スプリンクラーから大量の水…被害は億単位 裾野市長「原因が明らかでなく公金拠出できない」 第三者による可能性あるとして警察に相談 /今週の静岡
27日、会見を開いたのは裾野市。事の発端は1カ月前にさかのぼります。
裾野市民文化センターの天井から大量の水
翌日の演奏会を前にリハーサルを行うオーケストラ。これは裾野市民文化センターの大ホールで撮影された光景です。ところが本番当日、開演まであと1時間に迫る中で、思いがけない事態が彼らを襲いました。
突然スプリンクラーが作動し、舞台の天井から大量の水が降り注いだのです。これにより、演奏会は急遽中止に。
シンフォニエッタ静岡 中原朋哉さん(13日):「滝のような水が降ってくる…。ちょうど前の日が台風で、そういう状態の雨が降ってきて」
団員はいくつもの傘を使って、降り注ぐ水から楽器を守ろうとしたものの、オーケストラと演奏家にとって「命」とも言える楽器や楽譜は水浸しに。億単位の被害が出てしまったといいます。
さらに、出演者を含む60人のうち、半数がずぶ濡れになり、楽器を避難させる際に5人が転倒してケガ。そのうち1人は骨折をしました。
スプリンクラーはなぜ作動したのか? 市によると、業者からは「機器に異常や故障などはなかった」と報告があったといい、人の手による作動の可能性も考えられることから、裾野市は、その日のうちに警察へ相談したといいます。
一方で楽団側は裾野市などの対応に疑問を投げかけています。
オーケストラ「このままだと泣き寝入り」
シンフォニエッタ静岡 中原朋哉さん:「市の発表が僕らからすると、伝聞が多いなと…」
「結局、当初から裾野市なり、その指定管理者(民間の企業)から具体的に何も示されない。その後の対応も何にもないんで、これ黙っていると、このまま泣き寝入りになるんじゃないかなと思って」
今回、トラブルが起きた「裾野市民文化センター」は裾野市の所有物ですが、管理・運営は、都内にある民間の企業が行っています。管理会社は番組の取材に対し、「警察の捜査にできる限り協力している。故障なのか人為的な事件なのか、捜査が終わらないと動けない部分もあり、捜査の成り行きを待っている状態」と話しています。
被害から1カ月。警察や点検業者による調査が行われてきましたが、いまだ、原因は明らかになっていません。裾野市は11月上旬に臨時議会を開催したのち、第三者による事故調査委員会を設置する予定です。
スプリンクラーの仕組みは
問題のスプリンクラーは、どのような仕組みで作動するのか?現場を取材しました。
梅田航平記者(27日):「こちらは被害があった裾野市民文化センターの大ホールです。スプリンクラーを起動させるには、舞台の両脇2カ所にあるこちらの起動弁を手動で操作させる必要があるということです」
スプリンクラーの起動弁は4つあり、レバーを下げるとそれぞれに対応したエリアのスプリンクラーが起動するという仕組みになっています。今回は①と③のエリアにあるスプリンクラーが作動しました。起動弁は舞台裏の脇に2カ所あり、どちらも同じ仕組みとなっています。
Q.楽団の方は、特に(作動した際)不審者など見ていないと言ってるんですが、第三者が入ってきて(スプリンクラーは)簡単に操作ができたりするような仕組みなんでしょうか?
裾野市 及川涼介副市長:「一般的なものですので、ある程度はわかるかと思いますが、ただ、その作動盤の位置でしたり、実際にそれをレバーを操作すれば作動するということを認識していなければ、操作できないということもたしかだと思います」
Q.一番気になるのが、なぜスプリンクラーが作動したのかというところだと思うんですが、実際の操作パネルというのは、何か動いている、誰かが動かした状態だったんでしょうか?
裾野市 勝又明彦教育部長:「扉を開いて操作レバーを動かすという操作が必要になるんですけれども、実際にそのレバーについては閉じた状態であったという風に確認をしています。スプリンクラーの操作レバーですけれども、通常は閉じた状態、横になっています。それを一回縦におろして開く状態にして戻したとしても、スプリンクラー自体はもう止まらないということになります。それでは、今回どうやってスプリンクラーを止めたかといいますと、その操作盤の横にポンプ室がございまして、ポンプの電源を停止したということでございます」
「人的な操作の可能性もあり、軽々に謝罪は出来かねる」
現時点でスプリンクラーが起動した責任の所在が明らかになっていないことから、裾野市は楽団への謝罪を直接行っていません
Q.指定管理者のことわかりますが、それのことを差し置いても、もう少し何か彼らと直にやって何かというと、そういう考えはないでしょうか?
静岡県裾野市 村田悠市長:「第三者による人的な操作の可能性もある中で、市の責任者の立場として軽々にですね、謝罪は出来かねると思っております。このことについても被害を受けた皆様に対し、非常に心苦しく感じているところです。一刻も早くですね。原因を究明することが私の使命だと思いますので、これからもしっかりと努めてまいりたいと思います。わたくしは市民の税金を預かる立場として、原因が明らかにならない以上、公金の拠出はあり得ないと考えておりますので、先ほど来申し上げておる一貫した態度は、変えるつもりはございません」
今回、会場に設置されていたピアノが浸水するなど、裾野市側にも被害が。ピアノの修繕にはおよそ2080万円、舞台照明だけでも6000万円あまりが必要だとされていて、必要最低限の修繕費用だけでも裾野市側の被害額はおよそ1億5900万円に上ります。現状、大ホールを再開する見通しはたっていません。
突然スプリンクラーが動いたのは、誤作動による事故なのか、それとも、第三者の犯行による事件なのか。そして、数億円にも及ぶオーケストラの被害への損害賠償は一体、誰が責任を負うことになるのでしょうか。
(10月29日放送)