「静岡おでん」がピンチ!? だし粉の原料になるイワシが足りない? マイワシは記録的豊漁なのに、なぜ
島田市民20代:「やっぱだし粉があると、静岡おでんを食べてるなという感じになる。(静岡おでんに)だし粉はかかせないかなと思う」
静岡おでんに欠かせない「だし粉」。実はこのだし粉をめぐって、不穏な動きがあるのです。
客:「温かくておいしいです」
客:「たまたま見つけて入ったら、おいしいものに巡り合えた」
静岡市葵区にあるこちらのお店には、GWが明けた平日にも関わらず、多くのお客さんの姿がありました。みなさんのお目当ては静岡を代表するB級グルメ「静岡おでん」です。
おでんやおばちゃん 杉浦孝店主:「黒はんぺんが特徴ですけど、串にささっている・黒いスープ・だし粉をかける・駄菓子屋にもあるというおでんの会の五カ条がある」
静岡おでんと言えば、「黒いスープ」「串に刺してある」「黒はんぺんが入っている」「駄菓子屋にある」そして「青のり・だし粉をかける」という五カ条が特徴です。
おでんやおばちゃん 杉浦孝店主:「おでんにだし粉をかける文化は、日本全国静岡だけだと思うので、そういう部分では大事なおでん粉・だし粉です」
この日も多くのお客さんが、だし粉のかかったおでんを注文していました。
宮城から 30代
「すごくおしいです。初めて食べましたけど」
「初めて食べました」
「新感覚ですかね、あんまないです」
群馬から 50代
「変わってますよね、やっぱり。魚の粉の香りがとてもおいしいと思います」
静岡おでんをよく食べるという静岡県民は…。
静岡市民20代
「(だし粉が)かかっていたら、よりおいしいと思う。こっちだと普通だけど、違う所に行ったらないみたいだから、やっぱこれが一番おいしい」
島田市民20代
「だし粉があると、静岡おでんを食べてるなという感じになる。(静岡おでんに)だし粉は欠かせないと思う」
他にはない静岡おでんの特徴でもあり、必要不可欠ともいえる「だし粉」。そんなだし粉に今、不穏な兆しが見え始めています。
だし粉製造の現場では
静岡市清水区にある水産加工会社を訪ねると…
機械に入れられていたのは、イワシの煮干しから作られた「削り節」です。
ここから細かい粉などを取り除き、袋詰めにしていきますが、工程の途中で取り除かれた細かな粉が、いわゆる「だし粉」になります。
杉山商店 杉山明裕さん:「去年の秋口からついこの間まで、(イワシが)9割方減少している形になると思います。そのために皆さんが持っている在庫がほとんどなくなって、削るものがなくなるという状態に入っています」
なんと、削り節に使う「イワシ」が足りないというのです。しかしイワシと言えば…。
マイワシは記録的な豊漁のはずだが…
今年は全国的に、マイワシが記録的な豊漁だったはず。脂が乗ったマイワシが食卓を彩っていました。それでも、イワシがない理由とは一体?
杉山商店 杉山明裕さん:「削り節に使う場合は脂分があっては絶対いけないんです。魚が大きいものになると大味になっておいしくないし、脂も乗っちゃいますから。生の魚は豊漁かもしれないです。でもそれは、全然我々には関係なくて、脂分があった生のイワシはいくら全国で取れても、何の意味もない」
だし粉の材料には、脂が少ないイワシが向いているとされています。そのためイワシの中でも比較的脂が少ないカタクチイワシから作られることが多かったのですが、ここ10年ほど、全国的にカタクチイワシが不漁に。
そこで、こちらの工場では、マイワシも使うようになりました。しかし、特に今年のマイワシは脂が多く、生で食べるのにはいいですが、だし粉を作るのには向いていません。なるべく脂が少ないマイワシを仕入れるものの、数が少ないため、コストも例年に比べて5割ほど増えてしまっているということです。
一方でだし粉の需要は増加
杉山商店 杉山明裕さん:「だし粉っていうのは、非常に値段が安いんですね。これをうまいこと利用して、だしパックに使おうという需要が増えたと思います。だから去年の秋口から、これがものすごい量出ていっちゃたんです」
供給が減る一方で、需要が増加したことから、今年に入ってからは、入荷が注文から2~3カ月待ちになることも…。値段も2割ほど上げたと言います。しかし、まだ不安を抱く状況は変わりません。
杉山商店 杉山明裕さん:「いろんなものをかき集めて、何とか切らさないようにやってきたが、やっと首の皮一枚で間に合わせられた感じです。この後出てこなければ、首の皮どころか、何もなくなってしまいますから」