荒茶生産量トップ陥落の『静岡茶』4年で輸出1.5倍めざす 背景に海外の“抹茶ブーム”外国からの視察も
林輝彦アナウンサー(静岡茶市場 20日):「新茶の良い香りが会場に漂っています。取引が成立すると手締めの音が響きます」
静岡茶市場で行われた、新茶シーズンの訪れを告げる「初取引」。取引が成立すると、売り手と買い手、茶市場の職員が「手打ち」と呼ばれる合図を出します。
取引されたのは、緑茶や紅茶など、合わせて1766キロ。買い手は、新茶を手に取り、香りや品質などを見極めていきます。そんななか、毎年注目されるのが「最高値」での取引。今年も、静岡市清水区の両河内地区で生産された、「高嶺の香(たかねのはな)」に最高値がつきました。その価格、なんと1キロあたり118万円。去年より30万円高い値段で、47年連続です。
落札した茶商 和田長治商店 和田夏樹社長:「きょう見た荒茶の中で一番、清水らしくきれいで静岡らしく、良い香りがしたお茶だったので、それに見合う金額をつけた。本当においしそうなお茶だなと思った」
静岡茶市場によりますと、今年は3月から雨が降り、寒の戻りもなかったため、茶葉の生育は順調だということです。県内の新茶は、5月上旬にかけて出荷のピークを迎えます。
静岡県 鈴木康友知事:「この静岡茶市場70周年という記念の年を迎え、新しいチャレンジをしていくということで、なんと言っても静岡茶自体のブランド力を向上させることが必要」
佐藤可士和さんとタッグ、静岡茶のブランド化をさらに加速
荒茶生産量で、全国1位の座を鹿児島に奪われた、静岡茶。ユニクロのロゴデザインなどでも知られる佐藤可士和さんとタッグを組み、静岡茶のブランド化をさらに加速させようとしています。
2月、県が新たに取りまとめた、「静岡県茶業振興計画」。2年後の2028年までに、県内のお茶の輸出額を2024年のおよそ1.5倍となる、154億円まで拡大する目標を設定しています。背景にあるのが、海外での空前の“抹茶ブーム”です。
煎茶から「てん茶」への転作支援…“稼げる茶業”へ
抹茶の原料となる「てん茶」の需要が高まっていて、県は煎茶から「てん茶」への転作を支援することで、生産量を拡大し、“稼げる茶業”への構造転換を図りたい考えです。80年以上煎茶を作ってきた富士市の茶農家でも、すでに動きが…。
荻野製茶 荻野政治さん(富士市):「ここがうちの“山のお茶”と言われているところですね。2ヘクタールあるんですよ。これをすべて抹茶に切り替えました。去年までは全部煎茶だったんですけど、今年の一番茶からすべてネットを被せて、「てん茶」になります」
およそ6ヘクタールの茶畑を手掛ける、荻野製茶。「やぶきた」「さやまかおり」「つゆひかり」の3品種を栽培しています。今年から、ごく一部を除いて、ほぼすべての茶葉を、煎茶から、抹茶の原料となる「てん茶」用に切り替えました。
荻野製茶 荻野政治さん
Q.煎茶からてん茶に切り替えることで変化は?
A.「収穫量が全然違います。いい煎茶を取るには、ものすごく「みるい(=若い)」お茶でなければならないんですよ。ただ、「てん茶」の場合は、(茶葉を)結構伸ばしてもいいんです。今回収穫量は倍になります。なおかつ値段が安定している。近年は抹茶ブームにものすごく拍車がかかって、世界的ブームになっていて、それに乗っかった形」
収穫量はおよそ12トンを見込んでいて、製造した「てん茶」は、すでに輸出仲介業で実績のあるタイを中心に、今後アメリカも輸出先として開拓したい考えです。
農林水産省によると、抹茶を含む緑茶の輸出量は、ここ10年でおよそ3倍に増加。その背景には、海外での日本食ブームや健康志向の高まりなどがあるといいます。
外国からの視察団も「セボーン」
今や世界中から注目される、“日本のお茶”。その現場を見ようと、やってきたのは…。
能地優アナウンサー:「静岡茶を求めて、フランス人を乗せた観光バスが今到着しました。ようこそ。ビアンブニュー」
バスから続々と降りてくるのは、フランスからの観光客。その数、総勢17人。日本を観光するツアーの一環で、茶畑の見学に訪れました。荻野製茶では、およそ5年前からインバウンドのツアーを受け入れていて、外国人見学者は、年間800人以上にのぼるそうです。茶畑に到着すると、さっそく…。
フランス人(女性)「抹茶はなぜそんなに値段が高いのですか?」
フランス人(男性)「下の方の葉は、お茶にはしないのですか?」
質問の嵐です。抹茶の製造に、興味津々といった様子。
フランス人(女性)「初めて茶畑に来たのですが、とても美しいと思います」
茶畑をバックに、三味線の演奏と茶娘の踊りでおもてなし。能地アナも手遊びに参加させてもらい、交流を図ります。
フランス人(女性)「メルシーは、日本語で何て言うの?」
能地アナ「ありがとう」
フランス人女性「アリガトウ」
日本流の、おもてなしの後は。
茶娘:「今から皆様には4種類のお茶を楽しんでいただきます。日本の正しいお茶の淹れ方をお伝えしますので、皆さん一緒にやってみましょう」
まずは、煎茶から。初めて嗅いだフレッシュな茶葉の香りに、思わず笑みがこぼれます。しかし、慣れない急須に、お湯をこぼしてしまうハプニングも。
続いて、ほうじ茶に玄米茶も、飲み比べ。あまり口に合わなかったのか、渋い表情を浮かべる人も。そして、最後は…。
茶娘「抹茶オレ~」
フランス人「アリガトウ」
静岡の抹茶に、牛乳を混ぜて、海外の人にも飲みやすい“抹茶オレ”で提供。一口飲んで、この表情です。
フランス人「スペシャル」
中には、一気に飲み干す人も…。
フランス人(男性)「グー!」
フランス人(男性)「この場所に来て畑も見て、どのような思いで作っているのかを知りました。その上で、試飲することで、よりおいしく感じました」
フランス人(女性)
Q.セボーン?
A.「セボーン(おいしい)」
フランス人(女性)「私たちは、様々な種類のワインを味わい、ワインの飲み方や見分け方は知っています。でも、お茶については何も知りません。素晴らしい経験で、とても気に入りました」
よほど気に入ったのか、粉末の抹茶をお土産として購入。抹茶だけでなく、玄米茶に煎茶、ほうじ茶まで、試飲したすべてのお茶を、大量に購入する人も…!
荻野製茶 荻野政治さん:「海外の人がこれほどまでに日本のお茶に興味を持っていただいているというのにびっくりしている。抹茶で集客して煎茶をアピールしていく、そのような形で日本茶をもっと海外の人にわかってもらいたいなと思います」