用地取得率はおよそ70%。発生土の活用先については80%が確定していて、残りの複数の発生土については協議が進められている段階です。

知事「静岡工区以外にも厳しい工区」

静岡県 川勝平太知事(1月29日):「まだ私は土地の取得が完成してないと思うが、それが2027年までにできるとおっしゃってる。どういうふうにして、その車両基地が完成、あと3年でできるんですかというのは当然の疑問。できるという断定ではなくて、どういう工程でなさるんですかという、これもひとつの疑問」

さらに…。

静岡県 川勝平太知事(2月2日):「静岡工区以外の一部の工区についても工区が厳しく、タイトになってきていると社長さんが述べておられて、工事全体の進め方を再検討しているとのことでございましたが、日本全体に関わることなので、東京から名古屋経由して大阪までというのを、どういう工程で進める予定ですかというのは誰も知りたいと思うんですね。どうでしょうか」

 実際、川勝知事が部分開業を主張している神奈川県では、去年9月末時点で車両基地の用地取得は全体の7割の状態で、山梨県内でも駅の工事はまだ始まっていません。

静岡・難波市長「静岡に止まらない。開業時期に言及する必要はない」

 こうしたJR東海と川勝知事との対立について1日、かつての部下、静岡市の難波喬司市長が言及しました。

静岡市 難波喬司市長(1日)
Q.(川勝知事とJR東海の)考えの不一致については?
A.「開業時期は、JR東海が自社の事業としてやることなので、いつどういう方法でどう開業するかはJR東海が決めること。ただ、これは社会的に影響のある事業なので、地域の要望というのは聞いていただくというのが大事だと思うので、ただし、静岡には止まらないので、リニアが。静岡の声を聞いても何も聞くことはない」

 このように指摘。さらに、静岡県側に対して再度“けん制”しました。

静岡市 難波喬司市長(1日):「繰り返しにはなるが、静岡は止まりませんので、リニアが。開業時期についてあまり言及する必要はない」

静岡市 難波喬司市長
静岡市 難波喬司市長

 今後も長引きそうなリニア問題。静岡の問題が未解決の中、部分開業をめぐる「論争」は今後も続きそうです。

    (2月3日放送)