【特集 東日本大震災から11年】巨大地震の予兆、その時どう行動する?南海トラフ地震臨時情報への理解向上のために
「南海トラフ地震臨時情報の認知度は低い」
1月22日、深夜に九州・日向灘で起きた地震。大分県や宮崎県で震度5強を観測。南海トラフ巨大地震の想定震源域での大きな地震に緊張が走りました。
気象庁アナウンス:「現在の所南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていません」
巨大地震発生の可能性が高まった時に出される「南海トラフ地震臨時情報」の発表は見送られました。今回の地震はマグニチュードは6.6。6.8以上であれば臨時情報が出されることになっていました。もし発表されていたら・・・。
県危機政策課
松村昌広 主幹:「情報の持っている意味が分からず混乱する可能性があった」
「南海トラフ地震臨時情報ということばの認知度は大分低いと思っている」
港付近の防災拠点は…
2019年に運用が始まった「南海トラフ地震臨時情報」は、想定震源域で、大規模地震が発生する可能性が高まった場合、気象庁が発表します。情報は「調査中」から始まり、その後「警戒」か「注意」、あるいは、「調査終了」のいずれかの判断が示されます。「警戒」となった場合、津波の浸水が想定される事前避難の対象地域では1週間程度の避難が求められます。揺れてからでは避難が間に合わない人たちの命を守るためです。
事前避難対象地域となっている御前崎市御前崎地区。港のすぐ近くに防災の拠点、地区センターがあります。しかし・・・
石田和外アナウンサー:「こちらの避難所の案内、『地震津波災害を除く』とあります。というのも、県の想定ではこの場所、5mから10mの津波の浸水が想定されているんです。10mとなるとこの建物が津波で浸かってしまうほどの高さです。」
一番の懸念は「高齢者の避難」
センター長として働く植田一さん。地域防災の中心です。
御前崎地区センター
植田一センター長:「防災の拠点である地区センターがこういう真っ赤なところにあるのは困るもんですから」
危機感を感じていた植田さんは、去年県が開いた南海トラフ地震臨時情報のワークショップに参加しました。地域の自治会長ら40人ほどが集まり、それぞれが事前避難の行動計画を考えました。
植田センター長:「このワークショップに参加して個人が(事前)避難計画を立てることは重要と感じた」
植田さんの一番の懸念事項、それは「高齢者の避難」です。
植田センター長:「高齢者や障がい者は避難するときにすぐに対応できない面がある 何日か前に情報が出て」「予め避難することが大切」
御前崎地区の津波浸水エリアの住民はおよそ600人で、そのうち75歳以上は70人ほど。事前避難所は御前崎小学校ですが、70人がこの体育館で1週間にわたって生活するのは現実的ではありません。
植田センター長:「親戚の所へ行くとかという方法をまず考えてもらってどうしてもない場合には、こちらに来ていただくという形になる」
長引くコロナ禍も悩みの種に
さらに長引くコロナ禍も悩みの種。地域の津波避難訓練はこの3年ほど出来ていません。御前崎地区は海岸沿いに海抜40m近くの高台があるため、津波から避難する場合は、いくつかある避難ルートを登らなければなりません。夜間の避難訓練も予定していましたが、2年近く延期となっています。
植田センター長:「意識が薄れている中でまたこのコロナで出来ない、一番悩むところ」
1月の日向灘の地震で、仮に臨時情報が出ていたら、住民はどんな行動を取ったのでしょうか。
植田センター長:「地域住民に行きわたってない、いざ出た時に行動できるかっていうとなかなか難しい」「意識を高める方法を探っていかなければいけない」
南海トラフ地震臨時情報は、津波の危険がある地域にいる人たちには予めの避難を求め、それ以外の人たちには通常の生活を続けながら地震への備えを万全にするように呼びかける情報です。情報への理解を高めることが、地域の防災力の向上につながります。
県危機政策課
松村昌広主幹:「本当にいいのはその情報が出た時に慌てていろいろな備蓄品を買い込んだりとかしないように、平常時から備えをしておけば調査中が出てもすぐに慌てる必要はない」