【リニア】議論加速(1)…Q「知事が言ってたことは間違ってた」 A「そうですね」 “田代ダム案”協議に進展も川勝知事と事務方の情報共有に課題 /今週の静岡

 JR東海が品川―名古屋間で建設を進める、リニア中央新幹線。静岡県内では、南アルプスを通る10kmあまりがそのルートになっていますが、トンネルを掘ることで、大井川の水や南アルプスの自然などに影響が及ぶ懸念から、県は今も工事を認めていません。

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【リニア】議論加速(1)…静岡県が“田代ダム案”協議開始にGOサイン 知事と事務方の情報共有に課題も /今週の静岡

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 予定していた2027年の開業が遅れることを、JR東海も認める中、この1週間、リニア問題に“数々の変化”が…

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“田代ダム案”協議開始へ前進

 「貴社におかれましては、東京電力リニューアブルパワーと協議を進めていただくようお願いします」

画像: “田代ダム案”協議開始へ前進

 今週水曜、県からJR東海に送付された文書。そこに記されていたのは、いわゆる「田代ダム案」について、県が“GOサイン”を出したという内容です。

 大自然の中で目を引くエメラルドグリーンの湖。大井川の最も上流に位置する「田代ダム」は、東京電力のグループ会社が管理していて、大井川から水を取り、発電のために山梨県側へ水を流しています。

 リニアの工事によって川の水が減る懸念のあるこの水問題。県が求める全量戻しの策として、去年4月にJR東海が提案したのが、ダムの取水量を調整してそれを大井川に還元する「田代ダム案」でした。

 13日、知事会見で「田代ダム案」に関するこんな場面が…。

静岡県 川勝平太知事(13日)
Q.この問題に関しては、知事が言っていたことが間違っていたということでいいですか?

A.「そうですね。正確な情報を今初めて知りました」

Q.内部で報告が上がってなかったんですか?

A.「はい。今初めて知りました」

静岡県が「田代ダム案」にGOサイン

 「貴社におかれましては、東京電力リニューアブルパワーと協議を進めていただくようお願いします」

 今週水曜、県からJR東海に送付された文書。そこに記されていたのは、いわゆる「田代ダム案」について、県が“GOサイン”を出したという内容です。

 ただ、この田代ダム案を巡って、今まで川勝知事は…

画像1: 静岡県が「田代ダム案」にGOサイン

静岡県 川勝平太知事(去年4月)
Q.今まで知事は全量戻しを求めてきたが、それに叶う解決策になる?

A.「ならないと思います。突然足蹴にされて、ちゃぶ台をひっくり返して『これ持っていくぞ』という感じになっている。その乱暴さには改めて会社の体質を垣間見る思いがした」

 さらに現地にも足を運び、自らメガホンをとる場面も。

画像2: 静岡県が「田代ダム案」にGOサイン

静岡県 川勝平太知事(去年8月:田代ダム):「今6?7割。きょうの(ダムの)取水量は。ほとんどが田代ダムの方に取られている」

 数々の場面で川勝知事は「田代ダム案」について厳しい意見を突きつけてきました。

静岡県 川勝平太知事(去年12月):「田代ダムの取水抑制をすると、それが全量戻しの代替案だという。そういう言い方をJR東海がなさったわけですね。しかしながら、そもそもJR東海さんが取水抑制をするべき田代ダムの水利権を持っているわけではありませんから、部外者なわけですね。南アルプストンネル工事と田代ダムの取水抑制は別の事柄です」

東京電力は『田代ダム案』に“3つの前提条件”

 そうしたなか今年3月、JR東海は「田代ダム案」に関する協議を東京電力側と始めるための“3つの前提条件”について、大井川流域の市や町に理解を求めました。

JR東海中央新幹線推進本部・澤田尚夫副本部長(3月):「この“3つの条件”は東電から言われている条件。向こうからこういうことを確認してほしい、こういうことで理解してほしいと言われている」

画像: 東京電力は『田代ダム案』に“3つの前提条件”

 東電側が示した条件。それは、この田代ダム案を実施するのは「トンネル工事中のおよそ10カ月間に限る」こと。そして「県内でのボーリング調査に伴う水の流出への適用も含む」こと。最後に、「東電側の水利権に影響を与えないこと」の3つです。

大井川流域の市町は『了解』

 これに大井川流域の市や町からは…。

画像: 大井川流域の市町は『了解』

島田市 染谷絹代市長(3月):「田代ダム取水抑制案については、ほぼ全員が了解した。少し待ったと言ったのは県だけだった。(県は文書を)できるだけ早くまとめて、返して、具体的な議論に入れるといい」

 なぜ県は田代ダム案に“待った”をかけたのか。その理由について…。

静岡県 川勝平太知事(3月):「水利権と関係ないと言われても、それが本当に関係ないかどうかは、JR東海が関係ないというのとは別にして、議論するべきもの。軽々に水利権と関係ないと言うには、少し詰めなくてはならないと認識している」

 その後、県はJR東海に対し、想定通り行われる場合は「ダム案を根拠に水利権に関わる主張をしない」と修正案を送りました。ところが…。

JR東海 丹羽俊介社長(4月):「当社の認識と静岡県の認識に相違がないことを確認するために、本日(4月26日)静岡県に文書を発信した」

 再びJR東海から確認の文書が届きます。田代ダムをめぐる県とJR東海との“やり取り”はこれを機に、動きのない状況が続いていました。

知事と事務方の情報共有に課題

 ところが、ここに来て静岡県側から「GOサイン」が出る形に。その背景の1つにあるとみられるのが、今週火曜の知事会見でのこんな場面です。

静岡県 川勝平太知事(15日)
Q:リニアの関連で一点だけ、田代ダムの関係を伺いたいんですけれども、公式の表向きの動きとしては4月26日にJR東海が県に対して前提条件の文言についての見解を問う文書を出したのが最後になっていると思います。現在の協議状況についての認識をお伺いできますでしょうか?

A.「これは去年の4月に突然出てきた案だった。これはもちろん、田代ダムの水利権を持っている東電さんの了解があるものと思ったんですけれども、それがとれないまま今日に来ているということでありまして、まだ明確な東電から、あるいは東電からJR東海を通してですね、田代ダム取水抑制案について、実現可能性について明確なご返事がまだ届いてない。少なくとも私の所に届いておりません。もし届いていれば、JR東海はすぐ持って来るでしょう」

Q:今の質問は、現在のやり取りにおいて、JR東海はその「前提条件」、これでいいですか? っていうの県に確認している段階というのを我々は承知しているんですが…。

県の担当者:「今は大井川利水関係協議会の会員と今後の対応について調整しているところでございます」

Q:つまりそのボールは県側にあるという?

県の担当者:「現在は県の方で調整しています」

画像: 知事と事務方の情報共有に課題

静岡県 川勝平太知事
Q:この問題に関しては、知事が言っていたことが間違っていたということでいいですか?

A.「そうですね。正確な情報を今初めて知りました」

Q:内部で報告が上がってなかったんですか?

A.「はい。今初めて知りました」

 事務方との情報共有がうまくいっていなかったことが明らかに。4月の時点で止まっていたやりとりは、今週水曜、文書をもって回答されました。

 今後、田代ダム案について前提条件を東京電力側が了承すれば、より本格的な協議が始まることになります。

    (6月17日放送)