リニア新幹線 国の専門家会議で環境保全について議論 JR東海「全体的な影響把握に努める」 静岡県「生物多様性は回避・低減が必要 ハードルは高い」

リニア新幹線のトンネル工事をめぐるテーマは「水資源」から「環境保全」に…

画像: リニア新幹線 国の専門家会議で環境保全について議論 JR東海「全体的な影響把握に努める」 静岡県「生物多様性は回避・低減が必要 ハードルは高い」

静岡県「現状ではJR東海の調査が不十分」と指摘…

県 難波喬司理事(2日)
「県が無理難題を吹っ掛けているのではないかというような疑問が社会には実際に存在しますので、それに対して、そうではないんだというところは、ある程度この有識者会議の中でご理解いただいた、お認めいただいたのではないかと思っています」

 先日行われた国の有識者会議のあと、このように語った県の難波理事。

リニア新幹線のトンネル工事をめぐる国の有識者会議はこれまでの水資源への影響から、環境保全に関する問題へとテーマが移っています。

 会議で難波理事はトンネルが建設される南アルプスには極めて希少な生態系があり、周辺環境の変化の影響を受けやすいとして、工事に着手する前に生態系の現状をより高精度に把握する必要があると説明。

 現状では、JR東海の調査が不十分と指摘しました。

画像: 静岡県「現状ではJR東海の調査が不十分」と指摘…

説明を受けた有識者会議の委員からは―

河川情報研究所所長 辻本哲郎委員
「上流域・高山域の生態系の特殊性に鑑みた議論が必要。時間が経って影響は伝播していくにも関わらず、ある時点での(地下水位の)低下、それがどう変化するかという議論だった。工事の進捗あるいはトンネルという施設の定着によってどういうことが時系列的に起こっていくのかということについても今後注意して見ていかないといけない」

 JRのシミュレーションではトンネル工事によって、周辺の地下水の水位は最大300メートルほど低下するとされています。それによって、地表を流れる沢の水も減少する見込みです。

大同大学教授 大東憲二委員
「地下水の構造は複雑で全て再現するのはとても無理な話なので、それをどこで割り切るか。どういう割り切り方でシミュレーションをやった結果を今回の生態系に使っていくかというのが議論になるのではないか。沢の水がどういう成分なのか。本来の沢の特性を把握した上で、トンネルの影響があるやなしやというのを議論していかないといけない」

産総研 地質調査総合センター 保高徹生委員
「(沢の水量が)これから減ると予測されている部分と減らないと予測されている部分で、どのような生態系があり、どのような重要度があるのか重ねてみる。それができれば非常に守るべきところがフォーカスしやすくなるのではないか」

京都大学 水資源環境研究センター 准教授 竹門康弘委員
「沢の特性は必ずしも一様なものではなく、(水が)枯れるときでも水が流れている場所があったりする。水生動物の種組成に関して言うと、そのようなホットスポット的な場所が生物多様性を育んでいる面がある。調査をするにしても、そのような場所を特定しておくことがきっと大事で、そのようなホットスポットが枯れると大きな問題になるが、逆にそういう場所が温存されれば、全体の流量が多少減ったとしても生物多様性への影響は少ないということもあり得る」

 委員からはJR東海に追加でデータを提出してほしいとの注文も。

画像: 説明を受けた有識者会議の委員からは―

オブザーバーとして出席したJR東海の宇野副社長は…一方、難波理事は環境保全の難しさに言及

JR東海 宇野護副社長
「事務局の(国交省)鉄道局とも相談させていただいて、当然必要なデータについては対応させていただくことになりますし 影響の考え方について、会議の中でも全体的な影響把握にやっぱり努めるべきだという話がありましたし、それをどうやっていくのかということだと思います」

 難波理事は環境保全の難しさに言及しました。

県 難波喬司理事
Q.水資源の方では県外流出分を戻すというかなりハードルの高い条件。生物多様性は回避できなければ低減、低減できなければ代償と何かゴールが見えている感じもするが
「私はその逆だと思っています。水資源の方はハードルが高くなくて、トンネルの中から湧水を全部戻すという非常にある種単純な話ですから、それについての方が解決といいますか、解は容易だと思っています。生物多様性については回避・低減が必要で こちらの方がハードルはむしろ高いと私は思っています」

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8日に川勝知事が田代ダムを視察…「適切かどうかという目でみていただきたい」

 一方、リニア問題をめぐっては来週月曜、川勝知事が田代ダムやトンネル工事に伴う発生土置き場などを視察する予定です。

川勝知事
「燕沢というところが一番大きな盛り土の場所になりますので、その量が360万?と言われておりますけれども 適切かどうかという目で見ていただきたいと思っております。それから何と言っても、田代ダム調整池ですね。この調整池の現場を見ていただくと、そこはまずは水がきれいだってことがわかると思います そこの水が戻ってくるというので、どういう水なのかというのも実際に見てくださればと思っております 文字通りこの生きた自然であると。造山活動が最も世界で最も活発なところというのはどういうところかというのを実際に知るというのはすごく大きな経験になると思いますね」

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