江森慎さん
「地元裾野産の酒をつくることが、私と曾祖父の夢でした」

300本は8日で完売

画像: 300本は8日で完売

 オリジナル芋焼酎「新(あらた)」。今年7月に初めて300本が販売されると、8日後には完売。いまも問い合わせが殺到する話題の酒です。この酒には時代を超えた2人の夢が込められています。

創業100年

画像: 創業100年

 裾野市の中心部に店を構える酒店「みしまや」。1920年創業。この地で100年つづく地元の顔です。創業者の江森真一郎さんは、地域とのつながりを大事にしてきました。代々、江森家は町の御用聞きとして、地域の神事や祝い事に酒や調味料を提供してきました。

 4代目の江森慎(まこと)さん。5年前、勤めていた印刷メーカーを辞め、実家を継ぐために地元に戻ってきました。

江森慎さん
「うちのことを調べたときに、地域の方々に支えられていることがわかりまして、うちのような酒販店が果たさなければならない役割があると感じて、帰ってこようと」

 気づいたのは地域との結びつき。感謝の気持ちは江森さんを動かします。

 長年、手をつけられなかった店を改装し、気軽にお酒を楽しむことができる角打ちを始めました。さらに、月に1度、焼き鳥屋とコラボした店のイベントを開催。地元を盛り上げます。

江森慎さん
「地域の皆さんからも、次はいつなのとか、皆さんが待ち遠しく思ってくれて、それがすごくうれしかったです」

オリジナルの酒を造りたい

画像: オリジナルの酒を造りたい

 江森さんには夢があります。それは地元の人たちとつくりあげていくもの。

江森慎さん
「なぜ裾野市には“酒造所”が今までなかったのか、僕の中では疑問で、ずっと思っていた。地元で、地元の原材料で地元の人たちと酒造りがしたい」

「いつかオリジナルの酒をつくりたい」

 そうすることで店を守ってくれたふるさとへ恩返しできればと考えたのです。

 そんな折、改装工事の途中での出来事でした。偶然に発見したもの…

曾祖母が残した手記…道半ばであきらめた芋焼酎

画像: 曾祖母が残した手記…道半ばであきらめた芋焼酎

江森慎さん
「曾祖父の奥さんの末佐さんが当時のことを書いた巻物ですね。当時あった出来事とかその時の心情が書かれていたみたいで」

 それは江森さんの曾祖母が残した手記…。

江森慎さん
「実際に曾祖父が芋焼酎をつくろうとして、だけど免許取得が立ち行かなくなってしまって、商品ラベルまで作ったはいいけども、道半ばであきらめざるを得なかったということがここから読み取れた。
 驚きました。まさか曾祖父がつくろうとしていたなんて。曾祖父とは会ったことはないんですが、手記をみて、まさか自分と同じような思いを抱いていた人が、そんな身近な人だったということがすごい驚きとうれしさと両方がこみ上げてきました。それを見たときに、自分の覚悟が決まりました」

地元一丸で曾祖父の夢をかなえる

 曾祖父の悲願だった芋焼酎。江森さんは地元の協力を仰ぎます。まずは原料となるサツマイモ。賛同してくれたのが地元のNPO法人「みらい建設部」でした。週末を利用して地域の活性化を目指す有志の団体で、地域の休耕地を利用してサツマイモを栽培しています。

サツマイモの収穫は、まず土づくりから

ディレクター
「この話を江森さんから聞いたときにどう思った?」

NPO法人みらい建設部 宮坂里司さん
「お酒をつくるということに関して全く考えが頭にない。裾野産のお酒を造りたいと聞いて、まず驚きました。話を聞くと、僕らが(元々)造っていた量では足りませんので」

宮坂さん「大変だったね(笑)」
江森さん「土づくりから」
宮坂さん「天気見て土づくりして」

 新たな耕作地はもともとは田んぼ。栽培に適した水はけのいい土づくりからはじめました。去年5月に作付けをして、10月には300本を超えるサツマイモを収穫することができました。同じ仲間から米も提供してもらい、芋焼酎の原料が揃いました。

酒造会社社長「時空を超えたロマン感じた」

画像: 酒造会社社長「時空を超えたロマン感じた」

 次に声をかけたのは富士宮市の「富士錦酒造」。日本酒造りが本業のこの会社。江森さんは断られる覚悟でいきさつを語りました。

富士錦酒造 清信一代表取締役
「即答で『ああ面白いやりましょう』と答えしました。長い時空を超えたロマンを感じたので、これはやってみたいなと逆に我々も思いました」

 原料となる芋に傷があれば、そこから雑味が生まれます。社員が総出で1本1本をきれいにしたあと、芋は麹(こうじ)と酵母とともに発酵させます。これに熱を加えてアルコールを抽出…芋焼酎の完成です。

清さん 
「試飲したら、非常にいい香りで澄んだ味わい。そんな味がしたので、これは間違いなかったなと確証を得ました。普通焼酎の場合は半年間寝かしたりとか時間的な熟成の時間が必要だったんですけど、あの酒に関して言えば、熟成の時間は必要がないくらいそのフレッシュさを逆に楽しんでもらいたい、そんな感じの味わいでした。

死後58年後に実現した曾祖父の夢

画像: 死後58年後に実現した曾祖父の夢

 多くの人の手によって生まれた芋焼酎…。

江森さん
「すっきりしてて、のど越しがさわやかで、控えめで、優しい芋の香りが余韻で抜けてきてとてもおいしいです。本当にできたんだなって」

 芋焼酎は新たな一歩を踏み出すことにちなみ「新」と名付けられました。曾祖父が亡くなって58年の月日が過ぎたいま、時代を超えた2人の夢の酒が完成しました。

ディレクター
ご報告はされた?

江森さん
「はい。ようやくできましたと。この地域の魅力をお酒にこめたいと思っています。市民の皆さんがこの焼酎を通して自信をもって語ってくれるような存在に将来なれるようにしていきたいと思っています」

This article is a sponsored article by
''.