『天神屋』の1日は夜12時から始まる…静岡の老舗、その味のヒミツに迫るそして知られざる野望とは?
片寄翔太アナウンサー:「静岡を代表するローカルチェーン天神屋にやってきました!見てください!しずおかおでんにおむすび、お弁当といろいろなおいしそうなものが売られているのが分かります。きょうは長年愛され続ける天神屋の秘密に迫ります!」

熱々のおでんに、彩り豊かな惣菜まで。店内に入るだけで食欲がかき立てられる、静岡が誇るローカルチェーンの天神屋。なかでも名物と言えば、揚げ玉と刻みネギを醤油で味つけした「たぬきむすび」。シンプルながらも絶妙な味わいのこのおにぎりは、静岡県民だけでなく、県外の人からも愛される天神屋の看板メニューです。
岐阜から:「向こう(岐阜)にはないので、どういうものかというのもあって。念願と言えば念願」
浜松市民:「幼稚園の頃から好きで、お母さんに絶対買ってもらって食べてみたいな。ずっとファンです、これは。静岡の誇りだと思う」
片寄アナ:「天神屋の人気商品と言えば、このたぬきむすびだと思うんですが、ここまで人気が出たその秘密って何なんですか?」
天神屋 野尻崇生取締役:「はい。それが知りたければですね、夜12時に工場に来てください」
片寄アナ:「夜12時ですか?12時に行って大丈夫なんですか?」
野尻さん:「(意味深に)そうですね、それは…お楽しみです」
意味深に笑う野尻さん。いったいどういうことなのか!?

夜12時の天神屋には…
片寄アナ「さあ、夜12時になりました。言われた通り工場に来たんですが…あ!明かりついてますね! 野尻さんもいらしゃって」
野尻さん「こんばんは」
片寄アナ「夜12時に工場に来たが?」
野尻さん「そうですね。天神屋の始まりはこの時間から始まります」
一体どういうことなのか。早速工場の中へ。
片寄アナ「目の前でお米を使った作業をされているが、こちらはどういった工場?」
野尻さん「こちらはおむすびを中心に、お寿司やこちらのラインではお弁当を作ったりしている」
片寄アナ「何店舗分こちらで作っている?」
野尻さん「自社店舗だと30店舗分だが、卸先も含めると約70店舗分ぐらいは作っている。」
こちらが、天神屋の心臓部ともいえる製造工場。店に並ぶ全てのおにぎりは、この場所で開店前の夜中から作られていて、その量は平日であればおよそ8000個、土日であれば1万個以上に及びます。

「混ぜ」作業は人の手で
片寄アナ「これはどんな作業をされている?」
スタッフ「今、たぬきむすびのご飯を混ぜているところ」
野尻さん「天神屋のこだわりとして塩を混ぜたり、たぬきむすびの元を混ぜたりというのは、人の手でやっている」
たぬきむすびの味を決める重要な工程がこの「混ぜ」作業。具材となる天かすやネギをムラなく均一に混ぜこむのは、創業当時からすべて人の手によって行われています。実は天神屋が何よりも大切にしているのが、手作りによる温かさ。そのため、おにぎりだけでなくお寿司やお弁当の製造も、本来は機械化できる部分があっても、あえて手作業を残しているといいます。

この道28年の大ベテラン細沢さん
「混ぜ」をメインに担当している細沢さんは、なんとこの道28年の大ベテラン。作業のコツを聞いてみると…。
天神屋 細沢良子さん:「毎日ご飯の炊き具合が変わるが、手触りでわかるので。柔らかいなと思ったらふんわりと、白飯をふわっとするとおいしくなる。もし固い場合は少し粘りを出したいのでよく混ぜて、ご飯を切るようにする。その辺は手で触ると、長年やっているとわかる」
細沢さんの指先にしかわからない、熟練の経験によって日々作られているたぬきむすび。今回はご厚意で、握りたてを一ついただけることに…。

片寄アナ「いただきます。ん-!醤油が均等に混ざっているので、お米にも醤油の味が染みわたっています」
野尻さん「作り手の思いというか、手の温もりというか、そういうものが伝わっておいしさになると信じている」
こうして日々、職人たちによって作られる手作業のおにぎり。製造には当然時間がかかりますが、細沢さんたちは毎日、店舗配送が始まる朝6時ごろまでには作業を完了させます。
片寄アナ「朝6時までに、毎日むすび終わらないといけないんですか?」
野尻さん「そうですね。その日に作ってその日に召し上がっていただくのが天神屋のおむすびなので、そこはずっと崩さずにやっている」
手作業と効率化を融合し、なるべく出来立てをお客さんに届ける。それこそが、70年間愛され続ける味を生み出す秘密だったんです。

もうひとつの名物“静岡おでん”
そして、天神屋のもうひとつの名物と言えば…“静岡おでん”です。
天神屋曲金店おでん担当 石田みつぎさん
片寄アナ「おはようございます。すごいおでんのいい香りがしますね。これは何をやられている?」
石田さん「おでんの大根を、もっと味と色を付けてから出したいので、煮ているところ」
天神屋の全商品の中で、ダントツの売り上げを誇っているのが静岡おでん。2021年度には「静岡おでん」の販売数日本一にも輝いたことも。今回はそんな天神屋のおでんの仕込みから秘密に迫りました!

片寄アナ「今何をしていた?」
石田さん「おでんのつゆの味を確かめている。どんどん味が変わってしまうので、常においしい味でいるようにこまめに確かめている」
実は天神屋のおでんは、味が決められたつゆに具材を入れたら完成…というわけではありません。静岡おでんの味の決め手となる牛すじや、昆布、練り物など25種類のおでん種を鍋の中で煮込むことで、溶けだしたそれぞれのうまみが合わさり、初めて天神屋のおでんが出来上がるんです。
当然、煮ている時間や量などによってその味は複雑に変化。それを天神屋では店舗スタッフの経験と感覚によって絶妙にまとめ上げ、いつも通りの味を毎日提供しているんです。

天神屋曲金店おでん担当 石田みつぎさん:「大変と言えば大変だが、こうやってたくさん入っているのを見るのは楽しい。まずいものをお出しするわけにはいかないので」
そんな一流のおでん職人、石田さんが絶対におすすめだという具材が富士の白雪。見た目はじゃがいものようですが、実はもちっとした皮の中に、おでんのつゆがよくしみ込んだ肉団子が入っているという、天神屋でしか食べられない一風変わったおでんなんです。
片寄アナ:「いただきます、熱そう…。熱!熱!うん!すごくプルンプルンでもっちもちで弾力があります。おいしいです。お肉にショウガみたいなものが入っていて、このショウガがいいアクセントになっていてさっぱりしている」

天神屋の野望とは
もともとはひな人形専門店として始まった天神屋。それが70年の時を経て県内を代表するローカル弁当チェーンとなりました。
そんな天神屋には、今ある野望が…。
天神屋 野尻崇生取締役:「静岡おでんを海外で展開したいという思いがある。アジア圏のほうにおでんの文化があるので、静岡おでんでチャレンジできないかとやっている」
片寄アナ「静岡のおでんを海外で食べられる日も近い?」
野尻さん「はい」
片寄アナ「いつぐらいに海外で見られる?」
野尻さん「そうですね…。来年ぐらいに見られればいいんじゃないですか」
片寄アナ「来年ですか!かなり早いですね、あと半年後ぐらいには来ますけど」
野尻さん「何かしらやっているんじゃないかと思う」
