180℃の継承~浜松・天錦三代の天ぷら③ 「店を潰したくない」 三代目が受け継ぐ“油に指を入れる技”と55年の味

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 浜松で人気の天ぷら店「天錦」。ある日の朝7時。お店を訪ねてみました。

 「おはようございます」

 親子三世代で、この日の営業に向けた、仕込みに励んでいました。

Q:これは何ですか?
利幸さん「これはね、今、シイタケと昆布が入っています。だし昆布ね。丼つゆです」

 そこに、かつお節。たっぷりの砂糖を加えます。

「旅のお客さんが多いんですよ。疲れてくるから、甘めのほうが好まれるんじゃないかなと思って」

 しばらく火にかけた後、丁寧にこせば丼つゆの完成です。

 二代目の幸司さんは、のりの天ぷらを揚げて。三代目の幹汰さんはエビの仕込みを任されていました。殻を剥いたら、一匹ずつ丁寧に、背ワタを取ります。

幹汰さん「少ないと170匹とか」
Q:この作業は毎日?
A.「毎日です。夜更かししていると眠くなります。同じ作業なんで。大事な仕事はほとんど地味なんで、手を抜かずに、一個、一個丁寧にやるのを心がけています」

 エビの仕込みが終わると。おじいちゃんの代から、50年以上使い続けているという鍋を、洗っていました。

幹汰さん「朝と、お昼終わりは、使った鍋を全部磨きます。調理器具きれいなほうがカッコいいですよね。汚い鍋でやっているよりは、ピカピカの鍋で揚げているほうが、美味しく感じると思います」

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 そのころ、利幸さんは。朝ご飯を作っていました。

利幸さん「焼き鳥の卵とじ。」
Q:好きなんですか?
利幸さん「これね、簡単でいいですよ。美味しい」
幹汰さん「週4回食べています」

 仕事前に、定番の朝ご飯を、一気にかきこみます。幹汰さんはというと。

Q;何ですかこれ?
幹汰さん「キウイです」
Q:焼き鳥は食べない?
幹汰さん「僕、朝は食べないです。落ち着いちゃうんですよね。それが嫌で、ランチ終わるまではがっつり食べないです」

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 そして…。作務衣を着て、鉢巻きを巻いたら。午前11時。お昼の営業がスタートです。

幹汰さん「いらっしゃいませ、おひとり、どうぞ。」

 しばらくすると、店内は、あっという間に満席に。お昼は、天丼のみの営業です。天ぷらを揚げ始めると、幹汰さんの表情が変わりました。天ぷらの揚げ方は、見よう見まねで身につけたそうです。そして、お店の名物、卵の黄身の天ぷらは…。

 おじいちゃんから受け継いだ、あの伝統の技で揚げていました。

幹汰さん「手は全然、やけどはしていないです」

Q:本当は熱い?
幹汰さん「たまに熱いときあります。熱いときありますけど、歯をくいしばってやります」

 そんな幹汰さんを、家族全員でサポートしています。店の奥では、おじいちゃんの利幸さんが、お皿を洗っていました。

利幸さん「一生懸命洗っています」

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 天ぷらを盛り付けたら、たっぷりの丼つゆを。そして、フタをくるりと、一回転させながら、かぶせ、余分なつゆを切って仕上げます。この技も、おじいちゃん譲り、なかなかの腕前のようです。こちらが、幹汰さんが作った天丼。お昼は1500円でいただけます。大葉や、キス、エビの天ぷらは、どれもカラッと仕上がっています。卵の黄身の天ぷらは、中が半熟で、見事な揚げ加減です。

 おじいちゃんが作った、天丼と比べると、特に違いは無いように見えますが、実は、幹汰さんなりの、ちょっとした工夫が。

幹汰さん「衣が違いますね。衣の濃さが違います。僕は割とランチなので、ボリュームが欲しいので、ちょっと厚めの衣で。おじいちゃんのは、夜お酒飲みながらなので、けっこう薄い衣、かなり薄めの衣で」

 2人のエビ天と比べてみると、確かに幹汰さんの方が、衣が厚めのようです。三代目・幹汰さんが作った天丼に、お客さんたちは?

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 こちらは、通って2年になるという男性。

Q:どれぐらいの頻度で来ている?
A.「週1ぐらいですね。夜のおじちゃんのも美味しいけど、私には違いがわからないぐらい美味しく揚がっています」

 こちらは、通って30年になるという常連客。
客「おじいちゃんもそうだし、お父さんもそうだし、息子さんもそうだし、多少、衣の感じとか味は違うんですけど、美味しいです」

 お客さんからの評判は上々。しかし、おじいちゃんからは、厳しい指摘が。
Q:幹汰さんの腕前はどうですか?
利幸さん「もうひと息ですね。同じ油の温度を見るにしても、たくさん経験しないと、自分のペースにはならない」

幹汰さん「まだまだ、へなちょこだと思うので、頑張ります。やるしかないです。」

「昔からのお客様も大事ですが、揚げる本人は若いですから、若いお客さんに寄ってもらいたいですね」

「この店をつぶさないように、つぶさないようにやって来ただけで、同じぐらい30年ぐらいはつぶさないように頑張ってもらいたいですね。」

「やっぱり三代目ダメだなって、15年、20年経って言われないように、ガムシャラに真剣に、一日、一日、こなしてくしかないと思います」

 55年にわたり、多くのお客さんに愛され続けてきた“天錦”。長年培われた伝統の技は、新たな世代へと受け継がれ、その想いとともにきょうもお客さん達を喜ばせています。

180℃の継承~浜松・天錦三代の天ぷら③ 「店を潰したくない」 三代目が受け継ぐ“油に指を入れる技”と55年の味