遺族らは「人災」として58億円の賠償請求 被告側は「危険性の認識なし」 熱海土石流災害めぐる裁判の今後の焦点は… 静岡地裁沼津支部

責任はどこに。司法の場でも問われることになります。2021年7月の熱海市土石流災害の遺族らが、崩落の起点となった盛り土の前と現在の所有者らに58億円余りの損害賠償を求めている裁判が、静岡地裁沼津支部で始まり被告側は全面的に争う姿勢を示しました。

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遺族らは「人災」として58億円の賠償請求 被告側は「危険性の認識なし」 熱海土石流災害めぐる裁判の今後の焦点は… 静岡地裁沼津支部

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きょうから始まった裁判

高橋諒記者:「熱海市の土石流災害から10カ月。遺族らが現在と前の土地所有者らを相手取った裁判がきょうから始まります」

画像1: きょうから始まった裁判

 盛り土をめぐる責任の追及と検証は、司法の場でも進められていくことになります。午前10時半から開かれる第一回口頭弁論を前に地裁沼津支部に入ったのは、土石流による遺族や被害者ら84人からなる原告団です。

 2021年7月、熱海市伊豆山を襲った土石流。起点となった土地にあった大量の盛り土が被害を拡大したとされていて、関連死を含め27人が死亡、今も1人の行方がわかっていません。

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 2021年9月28日、土石流の遺族や被害者らが損害賠償を求めて地裁沼津支部に提訴したのは、発生からおよそ3カ月のことでした。

58億円の賠償請求

盛り土があった土地の現在と前の所有者ら8人と造成に関わったとされる業者など5つの会社に対して、およそ58億2000万円の賠償を求めています。

母親を亡くした 
被害者の会 瀬下雄史会長(2021年9月):「証拠隠滅の時間・猶予を与えないようにしようと、スピード感を持って集団訴訟の準備を進めてきた」

 訴状によりますと、盛り土の造成においては排水設備や崩落を防ぐ適切な工事がされておらず、注意義務違反があると指摘。盛り土をそのまま放置したことについても重大な過失が認められるとし、「土石流自体が明確に『人災』により生じた」としています。

被告側は全面的に争う姿勢

これに対し、きょうの第一回口頭弁論で被告はいずれも請求の棄却を求め、全面的に争う姿勢を示しました。終了後、取材に応じた現在の土地所有者の代理人は―

画像: 被告側は全面的に争う姿勢

現在の土地所有者代理人 
河合弘之弁護士:「買う時もあそこに盛り土があることを知らなかった。その盛り土が危険だということも知らなかった。その後も盛り土が危険だから何か安全工事をしなければいけないという認識もなかった。買った翌年の10月19日には現場で熱海市の職員から、この土地には触るなと、安定している土地だから触るなと(言われて)。それから一切触っていないというのが事実」

 その上で、県の第三者委員会が盛り土をめぐる「行政対応は失敗」と総括したことを踏まえ、県と熱海市、熱海市の斉藤市長に対して、裁判に参加する機会を与える「訴訟告知」の手続きを行ったと明らかにしました。
 また、盛り土をしたとされる前の土地所有者は静岡朝日テレビの取材に対し、「原因究明のために真実を話す。盛り土は別の業者が行い、危険性の認識はなかった。司法の判断を受け止めたい」とコメントしています。

今後の裁判の焦点は…

一方、原告側は―

原告代理人 
加藤博太郎弁護士:「これだけの方が亡くなって、これだけの甚大な被害が生じたにも関わらず、誰も責任を取ろうとしない。盛り土を行った方々あるいは長期間にわたって危険な盛り土を放置してきた方々の責任というのは逃れることはできないと思っている」

娘を亡くした 
小磯洋子さん:「娘も未だに自分がなんで死んだのか、わかっていないと思う。私たちの裁判が突破口になって今後の道筋を決めていくしかない」

画像: 今後の裁判の焦点は…

母親を亡くした 
被害者の会 瀬下雄史会長:「(母の)遺影に話しかける回数も1日に何回もあるし、思い出すたびに悔しいし、かわいそうだったと本当に変わらず思っている。この裁判を通じて原因と真相の究明、それから責任の追及、これをしっかりやっていきたい」

 今後の裁判では盛り土が大規模に崩れ、被害が出ることを予測できたかどうかが最大の焦点となる見通しです。