信長、秀吉、家康も愛飲…鎌倉時代から続く幻の銘酒「江川酒」 製法記した古文書見つかり320年ぶりに再現 静岡

静岡県 川勝平太知事(4月12日):「江川酒の味がします。あー、なるほどおいしいですね。これは1杯でおさまらない。ピリッとしたところがあって、武士道的なところが感じられるいいお酒」

画像1: 信長、秀吉、家康も愛飲…鎌倉時代から続く幻の銘酒「江川酒」 製法記した古文書見つかり320年ぶりに再現 静岡

 グイっと杯をあけた川勝知事。絶賛したのは「江川酒」と呼ばれる日本酒です。鎌倉時代から、静岡県伊豆の国市の江川家で造られてきました。戦国時代には織田信長や豊臣秀吉、そして徳川家康も、その味を称賛。幻の銘酒とも呼ばれているそうです。

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おととし「製造方法」が見つかり320年ぶり再現へ

 江川酒は江戸時代中期に製造が中止されていましたが、おととし、ある資料から製造方法が判明。およそ320年ぶりに復活しました。

画像: おととし「製造方法」が見つかり320年ぶり再現へ

江川家 江川洋当主:「運よく製法が見つかったことによって、こういうふうに復活することができて、恵まれていると思う。本当に復活出来てうれしかった」

 時代を超えて、眠り続けていた製造方法。いったいどのようにして見つかったのでしょうか。その真相を探るべく、伊豆の国市の江川邸へ。見つけたのは、橋本敬之さん。江川邸の文化財を管理する学芸員です。

江川文庫学芸員 橋本敬之さん:「これが、お酒を復元するための原本」

 この書物自体、実は10年ほど前に見つかっていたそうです。ただ、この時は江川酒に関するものだとは誰も気づかず…。おととし、橋本さんが見つけるまでは封筒に入れ、他の書物と一緒に整理されていたといいます。

江川文庫学芸員 橋本敬之さん:「コロナが広がって、江川邸も閉めなければいけない。仕事が一切無くなった。本当に1人静かに資料を見る機会をもらって、ずっと『江川酒』というのを頭に入れながら江川酒、江川酒といった、それが一切出てこなかった。その中で『お手製の酒』という文言が出てきた。これは! と思って見たら、まさにその作り方を書いたものだった」

なぜ10年間気づかなかった

 10年前は、この書物の中身に、なぜ気が付かなかったのでしょうか。

江川文庫学芸員 橋本敬之さん:「これが表紙ですね、ここに『江川家お手製酒の法』と書いてありまして、中に『江川の酒だ』としっかり書いてくれてあった。表紙だけでは分からなかったけど中に書いてあって」

Q.じゃあこの表紙で見て、しまって、ここを読んでいなかった

A.「そういうことですね。これ読んでくれていれば分かった」

画像: なぜ10年間気づかなかった

 中には当時使っていた道具の画もあり、忠実に再現できるよう詳細な工程が載っていました。橋本さんは、この資料の価値を広めたいという思いから、去年、地元の酒蔵、万大醸造に協力を依頼。およそ320年ぶりに幻の銘酒『江川酒』を復活させました。

江川文庫学芸員 橋本敬之さん:「戦国大名が飲んだり、秀吉も信長も徳川家康も飲んだりということで、色んな人に知られていた。でも実際に江川酒ってどんなお酒だということが分からなかった。それがずっと長い間途絶えていて、いつ途絶えたのかも分からなかった。銘酒でありながら作り方も分からない。おいしいお酒だということは書かれているけど、それがどんなふうにおいしいのか、皆さん知りたい。今までずっと思い続けてきた。なので、今回復元をしてこういうお酒だったんだということが、やっと分かったということで、幻が現実のものになった」

当時の樽も…

 スッキリとした甘みの中には酸味も隠れていて、フルーティーさが感じられるといいます。江川邸には、当時使っていたという貴重な樽も残っていました。

画像: 当時の樽も…

江川文庫学芸員 橋本敬之さん:「こちらに樽が2つある。これが、実は江川酒を江戸に運んだ時の樽だと思う。ここに竿をさして船まで持って行って船に乗せて江戸に持って行く。家康自身に江戸城で飲んでもらうために送ったかは分からないが、その後、1698年に途切れる、その時まで、これを使っていたので、家康以降、綱吉の時代まで酒がこういう入れ物で江戸に行った。ここに鉄の帯を巻いているので、このおかげで壊れずに残っているが、残念ながら底が抜けてしまっていて崩れてしまっている」

まだ分からないことも

 江川邸に眠る、歴史的な品々。幻の銘酒、江川酒に関しては、まだまだ分からないことが多く、これからも新たな発見を期待したいといいます。

画像: まだ分からないことも

江川文庫学芸員 橋本敬之さん:「まだ未整理の資料もたくさんあるので、もしかしたら、また違う意味の資料が出てくるかもしれない。どのくらいの量を作ったとかというのもよく聞かれるので、そういう資料も出てくればいいな。復元しただけではなくて江川酒のことを伝えていければと思う」