袴田ひで子さん 93歳パリへ行く(3) 死刑廃止訴え世界中の人へスピーチ マクロン大統領と握手も【袴田事件】
袴田ひで子さん(93)は、フランス・パリ滞在2日目となる6月30日は現地時間の午前、ラジオ・フランス本社で死刑廃止を訴えるフォーラムでスピーチを行った。聴衆は世界130カ国から訪れた約1300人。この日は奇しくも、弟の袴田巖さん(90)がえん罪に巻き込まれた清水市一家4人殺害事件、いわゆる袴田事件が発生して、ちょうど60年の節目に当たる。スピーチに立つ前、ひで子さんに心境を尋ねると「緊張なんかしていないよ。屁の河童だよ」と笑って答える。続けて「(事件発生から)60年ですよ。巖が事件に巻き込まれたとき、私は33歳だったが、今は93歳。長いと言えば長い」としみじみ述べた。
そして壇上に上がると、背筋を伸ばし、よどみなく語り始める。「私の弟は殺人犯、死刑囚として47年7カ月拘置所に収監されていました。見えない権力に真実を求めて58年闘い、再審無罪が確定しました。なぜこんなに長くかかったのでしょうか」と問いかける。そしてその要因として、再審の在り方を挙げた。「再審の扉は『開かずの扉』と申しまして、日本ではなかなか進みません。再審法に不備があるということで、今再審法改正の議論が行われています」と現状を説明した。
さらに、死刑についても触れ、「巖は、いつ死刑執行されるかと、毎日恐怖の生活をしていて、とうとう精神に異常をきたしました」と紹介。続けて「弟だけ助かればいいという問題ではありません。日本ではまだ死刑制度が残っています。死刑制度がこの世界の果てからも、皆さんの前からも、なくなることを切に願っています」と締めくくると、会場からは大きな拍手が送られた。
スピーチを終え、ホールの外に出たひで子さんのもとに、さまざまな国の人が訪れ、「スピーチに感動しました」と声を掛けたり、握手を求めたりしていた。大役を終えたひで子さん、午後は、同じラジオ・フランス本社で行われたマクロン仏大統領のスピーチを聞いた。マクロン大統領は、演説を終えると段を降り、ひで子さんとがっちり握手。さらに肩に手を差し伸べ「あなたがしてきた素晴らしいことを、私はよく知っています」と声を掛けた。ひで子さんは「日本には今も死刑制度が残っています。どうかお力をお貸しください」と答えていた。
ひで子さんは、あす7月1日、フランスの中高生や若者との対談、交流が予定されている。
(峰島孝斉)