江戸宿場町に息づく手打ちそば 富士市「本手打 鯛屋」
富士市吉原商店街、東海道の宿場町として栄えたこの地に店を構えて14年。「本手打 鯛屋(ほんてうち たいや)」は、古くは旅籠だった建物を一部改装し、手打ちそば処として暖簾を掲げている。落ち着いた店内は、どこか旅の風情を感じさせる。そば粉は北海道産。丁寧に挽き分け、粗挽きの風味と繊細な口あたりを調和させた1種類の麺に仕上げる。短時間でさっと茹で、冷水で締めたそばは、瑞々しい香りをまとい、のど越しも軽やかだ。この時季、評判を呼んでいるのが「みょうがおろし」。鬼おろしで粗めに削った大根の力強い食感に、シャキシャキのミョウガを合わせ、出汁の利いたつゆでいただく。大根の辛みとミョウガの清涼感が合わさり、暑さの残る時期にうれしい一枚だ。

焼きナスを自家製のピリ辛だれに漬け込み、大葉ペーストを添えたおろしそばも季節の味わい。香ばしいナスとさっぱりとした薬味が、そばの甘みを引き立てる。

「かけ」とかき揚げのセットも人気。カツオだしの香るつゆに、つるりとしたのど越しのそば。玉ネギやゴボウをベースに、舞茸や青のりなど旬の素材を織り交ぜたかき揚げは、サクサクと軽やかで香り豊かだ。

疲れ気味の体に入れたいのが「温スタミナつけ麺」。そばつゆをベースに自家製ラー油と香辛料を加え、自家製チャーシューやキクラゲ、タマネギを添えた一杯は、ピリ辛の中に滋味深さが光る。残暑を乗り切るための活力源としても頼もしい。

江戸から続く旅籠の記憶を背に、現代の食卓に旬を届ける鯛屋。一枚のそばに宿場町の空気と四季の恵みを込める、その誠実な姿勢に心を打たれる。富士の吉原で味わう一枚は、歴史と旬が重なり合う贅沢なひとときだ。

本手打 鯛屋
富士市吉原2-3-21
電話番号:0545-52-0012
定休日:水・木曜日
営業時間:11:00-14:00 L.O.13:45
Pあり