「イチゴ戦国時代」栃木・埼玉…各地で「新品種」続々登場 静岡県の研究所では新たな試みも

 キラキラとしたその輝きから名付けられた「きらぴ香」。2017年に品種登録された、静岡県で誕生したイチゴです。国内の品種は、今や300種類以上。静岡県は全国6位の収穫量を誇るイチゴの産地ですが、今、各都道府県によるイチゴの独自品種の開発が激化していて、新たな品種が続々と登場していて、「イチゴ戦国時代」となっています。

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栃木県

画像: 栃木県

 収穫量54年連続日本一のイチゴ王国・栃木県では…。

JA東京アグリパーク 小松弘明所長:「『とちおとめ』が主流だが、『とちおとめ』から『とちあいか』に品種を変更していくということで、これから徐々に『とちあいか』が増えていくと思う」

 栃木県ではイチゴに特化した全国初の研究開発拠点「いちご研究所」を設置。イチゴ日本一の座を死守しようと、力を入れています。ここで開発されたのが、甘さが強く、病気に強い「とちあいか」。今後5年かけて、現在の主力である「とちおとめ」の栽培面積を1割まで下げ、新品種「とちあいか」を8割まで増やす、世代交代を目指しています。

埼玉県

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 イチゴ王国・栃木県に追い付け、追い越せとばかりに新品種の開発に力を入れているのが、収穫量12位の埼玉県。2019年に県内で23年ぶりとなる新品種「あまりん」を開発したばかりですが、おととし新たに「べにたま」を開発しました。

静岡県

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 イチゴ収穫量、全国6位を誇る静岡県。現在、章姫、紅ほっぺ、きらぴ香の3つの品種が生産されています。

 特に、生産量では、最も新しい品種の「きらぴ香」の割合が増えていて、2015年は11%だったのが、去年(2022年)は17%に。県は、他の品種と比べて高価格で取引される「きらぴ香」の生産を強化していく方針だということです。

イチゴ農園「きらぴ香は濃い味の品種」

画像: イチゴ農園「きらぴ香は濃い味の品種」

 静岡市でおよそ8年前から「きらぴ香」を育てているイチゴ農園では…。

なかじま園 中嶌正子代表:「濃い味の品種。名前の通りキラキラピカピカしている。イチゴのパック詰めしていても、イチゴの音がキュッキュッとするぐらい身のしっかり硬いイチゴ」

 こちらではもともと章姫をメーンに栽培していましたが、現在では7割から8割ほどを「きらぴ香」に切り替えました。きっかけは、全国に農園で作ったイチゴを届けたいという思いからでした。

なかじま園 中嶌正子代表:「身の果皮が硬いっていうのがやはりいい。章姫は実が柔らかいので輸送に耐えられないから、何か良い品種はないかなって。いろいろな他県の品種を作ってみたが、なかなか3月、4月の時にいい味を残しているイチゴがなくて。このきらぴ香を作ったときに、「あ、これならいけるんじゃないか」っていうことで、少し作るのは大変だけど、だんだん増やしてみようって気になった」

「きらぴ香」の魅力を生かしたスイーツも販売

 こちらではきらぴ香の魅力を生かしたスイーツも販売しています。平日の午前中にもかかわらず、絶え間なくお客さんが…。

画像: 「きらぴ香」の魅力を生かしたスイーツも販売

藤枝市から
「確実に甘い。一緒にソフトクリームとか食べても甘いのがわかる。」

 イチゴのパフェを食べていたこちらの方は…。

滋賀県から
「夢中であっという間に食べちゃった。おいしかった。(パフェはいつも)くどくてこの辺で止まるんやけど、あ~もう終わりだって」

静岡市から
「すごく満足感があって、一口で一個丸々すぐ食べられないくらい大きくてよかった」

静岡県の研究所では…ほぼ一年中「きらぴ香」を

 磐田市にある「県農林技術研究所」。17年の研究の末、ここで「きらぴ香」が生まれました。安定した糖度の高さが魅力ですが、さらに今、イチゴ戦国時代を勝ち抜くために、新たな試みが始まっています。

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静岡県農林技術研究所 望月達史上席研究員:「10月頃から収穫が始まり、クリスマス等の需要が非常に多い12月にもさらに取れるような、超促成と我々は呼んでいるんですけれども、そういった栽培技術を研究しています」

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 通常のきらぴ香は11月下旬から収穫が始まりますが、開発された新作型では10月から収穫が可能に。イチゴは全国的に10月から12月まで需要が高いため、今よりも前倒しで収穫できるようにすることで、出荷の増加が期待できます。さらに通常5月頃までで収穫できなくなってしまいますが、7月頃まで延長する研究も行われています。

静岡県農林技術研究所 望月達史上席研究員:「一年中というのは、なかなか難しいが、非常に長い期間きらぴ香を食べていただけるようになると思う」

 超促成栽培を行うために必要なのは、冬のような環境を作り出すこと。そこで「夜冷庫」と呼ばれる装置の中に苗を入れ、夕方から次の日の朝にかけて15度に冷やします。その後その苗を植え、根本をチューブに流れる15度の冷水で冷やすことで、収穫開始を早めることに成功しました。

静岡県農林技術研究所 望月達史上席研究員:「きらぴ香は非常に花芽がより連続しやすいという特徴がありますので、向いているかなと思い研究材料として使っています」

「きらぴ香」超える新種の研究も

 さらに、きらぴ香を超える新しい品種の研究も行われています。

画像: 「きらぴ香」超える新種の研究も

静岡県農林技術研究所 望月達史上席研究員:「毎年だいたい1万から2万ぐらいの種を蒔いて、その中から選んでいくっていうのが例年の作業。なかなかきらぴ香を超えるものが、すぐには出て来ないかなという状態。戦国時代を乗り切るために、もうすでに、次のイチゴを準備していかないといけない。皆様のご期待に沿えるようなものが早くできるといいなと思いますし、そのために努力しないといけないなと思っています」

 全国で次々と誕生する魅力溢れるイチゴ。次はどんな品種が生まれるのでしょうか?